34 ヴァイオレットの恋6
「アリシア、こっちよ!」
ヴァイオレットがアリシアに手を振った。
今日は休日。学園も当然だけどお休み。
そして、アリシアの目線の先にはヴァイオレットと、瀟洒な2頭立ての馬車。その胴両の中央にはブレイク侯爵家の紋章があしらわれている。
「おはよう、ヴァイオレット。今日はいい天気で良かったわね。」
アリシアの言葉にヴァイオレットは普段の大人びた顔とは正反対の年相応なふにゃんとした笑みを浮かべる。
うーん可愛い過ぎる。アリシアもつられて頬がへにゃと弛む。
「アリシア嬢、今日は忙しい中ありがとう。」
いつの間にかジェームス様がヴァイオレットの隣にいて、その甘く整った顔の目尻を少し下げた。
学園内だったら、きゃーと言う効果音が付きそうな笑顔だ。
隣にいたヴァイオレットはアリシアに色目を使わないで!とアリシアの腕を引っ張って馬車に向かう。
ジェームス様のエスコートで馬車に乗り、向かう先は騎士団の訓練場。
ヴァイオレットは、先日サラリとジェームス様から週末の約束を取り付けられて、2人で出掛けるのが嫌だから一緒に来てとアリシアに懇願してきた。結果、3人でセオドア様の訓練の様子を見に行くことになってしまった。
今日は騎士団の野外訓練場での公開訓練が行われるらしい。
王室騎士団は国費で運営される騎士団のため、国民に対してその存在意義の再認識を図るという名目で、月に一度の公開訓練と年1回の騎士間のトーナメントマッチが行われている。
このトーナメントは、期間中は会場付近に屋台が立ち並んだりして、華やかなお祭りの様相を呈しており、王都とその近隣に住む平民の娯楽にもなっているそうだ。
「アリシア嬢は公開訓練を見るのは初めて?」
「はい。そんなことを行っていること自体、正直知りませんでした。」
ヴァイオレットたってのお願いだったけど、婚約者候補の方との間に入るって、なんだか気まずい。
そんな気持ちを分かってくれてか、さりげなくジェームス様が話を振ってくれて、アリシアは幾分緊張を弛めることができた。
隣のヴァイオレットはといえば目的地が近くなるにつれソワソワと窓の外を見やり気もそぞろな感じだ。
ヴァイオレットは隣のスペースに置いた籐のバスケットを揺れ動かないように大事そうに押さえていた。
中身は差し入れのサンドウィッチとのこと。
「セオドア兄様、喜ぶかな?」
頬をピンク色に染めて話すヴァイオレットに思わずアリシアはニマニマした。




