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恐怖の広島焼き研修
広島の人間は、広島風のお好み焼きを広島焼きというと、キレる。広島風と付けただけでもキレる。しかし、それでは観光客相手にコレについて話すこともままならない。ホテルのフロント役を任される従業員は研修期間中、薄暗い部屋の中、パイプ椅子にくくりつけられ、とある恐怖のビデオを見せられる。老若男女、白人黒人黄色人、ありとあらゆる人間が、入れ替わり立ち替わり「広島焼き」について質問するビデオである。「広島焼きって、何処で売ってますか?」「美味しい広島焼きのお店は何処ですか?」「広島焼きとは何ですか?」「広島風と関西風の違いって何ですか?」このビデオを見せられた従業員は、初めは、怒り狂い藻掻き抗う。「広島焼きと言うな!」「お好み焼きだ!広島風と言うな!向こうだ!向こうが!関西風なんだ!!」三日三晩、この研修は続けられるという。この研修の生き残りは、皆、生気の失われた笑顔で呟く。「広島焼き…、広島焼きは、美味しいですよ。広島の、誇りでございます。」こうして彼彼女らは順応されていくのだ、広島焼きに。