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31 ヴァイオレットの恋3

「婚約者、候補?」


アリシアは素っ頓狂な声を出した。


入学してから1年以上ずっと一緒にいるのにそんな話をしたことがなかったことに今更ながら気付く。ヴァイオレットが婚約者にあまり良い扱いを受けていないアリシアを気遣っていたのもあるだろうけれども。



「そうよ。私にその気はないし、ずっと断ってるんだけど、あの人、人の話をまるで聞いてないのよ。」


そう言ってヴァイオレットは困り顔をした。


そんなに悪い人じゃなさそうだったけど、とアリシアが言うとヴァイオレットは眉間にシワをよせた。


曰く、ジェームス様はヴァイオレットが何度自分にその気がないことを伝えても、次の日には何食わぬ顔をしてデートに誘ってくるという。

誘う理由を聞けば、目の前に山があれば登るだろう?と意味のわからないことを言うそうだ。


ううん、ジェームス様、思った以上に軽チャラい。


そのくせ頭は切れすぎるほど切れるし、精霊の加護も持っているため、ヴァイオレットの父親であるヘレフォード辺境伯はいたく彼のことを気に入っているそうだ。


それがまた気に喰わない、とヴァイオレットは忌々しげに言う。



アリシアはといえば、ヴァイオレットが見合いを自分で断っているということに驚いた。


アリシアの婚約は家同志が決めて、自分の意思などどこにも入る余地がなかったからだ。むしろその方が貴族社会のなかでは普通だろうと思う。


ヴァイオレット曰く、辺境伯家を継ぐにあたり何人かの婚約者候補がおり、相手を決めるのにヴァイオレットの意思をある程度入れることができるという。そのために化粧品事業を成功させたとも。


「家に自分の全てを支配されるのが当たり前なんて考え方、もう古いわ。まあ当主ならある程度は考えなければならないのはわかるけれど。私は、自分の子どもには自分で選んだ人生を自由に生きて欲しいと思ってるの。子どもの世代で無理なら次の世代、それでも無理ならその次の世代に。だから、私がその最初を切り拓くわ。」


それを聞いたアリシアはひどく感銘を受けた。

ああ、やっぱりヴァイオレットは凄い。同じ歳なのに、もうこんなに大きな目標を持ってる。自分のどれだけ先を生きてるんだろう。


「それに、、」


ヴァイオレットは目を伏せそっと頬に手を寄せた。

寄せた指先にある頬がぽっと桃色に染まる。



「私、、好きな人がいるの。」



えー!!!アリシアは自分でもびっくりするくらい大きな声を出した。   


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