冒険者ギルド
『木登り亭』を出たアルとレイは冒険者ギルドに向かっていた。
街の中央に向かって少し歩いていると、遠くに冒険者ギルドの看板が見えてきた。
「あれがギルドみたいだね。」
「やっぱり人がいっぱいだな。」
「ちょうど昼過ぎだからかな?」
「そうかもな。まあ、早いとこ登録済ませちまおうぜ。」
レイがそう言った後、二人は少し早足で冒険者ギルドに入っていった。
二人がギルドに入って周りを見渡すと、ほとんどが屈強そうな男だったが、女性の冒険者もいた。
冒険者の多くは座っており、少し遅めのご飯を取っているようだった。
ギルドに入ってテーブルを挟んだ正面には受付があり、何人かのギルド職員が受付を行っている。
受付の横には掲示板があり、何枚も紙が貼ってある。
アルとレイの二人はご飯を食べている冒険者の横を通り、受付の一つに並んだ。
少し待っていると、順番が進み、アルとレイの番になった。
「すみません。冒険者登録をお願いしたいんですけど。」
「登録ですね。少々お待ち下さい。」
少し垂れ目で金髪のお姉さんはそう言うと、受付の後ろにある棚からカードを二枚取り出し、アルとレイの前に置いた。
「改めまして担当させていただきますギルド職員のミリーと申します。よろしくお願いします。」
「アルです。よろしくお願いします。ほらレイも。」
「レイだ。よろしく頼む。」
「それでは少し説明させていただきますね。まずは登録について簡単に説明します。えーと、登録にはお名前など記入事項を記入していただき、その後でこのカードに血を垂らして下さい。」
「記入事項はわかるんですけど、どうしてカードに血を垂らすんですか?」
「それはですね、迷宮の不思議なところではあるんですが、このカードに血を垂らすことで、迷宮に登録され、探索できるようになります。」
「どういう仕組みなんですか?」
「申し訳ありません。この迷宮が探索されるようになって長い時間が経っていますが、まだまだわかってないことの方が多いんです。」
「とにかく書くとこ書いて、カードに血を垂らせば、探索できるってことだろ?早くしようぜ、アル。」
「そうだね。」
「それで、記入事項のことなのですが、お名前とかはわかると思いますので、所属国について少し説明しますね。」
「お願いします。門番の方から少し説明してもらったんですけど、ギルドで詳しく聞いた方がいいと。」
「かしこまりました。それでは説明致します。所属国は四つあります。北の『ノーザン』、東の『イースタン』、南の『サウザン』、西の『ウエスタン』です。」
「はい、そこは門番の方に教えてもらいました。」
「次に四つの国それぞれの特徴ですね。今となっては、ほとんど人種の差がなくなりましたが、『ノーザン』は昔人間が多く住んでおり、人間はアイテム作りに長けていたため、その名残で探索に便利な補助アイテムの援助があります。次に『イースタン』は近接タイプの武器を使うドワーフが多くいたため、近接タイプの装備が盛んに開発され、その名残で近接タイプの装備の援助を受けれます。そして、『サウザン』は狩りの得意な獣人が多かったため、その名残で弓矢などの遠距離タイプの装備が充実しており、その援助があります。最後に『ウエスタン』は魔法の得意なエルフが多くいたため、その名残から魔法タイプの装備が発達し、その援助が受けられます。」
「なるほど、そういった歴史があったんですね。」
「はい、なので、自分に合ったタイプの国か補助アイテムの『ノーザン』がおすすめですね。ただ、他のタイプの方とパーティーを組みたいのでしたら、その限りではありませんが。また、タイプ別の所属国の割合はやはり北以外の三国はそれぞれタイプの合った人が多く所属しており、その他のタイプはほとんどいません。北の『ノーザン』はちょっと特別でして、絶対数が他の三国と比べて少ない代わりにタイプによるばらつきはほとんどありません。」
「少し気になることがあるんですが。」
「何でしょうか?」
「それぞれのタイプがバランスよく組んだ方が迷宮の探索がしやすいと思うんですけど。」
「そうですね。そういう考え方の人もいます。特に『ノーザン』を選んだ方はほとんどがそういう考え方です。装備援助の影響を一番受けにくいので、パーティーを組む時に揉めにくいですから。ただ他の三国はなかなか難しいところではありますね。どうしても装備援助のところで、それぞれのタイプの割合が悪くなってますから。最近は三タイプのバランスがいいパーティーの活躍で、パーティー編成の重要性も見直されてきていますし、アルさんのいう通りバランスのいいパーティーの方がいいかもしれません。」
「わかりました。じゃあ、僕達は『ノーザン』が良さそうだね。ね、レイ?」
「ああ、そうだな。」
アル達はミリーからの説明を聞きながら記入事項に記入していった。
「記入事項についてはこのくらいですね。次はカードに血をお願いします。」
ミリーにそう言われると、アル達二人は指の腹をナイフで少し切りつけ、それぞれのカードに血を垂らした。