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15話 元いた世界とこの世界

 せっせと料理を2人で作っていく。明日の朝昼の食事分を残して、食材全部を使うんだ。結構な重労働に感じる。だが無理もないのかもしれないな。俺は【ドワーフの神】持ちだが、料理系のスキルを持っているわけではない。


 元の世界で実家暮らしの時だって、カップ麺やコンビニ弁当ばかりで、ろくに包丁を握ってすらいなかった。それに比べてドーコは鍛冶仕事だけでなく、家事仕事もテキパキとこなす。ドーコは、ドワーフの女は髭や鍛治技術に惚れると言っていたが、俺は、ドーコの料理する姿に惚れそうだ。


「なにぼーっとしてるのドワルフ? もしかして無理が祟った?」


 ドーコが、俺の顔を心配そうにみてくる。


「ドーコは調理するのが早いなーって、見惚れてただけだ」

「もー! 本当なら鍛冶仕事でそうなる予定だったのにぃ!」


 こちらを心配そうにみていた顔をプイッと他所に向けて、笑いながら調理を進める。


「「いただきまーす」」


 机の上いっぱいに、料理が乗っている。主に肉がメインだが、それでもバリエーションに富んでいる。なんてったって、あの伝説のマンガ肉がある! 即マンガ肉を手に取り、頬張る。口いっぱいに肉汁が広がり美味い! 今までこの世界で食べてきたものも美味しかったが、その中でも憧れ補正で、より一層美味しく感じる。


「どっどうしたの? なんか凄い泣きそうな顔してるけど、魔法印のことだったら本当にごめんってば」


 俺今そんな顔してるの?


「いやそうじゃない。一度こう言ったでかい肉を、口いっぱいに頬張るのが夢だったんだよ」

「そんな夢だったらいくらでも叶えられるよ。なんていうか、ドワルフは本当に変わってるね。私のことだって何事もなく、すぐに受け入れてくれたし」


 ドーコが今までを振り返っているのか、天井を見つめている。


「そりゃ俺のいた世界だと、髭を伸ばした女性の方が珍しいからな。きっとドワーフの村(ドヴァルグ)で長居してたら、女性に飢えて死んでいたと思うぞ」


 二次元に逃げることも出来ないし、きっと気が狂っていただろうな。


「そんな大げさな……。そういえば私、ドワルフの元いた世界について何にも知らないや。良かったら教えてよ!」


 ドーコの目が珍しく、鍛冶以外で輝いている。


「それはいいんだが、その前に1つ気になったことを聞いてもいいか?」

「ん? なになに?」

「ジョブに配信者を入れてない奴はどうやって自分の情報を見るんだ? 俺なんかは不安で毎日見ちゃってるんだが」


 配信やり始めってソワソワして、つい見ちゃうんだよな。


「あーそれは簡単だよ。配信者の人に頼めばいいんだよ。そうだドワルフ、私のマイページ教えてよ!」

「いやだからその方法が分からないんだって」

「聞いた話だと、フォロワー一覧からマイページを見たい人を選ぶんだってさ」


 うーん取り敢えず言われた通りに念じてみるか。フォロワー一覧を表示っと。おぉ確かにドバン、ドーコ、エマが表示されている。それでドーコ意識して、マイページ表示っと。


--------------------------------------------------


名前 ドーコ

レベル  16


筋 力:248

防御力:58

魔 力:0

精神力:4

敏 捷:15


メインジョブ 鍛冶師

サブジョブ 戦士


スキル なし


ユニークスキル なし


--------------------------------------------------


 本当に見えた! 配信者じゃないから当然、視聴者数とフォロワー数の表記はないな。サブジョブに戦士があるためか、俺とは違いステータスが載ってるな。


 戦士なだけあって防御力が高い。でも特筆すべきはこの筋力だ。1つだけ桁が違う。もしかして鍛冶師にはこんなに筋力が必要なのか?


 スキルがないのは、俺と同じだ。ユニークスキルもないが、持ってる方が珍しいらしいし、そんなもんだろ。問題はレベルが俺より下なことだな。これはきっと聞かれると面倒なことに……。


「ねぇねぇどうだった! 前にレベルを見てもらった時には14だったんだよ、上がってるかな!?」

「おう16に上がってるぞ! 良かったなー!」


 ちゃんとよかったって顔できてるか俺?


「へへへーいざってなったら、私がドワルフを守ってあげるんだから! そういえばドワルフのレベルっていくつなの?」


 よかったって顔を維持し続けろよ俺!


「ほらほら恥ずかしがらなくてもいいからさ!」


「……10」


「今変な間がなかった? 本当のことを言ってよ」

「24だ」


 ……。


「にに24!? まだこの世界に来てから、一週間も経ってないよね?」

「まだ一週間も経ってないのか。1日が長いせいで、もっと経ってるかと」


 ドーコは立ち上がり、首をブンブンと横に振る。


「いやいやいや! そこじゃなくて! どうしてもうレベルが、私よりも上なの!? ひょっとして夜中にあの森(ドガボゾの森)へ行ってたりするんじゃないよね?」

「あんな危険な森に!? 夜1人で向かえるわけないだろ! 追放されたドワーフの村(ドヴァルグ)も近いし」


 ドーコは椅子に座り直し、なんとか落ち着きを取り戻したようだ。


「それもそうだよね。でもどうしてそんなにレベルが上がるのが早いんだろう? もしかしてそれも【ドワーフの神】の力?」

「かもなー。いやーユニークスキル様様だよな」

「うぅーズルいズルいズッルーい!」


 せっかく落ち着いたと思ったのに、今度は子供みたいにジタバタ暴れる。


「まぁまぁ落ち着けって。それより俺の元いた世界について聞きたかったんだろ」

「うーん上手く話を逸らされてるけどそうだね、その話すっごい興味があるんだよ」

「何から話したもんかな。そうだ宴会といえばもっとたくさんの種類の酒があるぞ!」

「そんなのこの世界にもあるよ。ただエールこそが至高だから、エールを飲んでるってだけで」


 ドーコが、ゴクリと喉を鳴らしてエールを飲む。そうだったのか。初っ端からツカミを外してしまったな。


「じゃあ料理だ。あんまりナマモノを食べることってできないだろ?」

「近くに川があるから、そこで冷やしておけば大丈夫だよ? ほらサラダ作ってくれたじゃない」


 あっ確かに。


「でっでもその川まで行くのが面倒だとは思わないか? 俺の住んでた世界では冷蔵庫っていう、食べ物を冷やすための機械があるんだ。そこに入れておけばいつでも新鮮な野菜が、保存できるってわけだ」

「別に野菜なんてそんなに食べないし、そこまで興味ないなー」


 ドーコ相手に野菜で勝負してどうする。ここは攻め手を変えてっと。


「じゃあこれはどうだ。俺の世界ではエールに似た飲み物で、ビールってのがあるんだが、それをキンキンに冷やして飲むと、美味いのなんのって! きっとエールも冷やすと、美味いんだろうなー」


 さっきの興味なさげな態度はどこに行ったのか、ドーコが身を乗り出して、俺の太ももに手を乗せる。


「ねっねぇそのレイゾーコ? っていうのはどうやって作るの? ドワルフは作れる?」

「待て待て。期待を誘っておいて悪いんだが、そもそも冷蔵庫を動かすには、電気が必要で……もしかしたら俺の世界とは違うが、作れるかもしれない」


 この世界には電気はないが魔法がある。俺がもし氷魔法を覚えることが出来れば、擬似冷蔵庫を作れるかもしれない。それに家電から発想を得て、物を作るのは案外上手くいくかも。


 考えているとドーコが俺の服を掴んでブンブン揺らしてくる。


「どうすれば作れるの!? 今からできる?」


 早く欲しい気持ちはわかるが、揺らさないでくれ。


「流石に今からは無理だ。憶測だが俺が氷魔法を覚えれたら、可能性はあるかもしれない。氷魔法だからサファイアに魔法を封じ込めてマジックアイテムを作ればいけるんじゃないか?」

「エール専用マジックアイテムかぁ。この世界で1番凄いマジックアイテムになるかも!」


 どれだけエールを愛してるんだ。


「俺はまだ氷魔法を使えないから、魔法の盛んな場所……エルフの里にでも行って教えてもらわないとな」

「早くエルフの里に行かなきゃ! ほら準備するよ!!」


 ドーコが立ち上がり、旅支度をするつもりなのか棚を漁り始めた。


「気が動転しすぎだろ! 明日は商人が来るんだろ!? まだ出発しないぞ!?」

「うぅ早くその冷えたエール飲み放題のレイゾーコが欲しいよ……。ガッカリしたから代わりに別の話をしてよ」


 ドーコが再び席に戻る。何回立ち上がるつもりなんだ。


「他に俺の世界の話か。多くのものは手作りじゃなくて、機械っていう自動で動く自動で動く……マジックアイテムみたいな物で作られるんだ。だからこの世界より物で溢れてる」

「へぇー物が溢れるのはいいけど、愛がない世界なんだね」


 こっちで一から手作りしてると、そんな気もするな。


「なぁ今度はこっちの世界について聞かせてくれよ。俺そういえば配信の事しか聞いてなかったや」


 気付けばあんなにあった料理が、もう半分になっていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 会話文の間は1行開けないで大丈夫です。 要は15話の文で行くと 「早くエルフの里に行かなきゃ! ほら準備するよ!!」 「気が動転しすぎだろ! まぁ気長に待ってくれ」 「うぅ早くそ…
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