プロローグ
唐突に訪れる惨状
プロローグ
夕日に照らされながら、3台の軍用車が老朽化により所々ひび割れているアスファルトの道を走る。左右を林に挟まれたその道路は人気がなく、もう数時間対向車とすれ違っていない。3台のうち、中央を走る要人輸送用の装甲車内では、暇を持て余した兵士達が、拘束具で全身を固められた護送対象を無視して雑談を繰り広げている。
「だから、絶対に34だって俺の観察眼を信じろ」
「そんなババアな訳あるか、それより若い筈だ」
「おい、34がババアだと?ロリコンかテメェは…」
「いい加減にしろ、25って結論が出ただろうが」
「お前こそ、確かめに行った田中が、血だるまになって戻ったのを忘れたのか」
「25より年下?いや、それはないよな…」
女上司の年齢考察という下品な話が最近兵士達の間でブームである。 その姿が何よりの証拠だと、誰かが口を開こうとした瞬間。激しい衝突音が響き、車が急停止する。
「噂をすればって奴か…」
「なわけねぇだろ!襲撃だ!」
装甲車の後部のハッチを開き、兵士達が展開する。そこに、前の軍用車に乗っていた兵士2人が、1人を担ぎながら合流する。前方の車には、安っぽい改造車が突っ込んでいる。改造車の運転席には男が血を流してぐったりしている。
息つく間もなく、怒声と共に両脇の林からAKで武装した男達が銃を向ける。一瞬はやく、兵士達が引き金をひき、至近距離でフルオート射撃された男達が血みどろの肉片になって地面に倒れる。
「まだ来るぞ!」
林の中には人影が見え隠れしている。殆ど遮蔽物に身を隠さずに銃を構える素人を、容赦せず三点バーストで撃ち抜く。しかし、体に空いた風穴を気に止めず、奇声を発しながら隊員達に弾をばら撒く。腕を撃ち抜かれた兵士が悲鳴をあげる。防弾車の開け放たれた後部ハッチを遮蔽物にして銃撃を防ぎながら、誰かが叫ぶ。
「薬でキメてやがる!頭狙え!」
「そんな技術あるか!ミンチにしてやればいいんだよ!」
「もういい!強行突破だ!車に乗り込め!」
狂乱の中、林から、投げ込まれた何かが装甲車の下に転がり込む。
「グレネード!」
爆音が響き、重厚な車体が少し浮かび上がってから、重力によって地面に叩きつけられる。
「タイヤがいかれた!もう走れん!」
「おい!こっちだ!」
後方の軍用車から呼びかけられる。
「もう足はこいつだけだ!早く乗れ!」
「護送者はどうする!」
「お前達だけでも定員オーバーだ!置いてけ!」
「くそっ…畜生!」
手榴弾を数個投げ込んで、ジャンキー達を吹き飛ばした隙に5人が定員の軍用車に、負傷者含む11人を詰め込み、急発進させて、基地に向かう。
「ああ…痛ぇ…」
「くそっ何人負傷したんだ…」
「本部!緊急事態発生!応答を求む…」血のように赤い夕日の中、車内は兵士達の凄惨な声で満たされる。。
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