ありえない
そもそもおかしい
なぜ、こいつが死んでいるんだ。
ありえない。
でも死んでいる。
落ち着こうまず死んだ原因を見つけよう。
刺されたとかなら体を見れば分かるはずだ。
死体を触るのは気が引けたが、そんな感情よりこいつへの憎しみの方が格段に上だった。
服を脱がす。
「え、」
絶句する。
明らかにこれはおかしい。
「なんだよ これ…」
左のわき腹を中心にポッカリと大きく穴が空いていた。
「心臓もなくなってる……こんなこと誰が…」
「おや、覚えてないのかい?」
「 ! 」
声が聞こえたと思うといきなりあたりが明るくなる
「だ、誰だ!」
暗闇に慣れていたせいでなかなか目が見えない。
「失礼驚かすつもりは無かったんだ」
女の声だ
何故こんなところに女が
「私は坂下、この病院の医者だ」
坂下と名乗る女は、そう言うとカツカツとハイヒールの音を立ててこちらに歩き出す。
「く、来るな!」
「おっと、すまないすまない」
「驚くのも無理もない。こんな状況だからね。強盗に襲われたと思ったらいつの間にか死体安置所にいた……うん、実に奇怪だ」
「でも、安心して、私は君に危害を加えるつもりはないよ」
「私はただ君と取引きをしに来たんだ」
坂下は僕を試すようにそう言った
「取引き?」
何を言っているんだこいつは。
「うん、取引き。まあ、立ち話もなんだし、とりあえずここから出ようか」
そう言うと「おいで」と言いながら部屋からでる。
ついて行こうか迷ったが、ここにいても意味がないのでしかたなくついて行くことにした。
「あ、それと、物には触ったりしないでね」
「? なんでだ」
「んー……そうだね まあ、安全の為、かな」