45話 酒場にて
「それがねドワルフの鎧が1000万リラで売れるってなったのに家を買ったり魔法鞄買ったりで結局手元に50万リラしか残らなかったんだよ」
「ほーうそりゃこれからも商会ギルドと仲良くして行くにはいい作戦だな」
「えー店長もわかるのー!」
「そりゃ俺だってろくに生きてきちゃいねぇや。俺はそんなに交渉することはないけどな。ここで飲んでいくやつがそんな話をしてたりもするんだ」
「やっぱり店長ともなるといろんな情報が手に入るんだねー」
「それにしてもその50万リラでヒヒイロカネを買って20万リラ減ったわけだろ? 残りいくらなんだ?」
「んー言わなきゃダメか?」
みんなが言えと言わんばかりの視線を送る。こうなったら腹を括るしかあるまい。
「3万リラ……」
「50万リラもあったのにもう三万リラなの!? ドワルフの家は富豪の家なの?」
「いやそんなわけじゃないんだがついつい活気にやられてしまってな。ドワーフの村だとそんなのなかっただろ!?」
「それにしても47万リラも1日で使うなんてぶっ飛んだ旦那さんをもらったもんだな」
「本当だよ! もう今度からは稼いだお金は半分半分だからね!」
「でも今回の鎧は俺1人の作品だったじゃないか」
「夫婦なんだからそこは仕方ねぇよ。折れるしかないぜ旦那さん」
「ドーコだって金使い荒いくせに!」
「あの話は無しだよ!」
「あの話ってなんだ? 隠されると気になるじゃねぇか」
「とにかくダメなものはダメ! 私も金使いは気をつけるからもうこの話は終わり!!!」
ドーコはエールをゴクッと飲み干し
「はいおかわり!」
「あいよ」
それにしてもドーコがこんなに気の許せる相手がヒューマンにもいた事が驚きだ。でもそもそもエルフと仲良くなろうとしてたんだからヒューマンくらいへのカッパか。
「そうだ酒場なんだったらエール以外にもあるんじゃないか?」
「エール以外ってワインとウォッカしかないがそれでもいいか?」
カクテルなんてないだろうし、それに日本酒なんてものはもっとないだろう。この世界はそれぐらいしかないんだろうな。
「何ドワルフ、エール以外を飲むつもりなの? ドワーフの神に申し訳ないと思わないの!」
「どうしてそこでドワーフの神の話が出てくるんだ。別にいろんな酒を嗜んだっていいじゃないか。そうだなじゃあワインを一杯頼むよ。高いのじゃなくて安いので頼む」
「高いワインなんて貴族が飲むような場所にしか卸されてないから安心しな」
「うーんワインを飲むなんてパパが聞いたら卒倒するよ……」
「何でそうなるんだよ。ドワーフの好きな酒だぞ?」
「ドワーフが好きなのはお酒じゃなくてエールなの! 私は絶対飲まないからね!」
よしもしまた自由に使えるほどの金を得たらいいワインを買ってドーコに飲ませてやろう。初めて飲む時に悪い印象を与えたくないしな。
「はいよ。ワインだ」
「ありがとう。それじゃ早速」
ワインの嗜み方なんて詳しくないがとりあえず匂いを嗅ぎ、口の中で回すように飲む。……コンビニの安いワインの味がする。それでも毎日同じエールばかり飲んでたので新鮮だ。
「あー遂に飲んじゃったよ。この事は絶対ドヴァルグのみんなには内緒にするんだよ!」
「わかったけど何がそんなにダメなんだ?」
「ダメなものはダメなの!」
理由が聞きたいんだがしきたりか何かなんだろう。
「で、味はどうだった?」
「エールよりはっきりと良いか悪いかの差が出てしまうな。どうしても安っぽさが出てる」
「そりゃそうだわな。エールは比較的作るのが楽だがワインは難しいからなぁ」
「もうワインの話なんていいから!」
もし飲ませる時はもっと酔わせてからにしよう。
「じゃあ今度はウォッカを頼むよ」
「まぁウォッカなら良いよ」
沸点がさっぱりわからない。酔ってるせいか?
「ウォッカは誰が飲むんだ?」
「ウォッカは安くて早く酔えるからヒューマンの冒険者なんかはよく飲んでるな」
「どうしてドワーフはウォッカを飲まないんだ? 酒に強いんだから合ってるじゃないか」
「ドワーフは! エールが好きだから飲んでるの! ウォッカはただ喉を焼くためのお酒だし、ワインは味にムラがあるしエルフが好んで飲むから飲まないの!」
そう言うことか。エルフが飲むからドワーフはワインを飲まないのか。じゃあエルフはエールを飲まないんだろうなきっと。
「はいお待ちどう。ウォッカだ」
ゴクッ
「カーッ! エールばっかり飲んでたせいか沁みるなー!」
「喉が焼けた?」
「いやー今までこの世界で酔ったことがなかったが、これだったら泥酔してしまうかもな」
「じゃあ店長! ワインを飲んだ罰にウォッカをドワルフにもっとあげて」
「おいおいそんなに飲ませても仕方ないだろ! それに今日はここで泊まるんだから迷惑のかからない程度にしとかないと」
「吐くぐらいだったら問題ないぞ。暴れでもしなけりゃな」
「泥酔するまで酔った事がないからどうなるかわかんないぞ。もしかしたら明日起きたらここが更地になってるかもしれない。それができるほどの大斧を持ってるわけだしな」
「よしドーコちゃんやめとこう」
「うっ確かにどんなことになるかわからない以上やめといた方がいいかも」
ふうー。そんなことにはならないだろうけどハッタリは十分効いたようだ。それにしても十分飲んだな。時間ももう日を跨いでる。
「ドーコ。もう深夜だし寝ないか?」
「うーん。ヒューマンの国に行くまでずっと宴会してなかったんだから今日はその分も飲みたいよ」
「だからって明日の昼までここに居座るわけにもいかないだろ。店長にも悪い」
「まぁドーコちゃんはよく飲んでくれる上客だからね。特別に宿代わりにしてもいいけどうちも宿屋じゃないからねぇ」
「ほら今日はもう寝るぞ。それに十分飲んだだろ」
「うぅ仕方ないなー。あ! そういえばツケを次来たときに払うんだった!」
「そういえばそうだったね。今日の分と合わせて2万リラ頂くよ。ギリギリ足りてよかったね」
「よくねぇよ! ドーコお前どんだけ付けてたんだよ」
「いや殆ど今日の代金だよ。いやーやっぱり2人で飲むとどんどん減っちゃうね。テヘッ」
「テヘッじゃねぇよ。もう仕方ないな。はいじゃあこれ2万リラ!」
そう言って魔法鞄から2万リラを取り出す。こんな大金が酒代に……。残りはこの国に来たときに持ってきたリラと合わせて1万3400リラか。当分の食事とエールも買ってるしこれ以上の出費はないはずだ問題ない問題ない!
悔しい思いをしながらまだ飲みたいドーコを引っ張りつつ寝床ソファーへと向かう。明日起きたら早速自宅を見に行こう。
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