もし、少年が幸運を望んだら。
僕は、ある日とあるアニメのとある登場人物を見て目覚めた。
やべぇ……ダークヒーロー超かっけぇ……と。
あの日から、僕の人生は大きく変わった。
ダークヒーローを求め、ダークヒーローになりたいと願うばかりに、僕は死んでしまった。
僕は……ダークヒーローに憧れ永遠の厨二病と罵られてきた人生の中で、数少ない友人を落石から救う為に、我が身を犠牲にして死んだ。
まあ、後悔は無いのかと聞かれたら、あるに決まっているだろうと返せる自信はある。
だが、そんな自分の行動は決して間違っていないと胸を張って言える自信もある。
何故かって?そりゃあ、友人を救う虐められっ子って、ダークヒーローっぽいと思わんかね?
そりゃあ、数あるアニメの中のダークヒーローに比べればしょぼい死に方だろうよ…@だけどさ、現代社会、それも学生の身分で友人を死の危険から助けるって……充分偉業だよな。
まあ、そんなこんなで、俺は死んでしまった訳だが………。
はぁ……まさか落石が神様の所為とかテンプレよろしくな展開だとは思わなかったよ。
「いやホント許してください。」
僕は目の前で土下座している人型の黒い塊にため息をつかざるを得ない。
「いやだってさ?まさか落石に向かって突っ込んでくる若者が居るなんて思わなかったから……。」
いや目の前でMy only best friendが落石で死にそうだったら助けるでしょう。
「え?あの落石で本来の死人はゼロの筈なんだけどなぁ…。」
は?あの落石コースだったら我が唯一の親友は即死直行コースまっしぐらだったと思うけど…。
「ああ、アレは本来なら彼の足元に石ころが設置してあって、運良く彼が転ぶようになってたんだ。」
………………………は?
「まあ、結局予想が外れて君の様な犠牲者がでちゃった訳だけどネ♡」
ねぇ、殴っていいよね?よし、ちょっくらフルパワー出しますかぁ。
「いやホント悪かったって、ほら!!せっかくの転生なんだし、何でも一つ好きなチート上げるからさ?ね?それで許してちょ?」
……チッ、命拾いしたな黒ずくめ……今度僕の癪に触るような発言したら問答無用で僕の右手がアンタの左頬に突き刺さる事になるからな。
「わかったわかった……で、チート能力はどうする?」
ああ、それなら、運をよくしてくれ。
「…………へ?」
だーかーらー、運を良くしてくれ。
「え?いや、もっと他にあるじゃん?無限の魔力とかさ、聖剣とか魔剣とか……。」
いやそんなの要らんて、つまんないじゃん、せっかく転生するのにそんな戦闘だけに特化したモノ貰っても戦闘にしか活かせないじゃん?ならさ、もっと単純に自分が一生得をするようなモノを貰った方がいいと思うんだよね。
「へー、また個性的な意見だねぇ。」
まあ、ダークヒーロー的には闇の力とか魔剣とかは確かに少し欲しいとか思うよ?だけどさ、そんな外面だけの力に頼るような二流にはなりたくないんだよね。
「へぇ、じゃあキミの転生特典は運の上昇って事でいいんだね?」
はい、何分これまでの人生は不幸が多かったですから、幸運なら人生を送りたいと思うぐらいでバチはあたりませんよね?
「さあ?それはボクちんの気分次第だよ……まあ、生まれ変わったキミの人生の幸せを願うぐらいはしてあげるよ。」
……ありがとうございます……黒ずくめの神様…。
「………ホントに……変わんねぇな……アイツは……お前の人生は俺がちゃんと見守ってやるよ……あの時奪ってしまったお前の人生を…………親友として………ちゃんと……。」