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12話 作ったマジックアイテムは規格外だった

 ――流石に昨日は飲み過ぎたのか、体が重い。いや違う何かが纏わり付いている。いい香りがする……花の香りだ……この香りは知っている……確か……ドーコに膝まく……


 目を開けると目の前にドーコがいた。


「ドドドドドーコ!?!?」

「ふぁーーなんなの? 騒々しいなぁ、私、昨日飲み過ぎて疲れてるんだけど」

「そっそうじゃなくて近い!じゃなくて同じベッド!?」


 俺の言いたいことを察したのか、ドーコの顔が真っ赤に染まっていく。


「ちょ、ち、ちょ、ちが、違うよ!! 昨日宴会の後ドワルフそのまま寝ちゃったでしょ! 私、頑張ってこのベッドまで運んだんだよ、でも私も酔っ払ってて眠かったから、そのまま……その……ドワルフの想像してることなんてまだしてないから!!!」


「あ、そうなのか……面倒かけたな……ん? まだって事はその予定があるのか!?」


 想像して俺も顔を赤らめる。


「何顔を赤くしてるんだよ! もっもう! とにかくそんなことはしてないから! さぁ今日も作業だよ。ぐっすり寝ちゃったせいでもうお昼だよ!」


 そう言って懐中時計を俺に見せつけてくる。


 初めての経験が酔った状態で覚えてない。と言う最悪は避けられたしよかったのか? それとも酔った勢いで済ませた方が楽だったのか。そんなことを考えながらドーコと一緒に昼ご飯を作る。


 初めて一緒に厨房に立つな。


「保存が効く塩漬けのものばかりだな。何か他に野菜とかないのか?」


「エールに合わないからねー」


 どこまでも基準がエールなのか…… 食事のための食材じゃなくて、エールのためのつまみか。





★   ★   ★




 簡単に食事を済ませ、昨日の実験の続きを始める。精神力はが回復した様に感じる。怠さがほとんどない。エールが本当に効いたのかは知らないが。



「ドーコ、エマが来るかも知れないし、配信つけるぞー」

「うん、私もエマさんに聞きたいことがあるし、昨日はドワルフばっかり話しててズルかったし!」

「別にズルくはないだ……」


言いかけたが、ドーコは既に小さなノミで装飾の練習を始めてしまった。熱心だな。装飾に前向きになったことは良いことだ。


 邪魔するのも何なので黙って配信をつける。


〔エマ:遅かったじゃないの。昨日と同じ時間くらいに始まると思って待ってたのに!〕


 異世界初めての待機勢だ。嬉しくて少し泣きそう。


〔ドワルフ:すまんすまん。昨日は色々あってな〕

〔エマ:なんで少し涙声なのよ。悪かったわよ言いすぎたわ。昨日の今日だから疲れて寝込んでたんでしょう〕

〔ドワルフ:いや涙声なのはエマのせいじゃないんだ。精神力なら多分回復したぞ、ほら〕


 無色の宝石に魔法を込める。


〔エマ:嘘でしょ? あーわかったわ、青ポーションを飲んだのね。随分と準備がいいのね〕

〔ドワルフ:いやー飲んだものといえば、エールくらいだな。あいにく青ポーションはなくてな……無理やりエールで回復した〕

〔エマ:エールで精神力が回復するなんて、そんな馬鹿げた話あるわけないでしょ!! それにしてもそんな短時間であれほどの精神力を回復するなんて……〕


 何やらまた考え込んでしまったのか、コメントが止まった。昨日の装飾について聞きたがったが、仕方ない。エマはとりあえず放っておいて、本命のエメラルドに魔法を込める。


 昨日の斬撃ではなくもっと風を意識して、より強力に、より絶大に。そう考えながら魔法を封じ込めた時昨日とは比べ物にならない疲れがきた。


「大丈夫!? なんか凄い顔色が悪いよ?」


 ドーコが駆け寄ってくる。余程俺の顔色が悪いんだろう。


「大丈夫じゃ無いかも。なぁエマ、力がドッと抜けて頭がガンガンするんだが、これが精神力切れか?」

〔エマ:ほらやっぱりまだ全快してたわけじゃ無いのよ! いくら【エルフの知恵】持ちだからって、そんなことがあっていいわけがないわ!〕


「で、これが精神力切れってやつなのか?」


 今度のは正直堪えたので二度聞きする。


〔エマ:そうね。出来るだけ座るか、横になっておきなさい。あと青ポーションもないことだし、念のため2、3日は魔法を使うのを控えておくのよ〕


 精神力を回復させるのにそんな時間がかかるのか。今日の体調は万全だったはずなんだがなぁ。


「そうだ、ドーコあの事を聞いたらどうだ」


「あっそうだね! エマさんエマさん! これを見て!」


〔エマ:ふーん。凝った装飾がついてるわね? ドワーフにも美的センスってものを持った人がいたなんてね〕


 ドーコが美的センスという言葉に少し苛立ってる。


「そうじゃなくて! 装飾をつけると能力が上がったりするの?」


〔エマ:いやそんなことは聞いたこともないけど、そもそも宝石魔法は、そんなふうに大斧にはめ込んで使うものじゃないわよ、お嬢ちゃん〕


 あっ……いってはいけない事を……やはりドーコは爆発した。


「ムカー! ドワルフ外に行くよ! ほらしっかり立って!」


「俺は精神力が切れてフラフラなんだが」


「ドワルフが来ないとこのエルフに見せつけられないでしょ!」


 引っ張らないでくれー




★   ★   ★




 引きずられて木の処刑場まで来た。碌に足腰の立たない俺は雑に木の根に座らされたまま放置された。ドーコはまだ怒ってるなこれ。


〔エマ:あーそう言うことね。ドワルフに魔法を通させて使うってことかしら? 確かに試したことはないけど、その方がイメージしやすくなって、使いやすいかもね。でも筋力の少ないエルフじゃ、そんな大斧は使えないから残念ね〕


 そういえばエマにはこの大斧の効果を見せてなかったな。


「おいおい俺は精神力が切れてるんだぞ。使うのはもちろんドーコだ」


 そして罪のない木が犠牲になる。すまない。折角助けてもらったのに俺にはお前たち木を助けることはできないな……。優しい木漏れ日をくれる背中を預けた木に済まなくなり空を見上げる


「えっへん!」


 無い胸を張って偉そうなドーコ……


〔エマ:何がしたいのかさっぱり分からないわ。まぁ気が済むまでしなさいな〕


「見よ! これぞ現代に蘇ったマジックアイテムの力だー!」


 ザザザシュッ


 あぁまた罪のない木がイケニエになっていく。


〔エマ:どどっどういうこと? あなた髭が生えてないしあなたもエルフとのハーフなの!?〕


  エマ、ドーコの髭について触れてはいけないんだよ……。


「髭は生えてないけど、純血のドワーフだよ!!」


 ドーコ! その握った拳をどこに向けるつもりだ!


〔エマ:それならどうやって斬撃を飛ばしてるのよ。魔法を宝石に封じ込めて、発動時に少ない魔力で最大の効果を得るのが宝石魔法なのよ。トリガーとして魔力が必要なのに〕

「まーそう言われてもだな。出来たもんはできたんだよ、マジックアイテムってやつがな」


〔エマ:だとしてもありえないわ。その大きさの宝石だったらそこまでの斬撃、風魔法を出すことは不可能よ〕

「そこでさっきの質問に戻る。この大斧な。装飾を付ける前は、ここまで大きな威力は出なかったんだ。」


〔エマ:装飾で威力が変わるなんて事例は聞いたことがないけど、もしかしたら、その装飾がルーン文字の代わりになって効果が倍増したのかも……それにしたって〕


 またコメントが止まり、エマが考え込んでいる。エルフっていうのはよく考える生き物なんだなぁ。長寿だけに長考するわけだ、長寿だけに……ダメだ疲れてるな俺。


「そうだドーコ。俺が今日作ったこのエメラルドで試してみないか?」


「うん! それもそうだね!」


 ドーコは宝石を付け替える。無色の宝石であの効果だったんだ。エメラルドだったら、どんな効果になるんだろうか。あ、マズい……なんかこの流れ……。かくしてドーコが、大斧振り上げ切る構えに入っている。



「いやちょっと待てドーコ、もしかすると大変なことに」

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