探索開始
翌日早朝、『木漏れ日荘』の二階の一室では、二人がすでに起きており、ギルドへ向かう準備をしていた。
「ポーションは持ったし、痺れ蜘蛛の糸も入れたっと。あとこれを入れて、よし準備完了。」
「やっと準備終わったか。」
「早いのはいいけど、忘れ物しないでよ。」
「わかってるって。少し早いけど、もう行こうぜ。早く探索したいしな。」
「そうだね、楽しみだなあ。」
二人が準備を終え、ギルドに入ると、金髪の女性ギルド職員ミリーさんとその横に緑髪の眼鏡をかけた女性が立っていた。
緑髪の女性はキリッとした表情で、アル達を見ており、アル達が二人に近づくと、ミリーが緑髪の女性シルフィを紹介した。
「アルさん、レイさん、おはようございます。時間通りですね。こちらは今日から何日間か指導して下さるシルフィさんです。」
「シルフィだ、よろしく頼む。」
「おはようございます、ミリーさん。それとシルフィさん。今日はよろしくお願いします。」
「シルフィさんは現役の冒険者で、パーティーメンバーが怪我をしてしまったため、急遽アル君達の指導をしてもらうことになりました。普段は引退した冒険者が多いんですけど。」
「現役か?それはラッキーだな。」
「そうか。私もそこまで暇じゃない。早速だが行こうか。ミリーまた来る。」
「行ってらっしゃいませ。」
シルフィはミリーに別れを告げると、アル達を引き連れてギルドを後にした。
ギルドを出ると、シルフィはアル達の方を向き、話し始めた。
「まず、探索するのに必要なアイテムからだな。アル、レイ、お前達は何を持ってきた?」
「えっと、主にポーションと痺れ蜘蛛の糸ですね。」
「あと、松明と水と食料くらいだな。」
「ちゃんと、糸を持ってるなんて偉いじゃないか。」
「アイテム屋の親父さんが教えてくれたんです。」
「なるほど。じゃあ、探索準備に関してはほとんど大丈夫そうだな。よし、迷宮に行こうか。」
迷宮の前に三人が立っている。
迷宮の入口の前には石碑が建っており、その石碑には名前が刻まれている。
「ここに名前が刻まれているだろ?これは中に入ってる冒険者が書かれているんだ。」
「どんな仕組みなんですか?」
「私にもよくわからん。ただこれのおかげで、勝手に迷宮に入れることができなくなっているし、ギルドによって冒険者が管理できている。」
「ふーん、その辺はよくわからないし、わかってることをいろいろ教えてくれよ。」
「わかった。まず、現在、迷宮の最高到達階数は69階だ。70階のボスが倒せてないみたいだ。ボスは五階層毎に存在するボス部屋に現れ、ボス部屋に先に進む階段がある。それと、ボスは倒しても一定時間経つと復活する。」
「ボスってやっぱり強いんですか?」
「そうだな、その階層までのモンスターにしては強いが、その先に進むなら倒せる力がないと厳しいな。だから、ボスを倒すことがその先に進む資格を言える。まあ、ボスに勝てそうになければ死物狂いで逃げることだな。迷宮探索は生きてこそだ。」
「そうですね、わかりました。」
「わかった。」
「よし、そろそろ入ってみようか。」
そう言って、シルフィは迷宮の中へと歩みを進めた。
それについて行くように二人も歩き始めた。
三人が迷宮の中に入って少し進むと、急に見える景色が変化し、アル達は驚いた。
迷宮に入ってすぐは坑道のような感じだったのだが、一階のエリアに入るとすぐに周り一面が森になった。
「ここは迷宮ですよね?」
「そうだ。まあ、初めてのことだから仕方がない。しかし、迷宮の不思議にいちいち驚いていてはこの先身が持たんぞ。」
「かもしれませんね。」
「ん?しっ、この木の隙間から向こうを見てみろ。」
「はい。」
「了解。」
二人が口々にそう言うと、木の隙間から様子を伺った。
すると、向こう側には緑色の肌をした体長80㎝くらいの小鬼が三体木の側で座っていた。
シルフィが少し思案して、二人に話しかけた。
「うーん、丁度いいか?よし、私があのゴブリンと呼ばれる緑色の小鬼を二体相手するから、お前達二人であの一体を相手してみろ。ステータス的には問題ないはずだから。ただ油断するなよ。下手をすると死ぬからな。」
「わかった。」
「わかりました。」
「よし、行くぞ。」
シルフィが号令をかけながらゴブリンに向かって走る。
そして、アル達もゴブリンに向かって駆け出した。