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21話 昨日はお楽しみでしたね

 チュンチュン


 チュンチュンうるさい。鳥か?


 朝チュンというやつか。目頭を指で押さえながら起きる。窓外から入る日は既に大分高い。もう昼ごろか? 精力フルコースのせいか、朝までぶっ通しでやり続けたことまでは覚えているんだが、そこから先の記憶がない。


 夢じゃないかと思ったが、となりにドーコが裸で寝ている。夢ではないようだ。昨日は狩りと夜、両方で疲れたから、今日はしっかりと休みたいな。シュドさんに売った商品の値段が、いくらかはわからないが、相当稼いだだろうし、今日くらい休んでも罰は当たらないだろう。


 朝ご飯でも作ろうと思ったが、それすら億劫だな。こういう時カップ麺が有れば楽だなー。ドーコを起こそうかと思ったが、ぐっすり可愛い顔をして眠っている。俺も二度寝でもしよう。




★   ★   ★




「起きてー! もう3時だよ! 仕事しなきゃ!」

「うーん二度寝はやっぱり目覚めが悪いな。おはようドーコ」


 やっぱり一度起きた時に、何かするべきだったか?


「おはようドワルフ。じゃなくて早く仕事しないと! ヒューマンの国に行くのに遅れちゃうよ!」

「そんなこと言ったって、俺は昨日狩りやらなんやらでもうヘトヘトで、今日は休む予定だぞ。それにお金なら昨日いっぱい稼いだんじゃないのか?」

「あれは殆ど、昨日の料理に使ったんだよ!!」


 ほとんど料理にって……。確かにドーコの作品は、かなりの価値で売れるのに、周りにある高そうなものと言えば宝石ぐらいだ。もしかして稼ぎを全部、宝石に使ったりして。よし、ドーコに財布は任せない。


「これから財布は、俺が管理する。ドーコに任せてたら、お金がいくらあっても足りない気がする」


 二度寝のだるさでまだ寝ている俺の足をドーコが掴ん引っ張り上下に揺さぶる。


「えー! それは昨日が特別だっただけで」

「宝石にも相当入れ込んでただろ?」


 ドーコが図星を突かれたようで、俺の足から手を離し、少し後ろに下がる。


「わっわかったよぉ」


 寝起きの頭をはっきりさせるのに首を回す。んーちょっと頭痛がする。あのエールも変に効いてるのか。


「この世界の結婚ってどうなってるんだ?」

「けっ結婚!? 本当に私で良いの? ロリコンって言われるよ?」


 ドーコは結婚という俺の発言に驚いたのか、さらに後ろに下がっていく。ヤってすぐ結婚って、俺の考えが古すぎるか?


「髭がないとロリってのは、あくまでドワーフの価値観だろ。いやドーコはヒューマンでもロリか?」

「ロリロリうるさいなぁッ!」


 ドーコがドシドシと近づいてきて、鋭いボディーブローで俺の腹を抉る。寝起きには効く。腹を抱えてごろごろする。頭ははっきりしてきた。


「そこに疑問を持つなー! でも結婚は種族によって祝い方が違うね。エルフは知らないけど、ヒューマンは教会であげるそうだよ。ドワーフは宴会を開くね。村のドワーフ族みんなでするおっきな宴会」


 ドヴァルグの長の復活した時の宴会みたいな規模か?


「ふーん、でも追放された俺たちには、ドワーフ式の結婚は難しそうだがどうする?」

「私は別にヒューマン式でも良いよ。ドワルフと一緒になれるなら」


 ……朝っぱら……いや昼っぱらから何の話してるんだ俺たちは。


「小っ恥ずかしい話はもう終わりにして、今日は休もうぜ」

「結局その話に戻ってくるの? 私も昨日のドワルフがあんなに激しいなんて知らなかったから、疲れてるけど。うーんでも早くヒューマンの国に行きたいしなー」


 ドーコがベッドに腰を下ろす。


「激しくなったのはあの料理のせいだろ! じゃあ俺は余り動かなくてもいいヤツ……宝石魔法だけやっておくよ。精神力は完全回復したしな。」

「ずっるーい! 私も何かあんまり動かなくてもいいこと覚えればよかった。出来ないこと言っても仕方ないし、マジックアイテムの用の剣でも作ってみようかな」


 俺でもこんなに疲れてるのに、鍛冶仕事をするなんて、ドーコは流石生粋のドワーフだな。


「その前にご飯食べなきゃな。腹黒くない、普通の」


 少し毒付いてみる。


「もうわかってるって! 絶対私よりドワルフの方が腹黒だよ……」


 腹は減ったし……朝食(?)を作るために、ようやくベッドから立ち上がる。




★   ★   ★




 食事を終えて鍛冶場に。やはり普通の食事は安心する。配信をつける。タイトルは『宝石魔法作り』でいっか。


〔エマ:遅いじゃない。ずっと待ってたのよ。もう少しで今日はもう諦めるところだったわ〕


 ずっと待ってるなんて甲斐甲斐しいなーエマは。


〔ドワルフ:まぁこっちにも色々あってな〕

〔エマ:タイトルを見て言おうと思ったんだけど、あなたがやってるの宝石魔法じゃないわよ〕

〔ドワルフ:ん? 宝石に魔法を封じ込めるのが宝石魔法だろ〕

〔エマ:もう一度おさらいするけど、ちゃんというなら魔法を込めるのが宝石魔法よ〕

〔ドワルフ:何が違うんだよ。一緒じゃないか〕


 そう言いながら俺は、次の宝石に魔法を封じ込めていく。


〔エマ:あなた無意識でやってたのね。あなたがやってるのは、封じ込めることなのよ。普通の宝石魔法は精神力が戦闘中すぐ切れないように、先に込めておいて発動する時に、少しの精神力で効果を発するようにするものなのよ。だから本来は精神力がないと、意味がないのよ〕

〔ドワルフ:じゃあ俺のはなんなんだ?〕


 魔法を封じ込めた宝石を見ながら尋ねる。


〔エマ:さぁね。でもとにかく宝石魔法じゃないことは確かよ。それは精神力をほとんど持たない、ドワーフのドーコが使える時点で証明してるわ〕


〔ドワルフ:そういえば思いの強さで変わったぽいし、俺の【ヒューマンの良心】も関係してるのかもな〕

〔エマ:あなたヒューマンとの混血でもあるの!? しかもまたユニークスキル持ちって……何かいろいろ規格外で別世界の住人とでも接してる気分だわ〕


 鋭いな。また一から説明するのもなんだしはぐらかしておくか。


〔ドワルフ:まぁややこしい話があるんだ〕

〔エマ:深くは詮索しないでおくわ。気を強く持ってね〕


 何やら、俺の境遇が、凄い悲惨なイメージになってるような言い方だな。


「おーいドーコ、どうやらマジックアイテムに必要なのは、エルフの力だけじゃなさそうだぞー」


 俺は手をブンブン振りながらドーコに呼びかける。


〔ドーコ:そんな大声出さなくても、私も配信見てるってば!〕

〔ドワルフ:あーそういえばそうだったな。コメントしないもんだから、すっかり忘れてた。マジックアイテムについてどう思う?〕

〔ドーコ:とりあえず1人で作れる物じゃないね〕

〔エマ:同意するわ。エルフの宝石魔法のトリガーを精神力に依存せず、使用者の思いや感情で威力が変わるなんてモノ、とてもじゃないけど一人じゃできないわ〕

〔ドワルフ:しかも効果を高めるために、装飾が効果的っていうのもな。もしかして大昔の人達はみんなで協力してマジックアイテムを作ったのか?〕


〔ドーコ:……ありえない話じゃないね。ドワーフとエルフが喧嘩するより前だったら可能性はあるかも〕

〔エマ:それにしたって、魔法と祈りの力の混合なんて聞いたことがないわよ。もし作るとしても、相当な者じゃないと無理よ〕

〔ドワルフ:謎は深まるばかりか……〕

〔エマ:そんなことを、1人でやってるあなたが1番謎なんだけどね〕


 俺が作れるのはまだ風属性のみだ。これだと快適スローライフのためには扇風機ぐらいしか作れない。そうだ、扇風機の良さを紹介するために今夜にでもドーコに見せてみるか。俺はエメラルドを二つポケットにしまう。


 早くエルフの里に向かわねば。ドーコじゃないが、俺も冷蔵庫を作ってみたい。


 どうやら作り方に慣れたらしく、ドーコの家にあるエメラルド全てに、風魔法を封じ込め終わってしまった。精神力はまだ切れた感じはない。初めは一個で限界だったのにな。


〔ドワルフ:なぁエマ。精神力って簡単に増える物なのか?〕

〔エマ:大体成長期に伸びきって、そこからは個人差はあるけどあんまり伸びないわね。さっきからエメラルドを触ってはやめてってしてたけど、やっぱりまだ込めづらかったりするのかしら?〕


 じゃあまだ疲れが来ない俺は、今まさに成長期ってことか?


〔ドワルフ:いやそうじゃなくてだな、どんどん効率化が進んで、もう全部エメラルドに込め終わったんだ〕

〔エマ:はぁ!? 前は一個で精一杯だったじゃないの? それがどうなったら、そんなすぐ何十個もできるようになるっていうの!?〕


 顔は見えないが、きっと今エマはすごい顔をしているんだろう。


〔ドワルフ:だから精神力について、質問したんじゃないか〕

〔エマ:それ以前の問題よ!!! あぁもうあなたを見てると、純血エルフとして情けなくなっちゃうわ〕

〔ドワルフ:まぁそんなに落ち込むなよ。それに俺は風属性しか使えないしな。土属性だったら、エマには敵わないよ〕

〔エマ:それはそうね。当たり前よ〕


 エルフの里に着いたら教えてもらうんだから、多少は機嫌をとっておかないとな。




★   ★   ★




 窓から外を見ると、もうすっかり日が落ちていた。中は鍛冶場の火で、ずっと明るいから気付きにくかった。鍛冶場の火が消えると、ドーコが歩きづらそうにしながら、こっちにやってくる。


「ほら一本マジックアイテム用の剣できたよ。早速、合わせてみよっか!」


 早く試したくて仕方ないのか、ドーコは剣をグイグイ押し付けてくる。


「今日は日も落ちたし、また明日試そうぜ。そうだ今度はあの森(ドギゾボの森)に行こう」

 

 来たばかりの時では考えられなかったが、昨日の平原の魔物では、試用に少々物足りなくなってきていた。


「あんまりドワーフの里に近づくのはね……。それに人のばっかり作って、自分が着る鎧を作ってないけど大丈夫?」

「あっ」


 うっかりしていた。そもそも俺の目標は最強装備でぬくぬく安全スローライフだったのに、防具を忘れるとは何事だ!


「よし明日は鎧を作るぞ! ドワーフ鋼の在庫はあるか?」


 俺は座っていた椅子から立ち上がる。


「ドワルフが殆ど売り物用の鎧に使っちゃったじゃない! それに今日もこの剣に使っちゃったしもう少ないよ」

「どうしてシュドさんから買わなかったんだよ!」


 ドワーフ鋼って結構今まで使ってきたじゃないか。もっとありふれてる物だと思ってた。


「ドワーフ鋼は、シュドさんがドワーフの村に行って買ってきて貰ったのを買うの! だから、そもそも今回は買えなかったんだよ! それにもうすぐ、ヒューマンの国に行く予定だったじゃん!」


 反論の余地のない正論だ……。くっ俺が貴族向けの鎧なんて作らなきゃこんなことには。だがやってしまった事を悔いても仕方ない。


「じゃあ、今ここにある硬度のなるべく高い金属で明日作るか。それなら問題ないよな」

「うん。別に使う予定もないしね」


 よし明日は最強装備には程遠いが、自分用の鎧を作るとするか。


「じゃあ今日は配信切ります。来てくれてありがとう」

〔エマ:おつかれ〕


 そう言って今日も配信を終了する。自分の装備を忘れるとはなんたることだ……。

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