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18話 はじめての商人

「はーい!」

 

 ドーコがドアを開け来客に応対する。


「ドワルフいつまでもしょげてないで!商人が来たよ!」


 ドアのところで、おいでおいでをしているドーコ。

仕方ない気分を切りえよう。考えてみれば、鎧も完成したし、ベストタイミングだ。気を取り直してドアへと向かう。外を覗くとそこには、大きな肩掛け鞄をぶら下げ、馬を連れた、髭を生やしている男がいた。元の世界でいうところの欧米人のような顔つきだ。


 彼がヒューマンか。ヒューマンって種族は日本人のような顔つきではないらしい。


「お邪魔しますー。おぉおぉこれはドーコ様と、そちらの御人は?」

「こっちは私のパートナーの、ドワルフ」

「おぉおぉそうで御座いますか。だからあれをリストに追加したのでありますね。納得いきました。では今回のお取引を始めましょうか。いつも通り物々交換でよろしいのでしょうか?」


 “あれ”をリストに追加? 何のことだろう。俺だけ仲間外れな気がして興味が出た。


「あれってなんだ?」


 俺だけ仲間外れの会話があって少し気になった。


「もう! それはいいから! それより、今回は2人でで作ったから、いつもより商品が多いんだよ。お金もよろしくね」


 ドーコが無理やり話を変える。あやしい。何だ、あれって。


「了解致しました。早速商品を見せていただけますか?」


 

 ドーコが商人を迎え入れ、鍛冶場へと案内して次々と商品を見せていく。商人は何やらメモを取りながら、次々と品定めしていっているようだ。俺の作った品の鑑定に入ると、髭を弄って言う。



「おぉおぉドーコ様! 遂に魔物の皮を扱えるようになったのですね! これで軽装備の冒険者にも商品を売ることができます。しかし魔法印を入れ忘れているようですが?」


 商人は新しい商品を鑑定しながら髭を弄っている。


「……入れ忘れたんじゃなくてそれはドワルフが作ったものだよ」


 ぶすっとドーコが少し不貞腐れされた。


「でっではここにある魔法印の入っていないものは、もしかして全てドワルフ様が作ったものなのですか?」

「そうですが何か問題がありますか?」


 やっぱり魔法印がないと価値が減るのか? 不貞腐れたドーコの代わりに俺が説明する。


「いっいえ問題なんて滅相も……いやこんな高品質の物が魔法印無しとなるとどうやって売値を付けるかどうかが非常に難しくてですね」


 高品質とは嬉しいことをいってくれるねぇ。この商人さんは。


「安値でもいいので買い取って頂けると助かります」

「やっ安値なんてとんでも御座いません。そんなことをしてしまってはドーコ様に申し訳がたちません。しかし困りましたね。今の手持ちではとても支払いきれませんね」

「えー! いっぱい持ってきてねって言ったじゃない!」


 そんな大金になる程の出来だったのか! ドーコは商品価値に関して何もいってくれなかったからな。俺には、てんでわからなかった。


「それにしても余りに規格外でして、いや申し訳ございません。残りの分は、次回でもよろしいでしょうか?」


 その言葉を聞くなりドーコはニコッと笑顔を浮かべた。


「じゃあさ! サービスするから私たちを、ヒューマンの国に連れて行ってくれない?」


 もしかして計算済みだったのか!? 流石腹黒リ、恐るべし。


「今すぐとなりますと、馬にそのまま乗っての旅になりますが、よろしいですか? 私共としてはドーコ様は上客ですので、事前準備の上、最高のおもてなしをしたいのですが」


「どうするドワルフ?」

「俺は初めての旅だしな。多少時間がかかっても、快適な馬車に乗りたいな」

「それもそうだね。じゃあシュドさんそれでよろしくね」


 この商人はシュドって名前なのか。髭を伸ばしてるし、もしかしてドワーフ担当の商人だったりするんだろうか?


「それでは本日のご会計ですが、こちらでよろしいでしょうか?」


 そう言ってドーコに領収書を見せる。


「うん! 残りの分はヒューマンの国で直接売ることにするよ」

「助かります。それではこちらを」


 と言いながらどう考えても、シュドさんの肩掛け鞄には入り切らない大きさのエールが入った樽やたくさんの食べ物が出てきた。これがもしかして伝説の魔法鞄か!?


「ドーコ。あの鞄はマジックアイテムじゃないのか?」

「ん? マジックアイテムはマジックアイテムだけど割とありふれたものだね。武器や防具じゃない道具系のアイテムは、割と傷もなく残ってたりするんだよ。交易に便利だから今でもヒューマンには作れるらしいけど、作り方はヒューマンの国だけのナイショ。そのせいで私には作れないけどね」


 いわゆるレア扱いマジックアイテムか。ウルトラレアとかじゃない奴。じゃあヒューマンの国で行けば買えるのかな?


 気になってシュドの鞄を見つめていたら、シュドさんが話しかけてきた


「お察しの通り、当商人ギルドでも扱っておりますよ。このサイズでしたらザッと150万ルラとなっております」


 俺は欲しそうな顔してたのか。ばれてしまった。さすが商人、商機は逃さないわけかい。


「なぁドーコ150万ルラってどれくらいの値段なんだ?」

「そうだねー。私が休まず、半年作り続けたら買えるんじゃないかな」


 は? 半年分? 半年の貯金生活は流石に長い。いつか手にしてみたいが、当分先になりそうだな。だがこのシュドさん。そんな高価な鞄を持ち歩いてるってことは、相当な偉い人なんだろうか。


「私たちにこんなに商品を卸していいの? この後ドワーフの村(ドヴァルグ)にいくんじゃ」

「それがですね。連絡が取れないので御座いますよ。ですので今回は、ドーコ様のみが取り引き先となっております」


 連絡が取れない? ずっとドバンが配信に来ていないのが、気になっていたが、何か理由があって見れなかったのか?


「ふーんまぁそれなら仕方ないね。じゃあ受け取るものも受け取ったしありがとう!」

「いえいえこちらとしましても、ドワルフ様という新しいお取引相手が増えまして、嬉しい限りでございます」


 あっそうだ。まだ俺のとっておきを見せていない。見てもらわないとな!


「ちょっとだけお時間頂いてもよろしいですか?こちらを見ていただきたくて」


 俺はシュドを鍛冶場の奥にこっそり布をかけておいていた鎧のところに案内し、その布をすっと布を下ろす。タターン! どうだ! 俺のとっておき!


 目を見張り、鎧に駆け寄るシュドさん。お? いい反応?


「こっこれは一体!? こんな精密な装飾見たことがありません! 縁に使われている金がまたいいアクセントを!」


 コンコンッと品定めするように鎧を叩くシュドさん。様になっているなあ。 


「それに、この音、ここ周辺でしか取れないドワーフ鋼! 王が召されてる物より装飾から何まで遥か上の物!?」


 何という緻密な分析力。これでシュドさんの服でも破けてたら、料理漫画の感想みたいだな。貴族じゃなくて、王様が着るレベルとなったか。これはひょっとして物凄いものが出来てしまったのか?


「もっ申し訳ございません、取り乱してしまい、不躾に品定めに入ってしまいました。それにしましても、重ね重ね申し訳ないのですが、こちらを今すぐ取引することはできません。直接当方のギルドマスターに見て頂かなければ」


 ギルドマスターまで出てきたか。大事になってきたが、ここは配信を宣伝するチャンスだ。


「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はメインジョブ配信者、サブジョブなしのドワルフと申します」

「おぉおぉこれは重ね重ね失礼致しました。本来は私の方が先に自己紹介すべきでしたね! 私はメインジョブ商人、サブジョブ配信者のシュドと申します。以後よろしくお願い致します」


「先程の話なんですが、即取引はできないというのは、こちらとしても想定外でして、もしよろしければ、私の配信を広めては頂けないでしょうか? 配信者としても鍛冶師としても非常に助かるのですが」

「それくらいのことなら是非。できる限りのことをさせていただきます。こちらもその代わりといっては何ですが、私の専売という形にして頂いてもかまいませんか? それで相互フォロー、両得という形でいかがでしょう?」


 そういってシュドさんは手を伸ばし、握手の姿勢を取る。なるほど商売上手だ、伊達ではないな。確かに損はない。


「はい。それではその方向でよろしくお願いします」


 俺もその手を握り返し、お互いの配信をフォローし合う。


「私達もヒューマンの国に行きますし、その時にでもギルドマスターに見ていただくことにさせてください」


シュドが丁寧に俺の作った鎧を丁寧に鞄にしまう。ほんとに何でも入るな、その鞄。ほかの商品も順番に鞄にしまいつつ、ふと思いついたように俺の方を見る。


「いやーしかし、ドワルフ様、鍛冶師ではいらっしゃらないのに、ここまでの物を仕上げるなんて、本当に凄いですね」


「ドワルフばっかり褒められてずっるーい! ねぇシュドさん私の自信作も見てよ」


 シュドさんがあまりに俺ばかり褒めるので、ドーコが間に入ってきた


 ドーコは自慢の大斧を引っ張ってくる。おいおい! それは非売品じゃないのか?!

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