念願の……。
お腹空いた。
ただいま深夜テンションです。
彼が居なくなり暇になった私はシャンプーなどを次々に手に入れた。
シャンプーは普段使っていた物では無く、高めの物にした。せっかく無料で手に入るのだからそれくらいはしとかないと損だ。
また、私の携帯と鞄も手に入れた。
戻って来るか不安だったが確かに私のだった。
携帯に表示されている時刻を見ると、すでに夜中の二時を過ぎていた。
どうりで少し眠い訳である。
しかし外は明るく、人々は平然とした様子で歩いていた。
そこで私は眠気覚ましも兼ねて、街を散策することにした。
しばらく歩いていると、きちんと整った街並みになってきた。
そこには和服店も無さそうだし、クレープ車も無い。屋台も無く、お洒落で落ち着いている佇まいの店が並んでいた。
まるで、本当に中世ヨーロッパの世界に迷い込んでしまったみたいだ。
私はまず手始めに、ちょうど私の正面にある店の中に入ってみた。
そこにはたくさんの種類の帽子が売られていた。また、古い店構えからは想像出来ない程の現代的な内装だった。
私はあまり帽子が好きでは無いが、私の帽子コレクターの友人が見たら発狂しそうだなと思った。
帽子屋を出た私は、その隣の店に入ってみた。
やはりそこの店も現代的な内装だった。店の中には可愛らしい靴が大量にあったが、すべて十代の若い女の子が履くようなデザインの物ばかりだった。正直、ものすごく甘ったるい
すぐに店を出た。
次にその隣の店の中に入ってみた。
宝石店のようだが、0が数え切れない程ある値段の物ばかりだ。
少なくとも日本にいた頃にこの値段の物が店に並んでいるのを見たことが無かった。
それに忘れていたが、私の所持金は大体8000円くらいだ。
入ってから約十五秒で店を出た。
三軒の並列している店を見て思ったが、私にこの通りは合っていないらしい。
私は元の場所に戻ることにした。
泉のところへ戻るとすでに彼は戻っていた。
「案外早かったのね。」
「ええ。聞いてくるだけでしたからね。」
「それで、どうだったの?」
「はい。この泉は一般的には使うことを許されていないようですよ。許されているのは私達のような存在、すなわちガイドのみです。ただ、佳乃様は例外で、特別に許可が下りました。これから自由に使って結構ですよ。」
「あ、そうなんだ。でもこんな丸出しだったら誰でも使えると思うけど。」
「いえ、それは大丈夫です。普通の人には見えない仕掛けになっていますからね。佳乃様には特殊な術をかけ、泉が見えるようにしたのです。」
「ふーん。変なの。」
一般の人も使えるようにし、店を無くす方が良いに決まっている。
「まあいろいろあるのでしょうね。では用も済んだことですし、帰りますか。」
「明日もここに来て良い?」
「はい。私が案内しますよ。大雑把で良いならですけれど。」
「ありがとう。じゃあ帰りましょう。」
「はい。では掴まって下さい。」
私は彼に掴まり、喫茶店に戻った。
帰ってきて早速風呂に入った。
風呂は案外広めだった。
私はバスタブに浸かりながら、一日を振り返ってみた。
まず、すべては携帯を会社に忘れてしまったことから始まった。
あの時携帯を忘れなければ、取りに行かなければ、私は死なずに済んだ。
友人との約束だって果たせたし、もしかしたら結婚相手だって見つかったかも知れない。
しかし、この世界を知ることは出来なかった。泉を知ることも無かったし、彼と出会うことだって無かったはずだ。
そして、何よりマドレーヌだ。
次に、いろいろな話を彼から聞いた。
最初は少し疑ったりもしたけれど、今ではすっかりこの世界の住人だ。
他にもいろいろなことがあった。
シチューを作ろうとして失敗したり、街を探検してみたり、泉でいろいろな物を手に入れたり。
充実した一日、いや、四時間だったと思う。
「ふー、さっぱりした。あ、ドライヤー忘れてた。」
彼<マドレーヌ
命≦マドレーヌ