14 とうとう学園にまで
あの後チャールズは、アリシアが拗ねて部屋に閉じこもってしまったという、これまた大嘘を吐き、ケイトの部屋に籠り帰っていった。
そのため、ディナーの時に母だけでなく父にまで注意をされる羽目になった。
実際のところは、形ばかりお茶を一緒に飲んだが、すぐに2人でケイトの部屋へ消えていったからアリシアは部屋に戻るしかなかったというのが正しいのだが。
針を1万本くらい飲ませても足りないくらいの大ウソ吐き男である。
アリシアは、これ以上バカバカしいことに付き合いたくもなかったので「チャールズ様、また明日♪」と自称身体の弱いケイトが馬鹿でかい声でチャールズを見送っているとき、なにかとても引っかかったけれど考えるのをやめてしまった。
・・・また明日って?
次の日からまた学園。
家がああだったので学園につくと何だかホッとしさえした。というか楽しい。
教室に行けばヴァイオレットが明るい笑顔でアリシアに手を振る。
「アリシア、おはよう!」
「おはよう。ヴァイオレット!」
アリシアもつられて笑顔になった。
やっぱり友達の力は大きい。もやもやとしていた気持ちが一気に晴れる。
ヴァイオレットはアリシアの席まで来て、休みの日にあったこと、難しかった宿題のことなどを楽し気に話してくれ、あっという間に授業が始まる時間になった。
授業も今日から新しい内容で、やや難解な内容は取り組み甲斐もあり、アリシアが夢中になって聞いているうちに気が付くと午前の授業は終わっていた。
「今日もテラス席で食べましょうか。」
昼食の時間、ヴァイオレットの意見に賛成してテラスへ向かおうとした時、アリシアは、あれ?と思った。
やたらと周りの学生が自分を見ているのだ。しかも女子たちはテラスの方と自分とを見比べながらヒソヒソと話をしている。
何だろう?アリシアは思った。
ヴァイオレットは華やかな美人のためよく他クラスの男子たちが噂していることがあるけれど、自分は服装も髪型も雰囲気も地味だ。人混みの中で注目されることは無いに等しい。
何だかもやもやした気持ちのままテラスに出ようとすると、ヴァイオレットが急に立ち止まった。
「どうしたの、ヴァイオレット?」
立ち止まったヴァイオレットに危うくぶつかりそうになったアリシアが驚いて尋ねると、ヴァイオレットがテラスの一角を凍るような目で見ながら口を開いた。
「あれ、あなたの馬鹿婚約者じゃなくて?」
え?と思いヴァイオレットの視線の先を追うと、チャールズと、こんなところにいるはずのない知りに知った人物がそこにいた。
「いやだあ、チャールズ様ぁ。ケイト恥ずかしい~~。」