木登り亭
門番から話を聞き終え、教えてもらった通り、アルとレイ、少年達二人は街の真ん中に向かって歩いていた。
「やっぱ俺らが住んでた村とは違って、都会だな。」
「それはそうだよ。なんたって『無限の迷宮』に挑む冒険者がいっぱいいるし、そのおかげでその関連産業も盛んだからね。」
「んでも、ここまでとは思わなかったな。」
「たしかにね。想像以上なのは言えてるかも。ここまで人がいると、少し気分が悪くなりそうだよ。」
「まあ、アルはひょろひょろしてるからな。その分辛いんだろ。」
「レイが気にしない性分ってのもあると思うけど。」
「そう言えばアル、少し腹減らねえか?」
「うん、言われてみれば少し空いたかも。もう昼前だしね。」
「じゃあ、あそこ寄ろうぜ。」
歩いている途中でレイはそう言うと、アルを引っ張って、『木登り亭』と書かれた店に入っていった。
二人が店に入った時は昼ご飯を食べるには少し早い時間だったため、店に客はほとんどいなかった。
二人は近くの空いている席に座ると、すぐにレイはメニューを開き、アルに話しかけた。
「おいアル、もう決まったか?」
「レイ少しは待ってよ。お腹空いてるのはわかるけどさ。」
「へいへい。早く決めろよな。」
「これ美味しそう。あ、でも、そっちも捨てがたいかも。かなり悩む。」
「アル。早くしろよ。決められないなら俺が決めてやる。アルはこのミートドリアな。」
レイはそう言い、テーブルにあった呼鈴を鳴らした。
すると、店の奥から頭の禿げた体格のいい男が現れ、テーブルに水を置くと、レイに注文を聞いた。
「坊主、注文は?」
「俺はオークのロースカツ定食、ご飯大盛り。で、こいつにはフリフリチキンのミートドリアで。」
「ロースカツ定食大盛りとミートドリアだな。少しだけ待ってろ。」
男はレイから注文を聞くとすぐに厨房へと戻っていった。
そして、注文された料理に取りかかった。
「レイひどいよ。勝手に決めるなんて。」
「アルが決めるの遅せえから。」
「それでもだよ。まあ、レイが頼んだのが悩んでたやつだからいいけどさ。少しは僕が決めるのも待ってよね。」
「はいはい、今度はな。」
アルとレイが10分ほど話していると、厨房から男が出てきて、アルとレイのテーブルに料理を置いた。
レイのご飯は山盛りに盛られ、ロースカツとミートドリアからは出来立てほやほやの湯気と共に美味しそうな匂いがしている。
「「いただきまーす。」」
二人はそう言うと、レイは箸、アルはスプーンをそれぞれ持ち、料理を食べ始めた。
二人は話すことなく夢中で食べ続けた。
二人は食事を食べ終わると、料理について話し始めた。
「アル、ここの料理めちゃくちゃうまかったな。」
「うん。これは今まで食べたことのない美味しさだったよ。すごく美味しかった。」
「ここ入って正解だったな。」
「そこはレイに感謝だね。あと料理作ってくれた親父さんにも。」
「だな。よし飯食ったし、いよいよギルド行くか。」
「そうだね、行こう。親父さんごちそうさまでした。」
「ごちそうさん。」
「また来い。」
二人は親父さんに挨拶し、ご飯代の銀貨2枚を渡した。
そして、『木登り亭』から出て、またギルドに向かって歩き出した。