24話 番外編 一方残されたドバン
ドバン視点の物語です。
「残りの角狼は俺1人で大丈夫だ。それにしても、本当にマジックアイテムなんて物ができるなんてな」
ドワルフの活躍によって、残った魔物は少なく、仲間は負傷状態であったため、怪我の少ない俺が受け持つ事にした。
「あのエルフとの混血が助けに来るなんてな。俺たちあんな酷いことを言ったのに……」
「そうだな。いくらエルフとの混血だからって言い過ぎちまった。それにドーコについてもだ」
俺もドーコの時は反対せずにいた。こいつらのことを強く非難もできない。
「いやドーコに関しては長の面子があっただろう。ドワルフが、この窮地を救ってくれた事を、俺たちは村の皆に伝えなきゃいけねぇ。そのためにもお前達は、早く怪我人の手当てを少しでもやってくれ。あとはこの俺、ドワーフの村の門番、ドバンの役目だ」
といってもほとんどは大竜巻の惨状確認といったところだが。重症の仲間を、軽症の仲間達が肩を貸しながら、村の方へと順調に運んでいく。
「あーそうだ。ドーコのためにポーションがいるから1つだけとっておいてくれ」
「あいよ」
ここでポーションを全部使い切りました、なんて事になったら俺はドワルフに顔向け出来ねぇ。ちゃんとエリクサー用のポーションを残しとかなきゃな。
「それとすぐ直せる様に長の奥さんに頼んで、ドーコを迎えに行ってくれ。今すぐにでも治したい筈だ」
「それもそうだな」
それにしても酷い有り様だな。別に素材なんてこの際どうでもいいんだが、角までスッパリ切れてやがる。肉も殆どがミンチになってる。並の奇跡使いでもこうはならないだろうな。
さっさと近くにいる弱りきった魔物の残党を倒し、まだ元気なドワーフに交代して、ドワルフのことを伝えに長の元へと向かう。
★ ★ ★
「長! もう村の近くは大丈夫だ。問題はドワルフが一人で月角熊に行った事だが、俺に出来ることがあるかはわからないが、今すぐ向かいたい」
正直に思ったことを、長に伝える。
「ドワルフとドーコが作ったと言う、マジックアイテムが窮地を救ったと言うのは、本当かドバン」
先に帰った仲間が伝えてくれたのか。
「本当だ。なんなら村の外を少しでも見ればわかるよ」
「よし、ではワシも見にいくことにしよう」
一刻も早く、ドワルフとドーコの待遇改善を要求したかったが、見てもらうのが1番早いだろう。
★ ★ ★
「こっこれをたった1人でやったと言うのか?」
流石の長もこれには驚いたようだな。俺の時と同じく腰を抜かしている。
「1人じゃないぜ。ドワルフと長の娘さんドーコの合作マジックアイテムの効果らしい。たった一振りでこの威力だ」
「実際に魔物の死体を見た今でも信じられん……」
長が魔物の死骸のを見ながら呟く。
「だったらほら、ドワルフの配信フォローして、戦い振りでも見て待っていてくれよ」
長について来た他の噂好きなドワーフ達も、信じられないと言った表情だ。俺もあの時見ていなかったら、信じられなかったかもしれない。
「それでドワルフとドーコの処遇についてだが、どうするんで? ここまでの戦果を上げたのに、マジックアイテム製作など無理だと、エルフの力を借りるなどドワーフの恥と言って、愛娘を追放したが、どうするんだ?」
少し嫌味ったらしく言う。
「むむむぅ。認めざるを得ないな。ドワルフについてもそうだな。エルフとの混血と言って追放したが、我らとて村の崩壊を防いでくれた恩を無碍にしては、ドワーフの名折れ」
「と言うことは2人の追放は!?」
俺は長の表情をじっくりとみる。
「詳しくは無事にドワルフが帰って来てから、宴会で話すことにする。ドーコも呪いから癒えれば、エールが飲みたくなるだろう」
よかった。これで長を説得出来なければ俺は、ドワルフに顔向け出来ないところだった。そういえばドワルフはアギリゴの実を取りに行くのに、袋を持っていってなかったな。袋を持って行って、沢山のアギリゴの実を、俺が持って帰るとするか。
★ ★ ★
森の中も凄惨な物だった。ありとあらゆる物の形が変わっていた。俺の知っている森と違う。あの大斧を振り回していったんだろう。ここまでになってくると、魔物が可哀想と言った気持ちにすらなる。それほどまでに、ドーコを救いたいと言う気持ちが強いんだろう。
途中魔物と会うことはなく、アギリゴの実を拾いながら、ドワルフの元へと向かっていく。どんどんと魔素が濃くなっているのを感じる。これはもしかして、月角熊じゃないのでは!?
嫌な予感と胸騒ぎがするので、アギリゴの実はとりあえず置いておいて、いち早く参戦できる様に槍を強く握りしめ、決意を固める。
月角熊以上となると、もしかしてさらに進化した満月角熊か!? そうなってくると厄介だ。月角熊の進化系だ。普段は角熊として森にいるのだが、条件はわからないが、月角熊へと進化するとただの角だけでなく三日月型の角になっており、中々にその攻撃は防ぎづらいものになっている。
そして次の進化、満月角熊になると、胸の部分に満月の様な盾が現れ、大抵攻撃が防がれてしまう。ドワルフのマジックアイテムでも攻撃が通らないだろう。
それに満月角熊となっては、Aランク冒険者でも狩ることは難しいだろう。俺が行ったところで、焼け石に水なことぐらいはわかっている。それでもせめて、少しでも力になりたいんだ。
死ぬことは怖い。しかしそれ以上になんの力にもなれず、ドワルフを見殺しにすることの方が怖かった。最悪俺が犠牲になって、鞄をドワルフに渡して逃げて貰えばそれでも良い。その覚悟はもう出来ている。
無事でいてくれドワルフ!!!
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