白兎隊進軍開始
装甲車に揺られながら奥田陸は今回の作戦に至った経緯を思い出していた。なんでも重要人物を輸送中に攫われたらしい。攫った側は爆発物やらアサルトライフルなどの随分な武装が施された上に数は護衛の倍以上、しかも全員薬でバッチリ決まっているという徹底ぶりだったらしい。たかが、暴力団がここまで…奥田は憂鬱な気分になる。確かに、数年前の事件で日本の、いや世界の治安は随分悪くなり、命の価値も随分下がった。しかも国の治安能力が低下するのに反比例して、ヤクザの力は強まってきた。それでも、まさか俺たちに直接手を出してくるのには驚いた。
(舐められたもんだ)
奥田は静かに思った。
「あの、隊長少しいいですか。」
「お、どうした?」
「あんまり、こういう事言いたく無いんですけど…大丈夫ですか?この作戦」
自分の不安そうな顔が見られたか、と少し反省する。
「お前、実戦は初めてだっけ?」
「はい」
「だったら随分ラッキーだ、この作戦は、消化試合みたいなもんだよ」
「え?」
「相手は所詮素人さんだ、どうせ攫った時に使った人員が戦闘員のほぼ全てだったんだろう。しかもその半数以上はもう射殺済みだ。」
「じゃあなんで攫ったりなんかしたんですか?」
「さあな、どうせ箔を付けようとか思ってたんだろう」
「やっぱりイマイチ納得できないです」
「仮に、もしまだ戦闘員が倍以上残っていてもだ、こっちには奥の手があるんだ、安心しろよ。」
「はい…」
隊員に説明しながら、奥田は作戦前に手渡された小さなピストルとその用途を思い出していた。
(まぁあのターゲットならこれぐらいはするか…)
装甲車が止まり、運転手が通信を通してここから先は歩く事を伝える。
手際よく部隊が降りていき、奥田の周囲に集合する。
「よし、最終確認だ、目標地点はここから徒歩で10分ほど、そこで我々白兎隊と黒蛇、赤犬の2部隊が合流する。作戦内容は重要人物の確保、帰還の際にはヘリが向かえに来るし、航空支援も要請できる。至れり尽くせりって奴だ。何か質問あるか?」
十数名の隊員が緊張した表情で押し黙っている。
「よし、行くぞ!」
『はい!』
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