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13話 これからについて

 振り下ろしたと同時に斬撃が円を描き、竜巻となり辺り一面の木を切り倒してしまう。

轟音と共に崩れていく木々……すまない。本当にすまない俺にはやっぱり救えなかった。


 ドーコは案の定想像外だったらしく、その場でペタンと腰を抜かしている。


「今度から木で試すのは、とりあえずやめようかドーコ」


 ブンブンと激しく頭を上下させるドーコ。


〔エマ:これはもう伝説級のマジックアイテムね……まさかこんな所でお目にかかるとはね。私ちょっと衝撃で頭がクラクラするから、今日は落ちるわね。〕

「ありがとう。俺も今日は色々と疲れたから明日は配信ないかもな。来てくれてありがとう」


 得たものもあったが、多くの犠牲を払った一日だった……やけに短く感じた一日だったのは昼まで寝ていたせいではないはずだ。

 俺たちは多くのものを失った。ていうか森ごめんなさいメチャメチャ切っちゃって……。

 ドーコも放心してるし、俺は腰が立たないし、流石に宴会もないだろう。精神力が回復するかも知れないから少しだけエールを飲んで寝よう……。


 何やら凄いものができたのはわかったが、精神力を持っていかれ過ぎるのが、問題だな。精神力を増やすトレーニングなんてのは無いんだろうか。筋トレみたいに使いまくればいいのか?


「ドーコ。とりあえず今日は、家で早めに休もうか。流石に今日くらい、早めに作業を終えても罰は当たらないだろ」

「そっそうだね。これだけ凄い魔法を使ったんだもん。引っ張ってきてごめんね」


 今更、反省しているらしい。俺もまさかこんなに疲れるとは思わなかったし、俺の自己管理不足なのだが。


「ドーコが謝ることはないぞ。俺も全力を出したら、どんな威力か見たかったしな」


 そういえば今日のマイページ確認を忘れていた。


--------------------------------------------------


名前 ドワルフ

レベル  20

視聴者数 1

フォロワー 3


メインジョブ 配信者

サブジョブ なし


スキル なし


ユニークスキル 【エルフの知恵】 【ドワーフの神】 【ヒューマンの良心】


--------------------------------------------------


 おぉレベルがかなり上がったな! 宝石魔法は相当な技術を要するものらしいな。作業難易度に応じてレベルが上がることは確定だな。


 それにしても視聴者数とフォロワーが全然増えないな。最近ドバンが見てない気がする。ドワーフには配信を見る習慣がないらしいし、仕方がないのかも知れない。


 【エルフの知恵】は相変わらずそのままだな。【ドワーフの神】には多くの鉱石を扱ったら進化したが、扱える魔法の種類が重要なのか? 俺の気付いていない条件があるんだろうか?


 エマに聞きたいことは聞いた。配信を切り、ドーコと一緒に家に帰ろう。




★   ★   ★




 ずっと晩御飯は、ドーコに任せっきりだったな。


「すまんなドーコ。毎回、晩御飯を任せてしまって」

「いいっていいって! それに1人でずっと食べてたから、ドワルフが来てから毎日宴会で、むしろ嬉しいくらいだよ!」


 考えてみればドーコもドワーフの村(ドヴァルグ)から追放されて、ずっと1人だったのだ。俺は追放こそされたが、すぐにドーコと出会えた。


 そう思うとより一層ドーコを愛おしく感じた。精神力切れで、フラフラとした足取りだが、ゆっくりとドーコに近づく。そして後ろからそっと抱きしめる。


「ちょちょっとどうしたのドワルフ? 危ないよ?」

「考えてたらドーコの事が愛おしくなってな。ドーコ。ドーコの夢は間違ってなかったし、夢を叶えた。俺は追放されても研究を続けたドーコに、敬意を表する」


 普段なら口にしないようなことまで言っているのは、きっとフラフラで頭も回っていないせいだろう。


「あれ……おかしいね……私今玉ねぎなんて切ってないのに、涙が止まらないよ」


 ――しばらくの間、ドーコは泣いた。


 ひとしきり泣いた後ドーコは涙を拭う。


「でっでもまだ私のマジックアイテム作りは完成してないんだからね!」

「え? そうなのか? だってあんな凄い竜巻が出来たじゃないか」


 あんなに木がイケニエになったというのにまだ無実の木が殺戮されるというのか!


「確かに風属性のマジックアイテムは出来たけど、他の属性がまだまだだもん! ちゃんとドワルフと一緒にエルフの里に行って、もっと沢山の魔法を覚えてもらわなきゃね!」


 一緒に、と言うところに固い絆を感じる。


「なんともまぁ長い計画だな。その前にヒューマンの国で、冒険者を雇うために一仕事しなきゃならないことを、忘れてないだろうな!」

「あーそうだった。うーん、いち早くエルフの里に行きたいのに! あっあといつまでくっついてるの? まぁ私は構わないんだけど料理が作れないよ」


 何故か良い香りと声が近いなと思っていたらずっと後ろから抱きついたままだった。俺はフラフラの足取りながら、急いでドーコから離れる。


「悪い悪い!余りにも心地よかったんでついな」

「もう……料理が終わった後ならまた抱きしめてもいいから」


 ……食卓の椅子に座って料理が終わるのを待っていたら、だんだんと冷静になってきた。なんだかとんでもないことをしていないか俺。夕食ができたようでドーコが運んでくる。気まずいので話題を変える。意気地なしなんて言うなよ。なんせ精神力切れでフラフラだしな。今日は無理だ。


「「かんぱーい」」


 チラッと食材が置いてある方を見る。


「もう食料の在庫が少ないようだが、もしかして俺が来たせいで食糧難に陥ったりしてないか?」


「確かに普段より減るのは早いけど、問題ないよ。明後日には、ヒューマンの商人が来るからね。私の装備はドワーフの村(ドヴァルグ)の練習品と違って、印付きの一級品だから、結構な人気があるんだよ」


 自信満々に言うドーコ。


「そういえば、ドーコは師匠に認められて、印を持ってるんだったよな。師匠って一体誰なんだ?」


 急に口ごもるドーコ。何か言いづらいことを聞いてしまったか。


「……師匠はパパ。でっでも贔屓とかじゃなくて、ちゃんとみんなにも認めてもらったんだからね! 髭が長くなる年齢より前から、印をつける事が認められた、神童って呼ばれてたんだから!」


 神童でも髭がないってだけで追い出されるのか。本当は怖かった髭社会。装飾を学ぶのが、異常に早かったのは単に【ドワーフの神】の力だけじゃないな。ドーコ自身の才能もあるのか。


「それでパパって誰なんだ?」


 気になったので掘り下げてみる。


「まっまぁその話はいいんだよ! それよりドワルフにも、印をつける許可を与えるよ。本当ならもっと前に言うべきだったんだけど、あんまりにも色々ありすぎちゃって……。忘れちゃってたよ」


 パパについては今度、機会を見て聞くしかなさそうだ


「そんな簡単に許可なんて、していいものなのか?」

「いいんじゃないかな? もし、いちゃもんをつけてくるドワーフがいても、ドワルフの技術を見たら何も言えなくなるよ」


 そんなに俺の技術って高いのか。まだこっちに来て3日目だから感覚が一切わからない。あとチート感が地味だ。


「なら、ありがたくこれからは印をつけていくよ」


 印って装飾みたいに刻むんだろうか? ドーコがそんなことしてるの、見たことないからなー。


「明後日にはヒューマンの商人が来るなんて、随分と都合が良いもんだな。どうやって連絡したんだ?」

「ドワルフもよくやってる方法じゃん。配信で連絡するんだよ! 商人ギルドでは、よくサブジョブに配信を入れて、連絡がしやすいようにしている人がいるんだ」

「あー通信として使う手もあるのか。やっぱり配信は最高だな!」


 配信バンザイ配信サイコー! 俺も早くフォロワーを増やしたいな。


「商人が来るのは明後日か……ん? うちに売れるような商品なんてあったか?」


「……だから明後日なんだよ」


 嫌な予感がする。今すぐ逃げ出したいがフラフラで出来そうにない。ここはドーコを信用して確認してみよう。


「もしかしてだが、明日の予定は、朝から商人が来るまで鍛冶仕事だったりしないよな? 俺は精神力切れでフラフラなんだぞ! わかってるよな! な!」


「鍛冶仕事に精神力は関係ないでしょ! ドワルフのことだし、どうせ1日で回復するよ」


「だとしても、マジックアイテム作りは良いのかよ!」


 ドーコがマジックアイテムという響きに少したじろぐが持ち直す。


「うっ確かにそうだけど、それで餓死しちゃったら身も蓋もないでしょ!」


 頭脳労働と肉体労働が交互に来やがる。俺に休みはないのか……。


「ほら! エール飲んで早く寝るよ!」


 よーしこうなったら、ちょっと意地悪をしてやろう。


「今日は一緒のベッドじゃなくていいのか?」


 ドゴッと腰の入ったボディーブローが俺の無防備な横っ腹を抉る。椅子に座ったままのショートレンジでこんな威力が出るものなのか。ぐふっ。


「バッバカ!! 部屋まで肩貸してあげないからね!」


 椅子から立ち上がるとドーコは自分の分の食器をしまい始める。これは本当に放置される奴では。


「悪かったってだから待ってくれ……今のボディーブローで完全に……」


 ドーコは聞き耳持たず自分のベッドに向かっていった。台所でいい雰囲気だったからって調子に乗るべきじゃなかった……。

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