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暫く歩くと大きな建造物が見えてきた。教会のようにも見えるその建物は、ケルン大聖堂さながらの尖頭アーチを描いており、何もない草原の上にそびえ立つ。


「あそこだ」


そう言ってその建物を指を差しながら、男たちは足を早める。


目の前まで来ると遠目で見た大きさとは異なり、外壁や柱にある多くの彫刻などが細々と目に入る。


男たちは大きな扉を押し開けて、正樹に中へ入るように促してきた。中を見ると左右にある支柱の並びが作り出す透視的な効果で、視線が奥の教壇へと吸い込まれる。壁にはめ込まれたステンドグラスは外の光を浴びて、室内に柔らかな光を照らす。


「良かった!間に合ったか!」


教壇の奥からまた別の男が現れた。


「司祭様、お連れいたしました」


「よくやった!これで今週中に用意しなくてはならない分は大丈夫だ。明日には中央から直属の部隊が回収しに来る。こいつらユウシャどもに準備でもさせておけ」


そう言うと司祭様と呼ばれていたその男は、一仕事終えたかのように巨体を揺らしながら外へと出て行った。


男たちは司祭が出るのを見送った後、再び正樹に話しかける。


「明日、お前らユウシャを回収しに都市部からお偉いさんたちが来る。悪いがこの地下にあるスペースで明日の回収日まで待っていてくれ」


「いや、どういうことだよ!そもそも何故俺はそのお偉いさんとやらに回収されなきゃいけないんだ!?だいたい、回収されたその後はどうなるんだよ!」


淡白な説明しかしない男たちに対し怒りをあらわにする正樹。それもそのはずである。正樹は未だにユウシャとは何かすらも知らされていないため、状況が全く飲み込めていないのだ。そんな彼をなだめるように男は言った。


「頼む、落ち着いてくれ。1晩で良いんだ、ただ大人しくしてくれさえすれば、俺たちは悪いようにはしないし、お前が聞きたい事はお国の人達が答えてくれる。」


正樹は困惑した。何故なら目の前の男たちの様子が明らかに困窮していたからである。今までにないほど真摯な目をした彼らの願いを前に、正樹は怯んだ。


(こいつらは俺の身の安全を保障してるし、聞きたい事だって俺を回収しに来る奴らが何でも答えてくれるって言うし… 別に言う事を聞いても俺が損する側に回ることはないんじゃ…)


そう思うと正樹は今は彼らの要求を呑む方が得策な気がしてきた。何も分からないまま勝手に動くのは愚策だし、なんせ彼らの要求を呑まないで万が一にでも争いになったら1人で4人を相手にする自信がなかったのだ。


「分かった… とりあえずそっちに従うよ」


その言葉を聞くと男たちはホッとしたのか笑みを浮かべ、地下へと正樹を案内する。この時、正樹はこの決断がどんなものかをまだ理解していなかった…



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