61話 久々の宴会
「そういえばエールも追加で買卯なんて気が利いてるねー。そういえば2人の値段はいくらだったの? 250万リラぐらいが全財産だったし、200万リラくらい?」
「惜しいなードーコ」
「うーんじゃあ220万リラだ!」
「いやーそうじゃなくて後一個0を足せば正解だったのに」
「……はっ!?」
「2000万リラだった」
「……ドワルフは今晩、晩ご飯なしね」
「なんでだよー!」
「妻の私に断りもなく2000万リラなんて買いもの! しかも借金したってことだよね!? 信じられないんだよ!! これから一週間はエール禁止だからね!!!」
「おいおい俺だってやっとエールの良さがわかってきたって所なのにそれを奪うのか!?」
「それだけのことをしたんだよ!! それに部屋はあるけど鍛冶場は2つしかないんだよ!? その間キーとリカに使わせるとして私たちはどうするのさ!」
「いやーそれは付きっきりで修行をつけてやろうと」
「その後は! 2人が鍛冶仕事出来るようになっても炉は二つしかないんだよ? それに2000万リラも借金しちゃったから、これ以上借金して炉も作れないんだよ!?」
そこまで考えてなかった。
「明日は明日の風が吹くっていうだろ。とりあえず今日の宴会の準備をしようぜ」
「もう!!」
「「アハハハハ」」
俺たちの会話で俺が怖い人じゃないと改めてわかったからか、この話の流れが面白かったのか大爆笑の2人。きっと緊張の糸が切れたんだろう。2人で料理をしようかと思ったがこれから先キーとリカの2人でもご飯が作れないと色々と不便だろうし四人で作る。
★ ★ ★
「「「いただきまーす」」」
「なぁ俺は本当に晩ご飯なしなのか?」
「こんな馬鹿な事をして食べれると思う方が甘いんだよ!」
「でもドーコさん。ドワルフさんがいなかったら私たちもっと酷い扱いをされてたかもしれないんです」
「そうだぜドーコさん! 俺たちの命の恩人なんだ。お願いだから一緒に宴会させてやってくれよー」
双子達にお願いされてタジタジのドーコ。なんでキーはドーコにもさん付けなんだ。俺は呼び捨てなったのに。
「仕方ないなー。キーとリカに免じて晩ご飯抜きだけは無しにしてあげる。でもエールは一週間禁止だからね!」
「じゃあいただきまーす」
俺もお腹が空いていたからかなりの速度で食べていたがキーの方はそれ以上だった。奴隷商人はろくな食事も与えていなかったんだろう。リカの方は大人しく食べるかと思いきや食べ方を教わっていないのか、それとも獣人には作法がないのか、手掴みで食べていた。
「まず食べ方から教えないとな」
「そうだねドワルフ……」
今日の宴会が終わるまでにある程度は叩き込まないとな。
食事方法を教えるとキーは面倒くさそうにフォークとナイフを使った。ちゃんとすぐ使えるようになるあたり学ぶのは早い様だな。リカの方は手掴みが普通だと思っていたので恥ずかしがってから慣れないながらに、フォークとナイフを使う。リカも問題ない程度には使えるようになったし良かった良かった。
「それにしてもどうして奴隷になんて捕まったんだ?」
「それは……」
「すまない。言いづらいことを聞いてしまったな」
「いえ問題ないです。獣人の帝国は12の時に成獣の儀というものがあるんです。そこで獣化出来るかどうかを試すんです」
「あー確か獣化出来るのが獣人で、出来ないのが半獣人らしいな」
「はい。それで私たちは獣化出来ず、獣人の帝国を追い出されてしまったんです」
「そこを奴隷商人に拐われたってことか」
「はいそうです。獣人の町に着ければそう言った差別もないので安心して暮らせるのですがそこまで私たちは辿り着けず……」
「そうか。ちゃんと差別のない場所もあるんだな。辛いことを思い出させてすまなかった」
「いえいえ、私が話せることでしたらなんでもお話しします」
こんなシリアスな話をしているというのにキーは素知らぬ顔をして食事にあり付いている。ちゃんとフォークとナイフを使いこなして。やりたい事だったら出来るタイプと情報を修正しよう。
ドーコはそんな2人の姿に安心したのか、どんどんエールを飲んでいく。俺に見せつけながら!
「ふぅーエールは美味しいねドワルフ?」
「いつか覚えてろよ!」
「へへーんだ! 今回はドワルフが悪いんだからね」
「それにしても明日からはどうするの? 炉が足りてないけど」
「取り敢えず今は手持ちに150万リラあるしそのお金をすぐに返せとはエドベンドさんも言わないだろう。とにかく2人を育てて行っても問題がない程度の資金はあるんだし、明日からは2人の修行だな。俺たち2人で見てればどんなひよっこだって一瞬で立派な鍛治士になるだろ」
「うーんそうだと良いけどねー。そういえばジョブと筋力はどうなってるの?」
「ジョブは2人とも鍛冶師が選べたから無事選んできたぞ。キーの方はサブジョブが勝手に配信者になって、リカは選べなかったみたいだ」
「ドワルフってもしかして疫病神?」
「おいおい俺が今までした功績を忘れてるのか? 確かにジョブに関してはそうかもしれないが。筋力の方もレベルの割にもう鉄なんかが扱える程度には高かったぞ。後もう少しでドワーフ鋼も扱える感じだ」
「流石は半獣人だね。でも実際にやってみないと鍛冶はわからないからねー」
「やらせてみてダメだったら何か別のことでもさせよう。ほら料理人とか」
「ジョブが鍛冶師しか選べないのに?」
「ジョブなんてあくまで飾りだろ。俺がそれを証明してる」
「そんなズルいユニークスキルだらけで言われても説得力ないよ……」
そんなことを言っている間にキーがあんなにあった料理を殆ど食べてしまっていた。リカも口の周りを見る感じかなり食べたみたいだ。いっぱい食べて眠たそうな2人だったが水浴びをしてから眠らないとな。
「ドーコ先にリカと一緒に水浴びしておいてくれ」
「うんわかったよ」
「水浴びぐらい1人でも出来ますよ?」
「あの食事を見た後だとなー」
そういうとリカは顔を真っ赤にして水浴びへと向かった。
俺はキーとリカのパジャマを用意し置いておく。
「キーよく聞け。俺とドーコはいずれこの店を去る予定なんだ。でもその時に店を畳むのは惜しい。だからお前達にはいずれはこの店を仕切って欲しいんだ。だから明日から頑張ってくれ」
「わかったぜ!」
良い返事だ。いつか詳しい話をしよう。しばらく待っているとドーコ達が水浴びから帰ってきたので俺たちも交代で入る。
「久々の水浴びだー!」
「元気なのは良いが本当はもう眠いんだろ。早く水浴びを済ませて寝るぞ」
「バレてたかー。疲れたところを見せるなって奴隷商人に厳しく言われてその癖で」
「もうそのことは忘れて大丈夫だからチャチャっと済ませるぞ」
手早く水浴びを済ませてパジャマに着替えリビングへ向かう。待っていたドーコ達と一緒に寝室を案内する。
「4部屋なんて多いと思ってたけど、こんなに早く埋まるなんてねー」
「俺も驚きだ」
軽口を叩くとキッと睨まれたが気にせず案内する。
「こっちがキーの部屋だ」
案内するなり中に入ってベッドの上で飛び跳ねる。
「フカフカのベッドだー!」
「あんなにはしゃぐなんて子供だねー」
ドーコも全く同じことをしていた記憶があるがこれ以上イジるのはやめておこう。今度こそ食事抜きになりかねない。
「じゃあおやすみ、キー」
「おやすみなさーい」
次はリカを案内する。流石にリカはベッドの上で飛び跳ねたりはしなかったが表情から嬉しいことが伝わる。
「おやすみ、リカ」
「おやすみなさい」
「じゃあ俺たちも寝るか! おやすみドーコ」
「おやすみドワルフ」
明日から一体どうなるんだろうか。鍛冶がうまく出来なかったり、いや【ドワーフの神】の目利きを信じよう。
すいません毎日投稿少し休ませてもらうと思います。申し訳ありません。
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