20 授業が始まりました
加護の授業を受け持つヨハネス先生は、これといって特徴のない顔をした30代前半くらいの先生だった。
先生自身も精霊の加護を持っていると自己紹介がてら話していたような気がする。
先生の自己紹介が終わると、クラスメイトが前から順に席を立ち自己紹介をしていく。
アリシアは、自己紹介をしなければいけないのが嫌すぎて、他の人が喋った内容がほとんど耳に入ってこない。
イザークとボールはふんと鼻を鳴らして自慢気に自分の加護をペラペラと話していたが、記憶の片隅にも残らなかったということは大した加護じゃなかったんだろう。
蛇足ながらゴッグは筋肉増強の加護。筋肉の精霊っているのだろうか。
ヴァイオレットの自己紹介も済んで、とうとうアリシアの番になってしまった。仕方ないと嫌々席を立ち息を吸い込む。
「・・ア、アリシア・ニーダムです。加護は豊穣と癒しの女神の加護です。よっよろしくお願いします・・。」
アリシアがつまりながら自己紹介をすると教室はシーンと静まり返った。
またお決まりのコースかとアリシアは俯いた。
すると、しばらくの沈黙のあと、コソっと誰かが言った。
(・・結構かわいいじゃん。服装は地味だけど。性格も悪くなさそうだし。誰だよ、あり得ないくらい根性悪の地味ブスって言ったの。)
へ?アリシアは耳に入った話の意味がわからず顔を上げると、先に教室に来ていた3人がアリシアを見て口々にかわいいと言っている。イザークたちは、あれは誰だ、まさか地味女か、と普段と違うアリシアに驚き文句を言うことを忘れてしまっている。
ヴァイオレットはそんな周りの反応を見てうんうんと頷き満足そうだった。
アリシアは、良くわからないけど思ったような酷い反応じゃなかったとホッとした。
さて、初回である今日の授業は「加護持ちの歴史」。
加護持ちが歴史上に現れた時期、その活躍の内容や加護持ちが起こした争乱、人数の変遷などを先生は丁寧に説明してくれた。
加護持ちがもたらした成功と失敗を歴史上から学ぶことで、その力を国の未来の発展に正しく使えるようになるとヨハネス先生は言う。
正しく使うと言っても自分の意志で使えないし。やっぱり私には無意味な授業なんじゃとアリシアは顔を曇らせた。
けれど、先生のある話で、その気持ちに変化があった。