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逆転~相馬中村藩仇討ち秘話~  作者: 大平篤志
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仇討ちの始まり

 英治郎がもうひとりの武士を制し、雪駄を履いて土間に下りてきた。


 英治郎が信一郎の正面に立つ。


 三寸ほど背の高い英治郎が、信一郎を見下ろす形で無言の対峙が続いた。


 信一郎は、正面から英治郎の気迫を受け止めている。


 先に口を開いたのは、英治郎であった。


「ここでは迷惑がかかる。外に出よう」


 英治郎は、信一郎の返事も聞かず、表に出た。

 信一郎が無言で後に続く。


 英治郎は、そのままどこへ行くとも告げず歩き続ける。


 途中、信一郎は、一度だけ英治郎に声をかけた。


「父の最期の様子を聞かせてくれませんか」


 英治郎は応えない。

 そのままふたりは無言で歩き続け、やがて人通りのない、林の中の空き地にたどり着いた。


 英治郎が立ち止まり、向き直る。


「いつか来ると思っていたぞ。鷲巣信一郎」


 信一郎の正面に立った英治郎は、背中から炎が燃え立つ憤怒相の明王のようであった。


「父の仇、丸山英治郎、尋常に勝負せよ」


 信一郎は努めて静かに、菩薩のように言葉を発した。


「俺に勝てると思うのか」


 英治郎が刀を抜き放ち、少し遅れて信一郎も抜き合わせた。


「返り討ちにしてくれる」



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