初めての女
未経験の信一郎でも、判助が連れてきたこのけばけばしい場所がどういう場所かはわかった。
「いや、わたくしはこういったところは……」
「こういったところも、また乙なものでござるよ」
そう言うと判助は自分の敵娼を連れて、さっさと部屋に入ってしまった。
信一郎は自分にあてがわれた部屋に、ひとり残された。
間もなく、やせた中年の浅黒い女が部屋に入ってきた。
「す、すみません、拙者はだめでござる。武士として、こ、このような真似はできませぬ」
緊張と酔いでよく呂律の回らない信一郎は、掌を前に出して女を制そうとした。
「お武家さんだからって、体面とか気にして野暮なことは言わないの。江戸ではそういうのは一番嫌われるよ」
――武士だからといって格好をつけるな。女の言葉は、信一郎の今宵の心中に、風呂上がりの肌を猫の爪で引っ掻かれたような痛みを与えた。
「判助さんに聞いたわ。初めてだから色々教えてあげてくれって。わたし、あなたみたいな立派なお侍さんの初めてだなんて、嬉しくてしょうがないんだから、恥をかかせないで」
そう言うと、女は行燈を吹き消して帯を解き始めた。
信一郎は、無言のままその姿を凝視する。
「いやだ、じっと見ないで。恥ずかしい」
信一郎の視線に気づき、女が乙女のように体をくねらせた。
「お布団に入って待っていて」
信一郎は、女の言うがままに布団に体を潜り込ませた。
裸になった女は布団の中に体を滑り込ませると、巧みに信一郎の服を剥ぎ取り、裸にした。
「立派な体ね」
女は信一郎の胸板に頬ずりすると、続いて唇を重ねてきた。
鼻孔に甘く、それでいて何か毒々しい紅と白粉のにおいが流れ込んでくる。
信一郎の肉体は自然に反応し、女はそれを感じて腰をくねらせた。
細く見えた女の体は、触れてみると意外にみっしりと肉がついており、肌は冷たくて、酒で火照った信一郎にとって心地よかった。
信一郎が女の背に手を回し、体の上下を入れ替える。
女は巧みに自分の腰の位置をずらして、信一郎を導きいれた。
柔らかな襞が絡み付き、尻の穴から背骨を通って脳天まで煩悩の塊が駆け上がっていく。
思わず信一郎は熟柿臭い息を吐いた。
女の小ぶりな胸に手を置く。
小さくてもそこは、たおやかでなまめかしい弾力を掌に伝えてくる。
信一郎は精を放つと、そのまま眠り込んでしまった。




