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16話 ドワーフの生きがい

「ここって夜になると真っ暗になるだろ。でも俺の元いた世界だとずっと明るいんだ」

「日が落ちないってこと? 時間が分からなくて不便だねー」

「いやいやそうじゃなくて、どこでもこのランタンみたいに灯りがついてるんだ。さっきも言ったが、祈りの力や魔法がない代わりに、別の力を利用してな」


 俺は電気を一から説明出来るほど、賢くはない。


「ふーん。明るいんだったら、夜でも安心かもね」

「あっそうだ。そもそも俺の世界では魔物がいない。だから武器と防具も殆ど使わない」

「えーーーーー!?」


 椅子から転げ落ちそうになるドーコ。魔物がいないってのは、相当驚く事だろう。こっちはそれこそ、そこら中にいるし。


「魔物が出ないのはまだいいけど、武器と防具も無かったらどうやってドワーフは生きていくの!?!?」


 そっちだったか。


「そもそもそこまで大きな人種の差って言うのが、ないんだ。だからドワーフもエルフもいない。まだ見たことはないが明日来るヒューマンが一番近い種族かな。で、ヒューマンしかいない」

「もしかして魔王もいないの?」

「いない。というかこの世界には魔王がいるのか? 早くのスローライフを送りたいから、冒険者が倒してくれるのに期待だな」

「そうだねー。そんな冒険者に使って貰える物を作れるよう頑張らなきゃ!」

「そうだな。そうすりゃ俺の配信も人気になるかもしれない」


 一流パーティー御用達の装備店なんていかにも人気が出そうじゃないか。


「あーあ私もドワルフがいた世界に生まれたかったよ。でも鍛冶がない人生なんて考えられないけど」

「まぁ趣味や嗜好品としては需要があるけどな。でも俺はこっちの世界の方が良い」

「どうしてどうして? 話を聞いてると、ドワルフがいた世界の方が安全な気がするよ?」


 うーん、なんて言ったらいいんだろうか。


「俺は安全より自由に生きたいんだよ。社会の歯車になって、あくせく働くのが嫌だったんだ。それに比べてこの世界は、好きだった物作りができる、配信だって続けられる。そして自分を認めてくれるドーコがいる。これ以上ないって環境だ」

「えへへー。そう言ってくれるのは嬉しいね。そういえばドワルフは元の世界でも配信者だったの?」


 褒められて嬉しいのか、ドーコが俺のジョッキにエールを注いでくる。


「あーっとその話はあんまりしたくないから、掻い摘んで言うと自業自得だな。二度と同じ失敗をしないように、気をつけてる」


 調子にも乗らないし、嘘もつかない。ちょっとしたジョークは言うけどな。


「深くは聞かないようにするよ。何もかも違う世界から、こっちに来るなんて災難だったね」

「あっちの世界とかこっちの世界とかでややこしいな。俺の世界は地球っていうんだ。こっちの世界はなんて名前なんだ?」

「この世界はガルドモニアって名前だよ」


 なんか大層な名前だな。覚えるよう善処しよう。


「初めてガルドモニアに来た時、角の生えた兎といきなり戦った時は死んだかと思ったね」


「え!もしかしてあの森(ドギゾボの森)にいきなり行ったの?」

「いきなり行ったというか、そこに急に転生させられたんだよ。ほらアギリゴの実持ってたの配信で映ってただろ?」

「そういえば……よく生きてるね……」


 ドーコが深刻そうな顔で言う。いきなりあの森(ドギゾボの森)に転生したのは余程危険だったんだろう。


「自分でもそう思う。まぁそのお陰でドワーフの長を助けられたし、良かったのかもしれないがな。追放されたけど」

「ドワーフとエルフはずっと仲が悪いからね。それにしてもパパを助けてくれてありがとうね」


 パパ?


「俺は長しか助けた覚えは無いが、他に何かしてたか?」

「あっ……」


 ドーコは口をハッと隠す。言っちゃいけない事を言った子供みたいな反応だな。


「もしかして前言い淀んでいたがドーコ、お前のお父さんってもしかして、長だったりするのか?」

「隠すことでもないんだけど、恥ずかしくてね。そう、私のパパはドワーフの長をやってるんだよ。だからみんなに期待とか、されてたんだけどね」


 昔のことを思い出したのか、せっかくの宴会だと言うのに、シュンと小さくなるドーコ。


「長の娘なのに髭が無いってだけで追放されたのか? それはあんまりにも酷すぎやしないか?」


 俺が長だったとしたらなんとしても娘を守るけどな。


「長の娘だからこそだよ。威厳のある次期長候補なのに髭が無い。それにマジックアイテムを作ろうとエルフに会おうとしてる。本当だったら村外れじゃなくて、もっと遠くの場所で、鍛冶仕事を禁じられてもおかしくなかったんだよ。それでも、魔法印を与えてくれたパパには、感謝してるよ」


 しきたりを守るために、仕方なくと言った感じか。それでも皆から反感を買わない、ギリギリの支援をしたという事か。俺の時も、ヒューマンの国までの路銀を持たせてくれたしな。


「ちゃんとお父さんに愛されていたんだな」

「そうだね、うんきっとそう」


 ちょっと場が白けてしまったか……。話を変えよう……。


「1つ気になることがあるんだが、ドワーフの村(ドヴァルグ)って結構魔物が攻めてきたりするのか?」

「いやそんなことはないよ。確かにあの森(ドギゾボの森)が近くて危ないといえば危ないけど、森から離れる魔物は少ないよ」


 だとしたらドバンが最近配信に来ないのは、何故なんだろう。単純に忙しいとか、つけ忘れてるとかだったらいいんだが、妙な胸騒ぎがする。


「今日は疲れたね。明日は商人が来るし、作業はおやすみにしようか」

「ドーコは休んでもらって良いが、俺はあの鎧を商人が来るまでに完成させたいんだ。だから作業を続けるけど構わないか?」


 完成させてどんな評価を貰えるか、ちゃんと商人から聞いてみたい。


「いいけど、無理はしないでね」

「あと休みってドーコは何をするんだ? 鍛冶以外にすることなんてあるのか?」

「朝から飲む!」


 そんな胸を張って言われてもだな……本当にドワーフにはエールと鍛冶しかないのか?


「もしこの世界から鍛冶とエールがなくなったらどうするんだ?」

「世界を滅ぼすかな?」


 なんとも物騒な話だ。そうならないためにも、明日は早めに鎧を完成させて、何かしら趣味を見つけさせないとな。魔物狩りとかどうだろうか? ストレス発散になるだろう。それにちょっとぐらい俺も異世界を感じてみたくなった。レベルはドーコよりも高いし、ステータスは見えないが大丈夫だろ。


「なんか今失礼なこと考えてなかった?」

「そんな滅相もない」


 酔っ払っていると言うのにドーコのセンサーは敏感だな。誤魔化しながら、ベッドへと向かう。


 明日は商人が来る、初めての別種族との交流だ。いくらで俺の作った物が売れるか、気になって上手く寝れるか心配だな。

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