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14話 異世界ブラック労働

 体がゆらゆらしている。昨日は、腹を殴られてひどい目にあったし。どうやって、ベッドまでたどり着いたのかすらはっきりしない。もう少し寝かせてくれ。


「起きてー! 今日はキビキビ働くよー」


 ドーコの声が聞こえる。


「はいよ。今起きるってば」


 目を擦りながら起き上がる。昨日の様なフラフラとした感じはない。精神力もある程度は、回復しているらしい。エマは2、3日はかかるといっていたし、もしかしたらまだ全開ではないのかも。


 ドーコが俺の顔を覗き込んでくる。


「精神力は大丈夫そう?」

「残念な事に、鍛冶仕事が出来るくらいには回復したぞ」


 ズゴッとドーコのボディーブローが、まだ起きたばかりの腹に突き刺さる。


「何が残念なんだよ! じゃあほら早く朝ご飯を食べて作業するよ!」


 精神力が回復しても腹筋は持たなくなりそうだ。


「「いただきます」」


 いつになったら、優雅な朝を迎えることが出来るんだろうかと考えながら、朝ご飯を食べる。マジックアイテム作りに協力はしたが、まだ俺はドーコからの恩を返しきれてない。今日は頑張らないとな。




★   ★   ★




 鍛冶場についたので早速、俺は配信許可を取る。


「配信つけるぞー」

「うーん」


 今日の配信タイトルは何にしようかな?『鍛冶師の本気』でいっか。配信タイトルも決めたし、タイトルに負けないよう、さっさと作業に取り掛かろう。


「なぁドーコ。印を刻んでいいって言われたけど、ルールとかあるのか?」


 この世界は割とタブーが多い気がする。印を刻む許可はもらったはいいがまたとんでもない印を刻んで販売不能になったら困る。


「機能性さえ落とさなければ特には決まりはないよ。ほらそこの剣だって、刃の部分には付けてないけど、持ち手の下にあるでしょ」


 ふむふむ確かに、ドーコの剣には綺麗な印が刻んである。でもこれだと、誰かが模造品を作ることができるんじゃないか?


「これって毎回手で刻んでるのか?」

「そんなわけないよ! そんなことしたら、誰でも贋作が作れちゃうじゃない」


 流石に対応策はあるって事か。


「じゃあどうやって印を刻んでるんだ?」

「師匠から許可をもらった時に、ヒューマンに頼んで魔法印を作って貰って……それで贋作を作れない様に……」


 話しながら、どんどん歯切れが悪くなっていくドーコ。魔法印ね……これはひょっとして……。


「ほーう、じゃあドーコ師匠。その魔法印とやらを私にも頂けるんでしょうね?」


「……ごめん」

「怒ってない。ヒューマンの国に行った時の楽しみが増えたくらいだ」

「なんか最近意地悪になってない!?」


 俺より腹黒い奴が側にいるからだって、言おうとしたが、ボディーブローが怖いのでやめておく。


「俺の作品は印なしだが、それでも売り上げは間に合うのか? できる限り早く作るが」

「そうしてもらうと助かるよ。ごめんね」


 贋作問題が解決したし、一安心ってところか。だが、より早く装備を作る必要があるな。ここは一つ【ドワーフの神】に祈ることにするか。


 ドーコが使わずにいる金属や素材を、俺が使うことにする。これなら扱えない素材も無駄にならない。特にドーコは、魔物の素材を使った物が苦手な様だ。


 だったら買わなきゃいいのにと思ったが、マジックアイテムで使えるかも、と思ったからなんだろう。


 炉の温度を調節している間に、魔物の皮を処理したり、並列作業で忙しい。


 時折り水を飲んでいるが、飲んだ端から出て行ってる気がする。それでも、売り物になる品質が俺にはわからない以上、全力を出すしかない。


 ドーコの方をチラッと見たが、一生懸命にハンマーを振り下ろしていた。




★   ★   ★




 一所懸命に作っていたせいか、俺は時間を忘れてしまっていたようだ。普段より遅めの昼ご飯になってしまった。


「「いただきます」」


「凄いねドワルフ。その調子だと、ここにある素材を全部使っちゃうんじゃない?」

「だって印が刻めないんだから、そんなに売れないだろ?」


 ドーコが申し訳なさそうに、頭をポリポリとかいている。何で今そんなアクションになるんだ?


「そのー言いづらいんだけど、ドワーフの村(ドヴァルグ)は練習品しか普通売らないって、言ったことがあるよね?」

「だから俺は頑張って作ったんだぞ」


 練習品なんて、そんなに売れるとは思えないしな。


ドワーフの村(ドヴァルグ)を見てどうだった? 貧しそうだった?」

「少ししか見れなかったが、物乞いも居なかったしそんな風には見えなかったな。もしかして……」

「確かに印が付いてる物の方が、価値が高いのは本当だよ。でも印がなくてもドワーフが作った物は、結構売れるんだよ」


 ……。


 俺はあまりのショックに立ち上がる。


「ってことはあれか? 俺は無駄に汗水流してたってわけか!?」


「いやいやそういうわけじゃないよ! お金はいくらあったって困らないしね! だっだから! そんなに怒らないでよぉ」


 よくよく考えれば、推測できる事だった。なのに気付かなかった自分に、苛立っているのだ。俺は改めて椅子に座り直す。


「じゃあ午後からは趣味で、物を作っていってもいいか? 装飾の凝ったものを、俺も作って見たいんだよ。俺が彫ったのは、ドーコの懐中時計だけだったからな。今度は鎧で作って見たいんだ」

「ドワルフが作った装備と、私がこれから作る分で足りそうだし、大丈夫だよ」


 よし! ドーコから許可も得たし、趣味の世界に没頭するか! その前に配信タイトルを『装飾入り鎧製作』に変えてっと。


 今回の装飾は魔法を関係なしに作ろう。オークションなんかに出される様な、美術的な一品を作ってやる。


 幸か不幸かさっきの追い込み作業で、さらにレベルが上がった気がする。ドーコとか、配信者をジョブ設定してない人は、どうやって自分のレベルを確認するんだろうか。


 今夜にでも聞いてみよう。思考を巡らしながら、コツコツと装飾入りの鎧製作を進めていく。


 今日はコメントが来てないが、誰か見てたりしないのかな。マイページっと。


--------------------------------------------------


名前 ドワルフ

レベル  24

視聴者数 1

フォロワー 3


メインジョブ 配信者

サブジョブ なし


スキル なし


ユニークスキル 【エルフの知恵】 【ドワーフの神】 【ヒューマンの良心】


--------------------------------------------------


 レベルは順調に上がっているが、どうにも視聴者とフォロワーが増えないな。ドワーフの村(ドヴァルグ)で視聴者獲得は望めないだろうし、早くヒューマンの国に行きたいな。


 俺は配信者として、スローライフを謳歌したいからな! フォロワー獲得は命の次に大切だ。


 キリの良いところまで作業が進んだので一息つくと、気づけば辺りが暗くなっていた。


 珍しくドーコが疲れた様子でやってくる。


「ふーっ! 今日は流石に疲れたねドワルフ」

「そうだな。誰かさんの言い忘れでな。」

「ぐっ……」


 ドーコも悪いと思っているのか、俺の嫌味に対して、拳は作らなかった。


「だけどドーコ、何でそんなに疲れるまで作ったんだ? さっきの話からして、もうそんなに商品を作る必要はないんじゃないか?」


「んんーっとほら? お金はいくらあっても足りないしね!」


 絶対何かはぐらかされたな。ドーコが何かを隠そうとぎこちない顔をする。


「それにしてもすっごい凝ったの作ったねー。ひょっとして、この装飾全部に魔法的な意味があって、物凄いマジックアイテムが!」


「今回のはそう言うのじゃない」

「なーんだ。つまんないの」

「ドーコはヒューマンの国に行ったことがあったよな?」

「うん。手伝ってくれそうなエルフを探しに何度か行ったことあるよ」


 ここから何度も行けるところに国なんて無さそうだが、何というドーコの行動力……!


「その時に偉そうな人が、こんな鎧を着てなかったか?」

「確かにそう言われればって、もしかして……?」

「あぁそのまさかだ。この鎧は、そのお偉さん向けに作ったんだ。実際にそいつらが着てるものを見たことはないが、これなら十分いけるだろ?」


 んーっと、眉間に皺を寄せて渋い顔になるドーコ。


「多分売れないと思うよ」

「どっどうして!? こんなに丹精込めたってのにか? ここの腕の部分とか見てくれよ!」


 ドーコに、上手く行った所を見せる。


「いやそう言うことじゃなくて! ここに来る商人じゃ貴重品すぎて、扱えないと思うよ。それこそ、商人ギルドマスター直々に見せでもしないと」


 自信作だったがそこまでだったとは。逆に出来が良すぎて扱えないのか。じゃあこの鎧を持って、ヒューマンの国に行くことに……。荷物が増えてしまったな。


「明日は商人が来るし、今日は家にあるもの全部使って豪華な宴会にしよう! エールも飲み干すよー!」

「はいよ。でも俺の方はまだ完成してないから、酔い潰れない程度にセーブするからな」

「大丈夫大丈夫! ドワルフが酔い潰れることなんて考えられないよ。それより料理するの手伝ってね! 今日のテーマ通り豪華にいきたいんだから!」


「あーなんて楽しい宴会ライフだ……」

「なんか今、違う意味に聞こえたんだけどー!」

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