自業自得と言わないでっ
そんなこんなで今に至る。
俺は、聖剣を作り出すために鍛冶屋をしていた。
もちろん、座禅も忘れない。
俺は、世界一の鍛冶屋になるんだ!!
とは、言ったもののこの村に鍛冶屋はない。なぜか、ない。
なので、俺は本で見た知識で鍛冶をすることにした。激しく不安だがこれも勇者になるためだ。座禅と同じなのだ。
仕事はないが、やってみると以外と面白く。六年も修行をすると、剣のようなものも作れるようになってきた。
これで・・・俺も。勇者だ!!
「お師匠ー」
甲高い声がする。横を向いても誰もいない。まっ、まさか!!
「ここですよ。お師匠ー」
そいつはピョコピョコと跳ねながら人なつっこく俺に近づいてくる。
紹介しよう。こいつの名は・・・名前は・・・・何だっけ?
「モニカですよっ。お師匠!」
そうだ。そうだ。モニカだ。
あれは3年前かな、森でケガをしていたモニカを俺が華麗に助け出すと、俺に恩返しがしたいというので、俺の身の回りの世話をさせているのだ!!
ちなみに、元からモニカは奴隷の身分だ。
「いい加減。名前、覚えてくださいよ」
モニカが呆れぎみに言う。
「うるせえ」
主人にそんな口聞いていいと思ってんのか?とにらみつけておく。
だが、それも意に介さず。
「お師匠がそんなことしないって知ってますよ」
つぶらな瞳で真っ直ぐ見つめてくるもんだから、こっちも何も言えない。
完全になめてやがる。
「というか、ご主人と呼ばれるのイヤって変ですよ」
別にイヤな訳ではないんだ。ただ、なんか、違和感を感じるんだ。
だから、こいつを助けた時に。
(俺はご主人じゃねえ。どうせなら師匠と呼べ)と。当時、鍛冶屋として調子に乗っていた俺はそう言わせてしまったのだ。
今ではもう定着しているが。
「そういえば、聖剣の作り方は分かったんですか?」
「分からんけど、普通の剣と同じじゃないのか?」
あれから、俺は聖剣の作り方を日々研究している毎日だ。
勇者になって、あのよそ者をぶっ潰す!!!
「魔力が込められているのは、分かってるんですけどねー」
聖剣には尋常じゃないほどの魔力が込められている。そのお陰で不思議な力を手に入れたりすることが出来るのだが。
「お師匠の魔力込めて、無事に済んだ試しがないじゃないですか」
「しょうがないだろ。魔力量が多いんだから」
日々の座禅の性か、俺の魔力量はものすごいことになっていた。ただ、魔力を使うことは俺には出来ない。
だって、魔道士様が何も教えてくれなかったんだもの。
とりあえず、魔力を注入することは独学で編み出したんだが、今度は道具の問題だ。
鉄に注入して木っ端微塵。鋼に注入して木っ端微塵。など、数えればきりがない。前に作ったのはうまくいったんだがな・・・ 破片が大きくなってたし・・・
「少しは加減というものを分かって下さいよ」
「俺が悪いんじゃねえ。悪いのは材料だ。だから今、最高の素材を集めてんだろ」
魔力耐性と硬度の両方を備えた最強の鉱物。オリハルコンをいま大金を支払って仕入れたのだ。これで、聖剣が出来る!
モニカと話していると、外から馬車の駆ける音が聞こえた。
「あら。もう来たようですよ」
何? もうか。モニカがたったっと玄関に向かって駆ける。
ついに、ついに、聖剣を作ることが出来るのかっ。
高鳴る胸の鼓動。これで、あのよそ者を。村長を。見返すことが出来る!
「持って来ましたよ。・・・・重っ」
モニカがフラフラしながらオリハルコンを運ぶ。正直危なっかしくて見ていてられない。
「ほらっ。貸せっ」
モニカから強引に奪い取る。
「あっ。お師匠。ありがとうございます・・・・」
モニカが何かブツブツ言ってるけど、はっきり言って聞こえない。
そんなことより、オリハルコンだ。
「早速、剣。作るぞ!」
善は急げだ。どうせやるなら早いほうが良いに決まっている。
「待って下さい。お師匠」
「何だ?」
ちょっとイライラしながら聞いた。だって、いやじゃん。すごい良いテンションになってんのに横やり入れられたら。
「お師匠の作る剣は・・・・」
「切れ味が全くないじゃないですか!」
それを言っちゃあお終いだ。 実を言うと、俺には鍛冶の才能がない。ついでに家事の才能もない。
だから、形はなんとか剣っぽくなるんだが。なぜか切れ味が全くないなまくらになってしまう。 それでも、鈍器として何とかなるといえばなるのだが・・・
「そんなの、剣じゃないですよ」
「うるさい。斬れるだけの剣は古いんだよ。時代は殴る剣だ」
「それ、剣じゃなくで良いじゃないですか・・・・」
自分より6才も年下に呆れられる俺って・・・・
「俺は、これから聖剣を作ります。絶対に邪魔するなよ!!」
「邪魔なんてしないですよ。じゃあ、頑張って下さい」
モニカの声援を受け。俺は作業場へと向かった。
それから、一ヶ月後。
「ついに、出来たぞ!!」
6年の努力の甲斐あってか、剣は出来た。柄も作った。
「おめでとうございます! お師匠!!」
モニカも祝福してくれている。
後は、俺の魔力を込めるだけだ。どうせなら全部込めよう。史上最強の聖剣を作るんだ!!
「まだ、不安材料がありますが・・・」
「オリハルコンだぞっ。そう簡単に壊れるわけないじゃないかっ。」
俺は嬉しさからか、口調がいつもよりハイテンションになり、口元も緩む。
「そういえば、剣の名前は決まってるんですか?」
「魔力を込めてから考えるさ」
そういえば、考えていなかったな・・・・
まあ、いいや。今度、考えるか。
「よしっ。込めるぞ!! 離れてろ!!」
俺はモニカに注意を促す。万が一、剣が粉々になったら俺はまだしもモニカは無事では済まないだろう。そんなことになったら大変だ。勇者になる前に人としての道を踏み外すことになる。
モニカも、危険を十分分かっているため、ちゃんと言うことを聞いてくれた。
もう少し、悩んでくれても良かったんですけどね・・・
俺は、全神経を集中させ魔力を注入した。
「ぐっ」
全身から、力が抜けていくのが分かる。普通ならこのぐらいで壊れるのだが。
さすがは、オリハルコンといったところか、全く壊れる気配がない。
これなら、全力でも耐えることが出来そうだ!!
「ふんっ!!」
俺は残った魔力も注ぎ込んだ。もう、倒れてしまいそうだが俺は倒れない。
なぜなら、この日のために何年もの時間を、座禅と鍛冶に費やしてきた。友達も恋人も作らず。すべては勇者になるために・・・・
「俺の魔力っ!! 全部、持ってけぇぇぇぇ!!」
ついに、俺の魔力が切れた。剣は・・・?
俺の作り出した剣は、淡い光を灯している。俺の魔力の影響だろうか。
ということは、聖剣が完成したっ。
俺が喜ぶと同時に疲れがどっと押し寄せてきた。やばい、立っていられない・・・
俺は思わず座り込むが・・・・膝が床につかない?
それもそのはず、俺の体は宙を舞っていた。
「んなっ!?」
俺の体が、剣に吸い寄せられるように・・・いや、吸い寄せられてるっ!!
何だ? まさか・・・暴走?
騒ぎを聞きつけたのかドアをバタンと開ける音が。
「お師匠?出来たんですか?」
「くっ。来るなっ」
作業場に来たモニカを突き飛ばす。かなり荒っぽいがこれに巻き込むわけにはいかない。
「おっ、お師匠!?」
俺の体のほとんどが剣の中に入っていくっ。
こりゃ、覚悟を決めた方が良いかな・・・・
「モニカ・・・・・またな・・・・」
「お師匠!」
最後に見えたのはモニカの泣き顔。あいつ、状況分かってんのかな? 多分、若ッてんだろうけど・・・・
俺の体は、俺の作った剣。聖剣の中に吸い込まれて行った。
そして、激しい轟音と光を共にその聖剣。俺も虚空に消えていった。
モニカの悲鳴がつんざくように耳に響く。
ごめんな・・・・
強い日差しで目が覚めた。
あれ?
俺、死んだはずじゃ・・・・・
何か、視界がいつもより低い。つーか、地面すれすれじゃねえか!
体がピクリとも動かない・・・
一体全体、俺の身に何が起こっているんだ?
俺は、近くに存在していた水たまりに映った俺?の姿を見て絶句した。
『なっ!?』
映っていたのは、俺じゃない。
いや、正確には俺なのだろうが・・・・
俺の姿は、俺の作った聖剣だった。
それに、俺・・・・・地面に突き刺さってます・・・




