商業の国 ラーハン3『レイ』
あった・・・・・・。
古びて色あせた木の箱。
あいつの魔力を散々感じてきたあたしには、強い魔力をはっきりと感じることができた。
そうっと箱を開ける。
はぁ・・・・・・っ!
すごい・・・・・・!
中に入っていたものは、光り輝く白銀でできた剣と、漆黒の刀身の剣との2本だった。
どちらからも、とてつもない魔力を感じる。
今思えば、このときすうでに、あたしには相当な魔力があったのだと思う。
でないと、この双剣に触れた時点で弾き飛ばされていただろう。
これが・・・・・・「光と闇の双剣」・・・・・・。
あたしは気がつくと走りだしていた。
まっすぐに、あいつのもとへ。
何を考えていたのか、思い出せないけれど・・・・・・。
ただ、怒りに身を任せて、走っていた。
「ん?ここでなにをしている?もう部屋にいろと言ったはずだが。それになんだ?その剣は。俺に内緒で、どこに行っていたぁぁぁっ!!」
「家に・・・・・。帰っていた。」
「なんだと?家に?俺に逆らうと、どうなるか分かっているんだろうなぁ?」
いつもなら、震え上がるほど怖いのに、脳裏に焼きついているルークの姿が、それをさせなかった。
「おまえを・・・・・・殺すの・・・・・・。ルークと同じ苦しみを、味わってもらうっ!!」
そう叫ぶと、あたしはあいつに向かって切りかかる。
初めて使う剣だったけれど、自然と体が動いていた。
「はぁぁっ!」
「なにを・・・・・・するぅっ!」
あいつももちろん反撃する。
けれど、怒りにわれを忘れ、恐怖を感じなくなっていたあたしは自分の意思に関係なく、体が動いていた。
あたしは光の剣で切りかかり、体をひねった反動を使ってそのまま闇の剣であいつのわき腹を切り裂く。そこにすぐさま蹴りをいれ、一気に間合いをつめていく。
「ぐぉっ!」
あいつはとっさに腹をかばって、そこに蹴りを受けそのまま崩れ落ちる。
あたしは、あいつを・・・・・・、許さないっ!
自分でも何をしているのか分からない。
目的はただ一つ、あいつを倒すっ!!
あいつがよろめきながら立ち上がる。
そして、剣を構えると同時に、あたしはあいつの肩を切り裂き、そのまま馬乗りになる。
あいつの顔面を殴った。拳が歯で切れて、血が出るのもかまわなかった。
ただ、怒りに身を任せて、あいつを殴る快感に酔っていた。
はっと我に返ったのは、あいつの弱々しい声だった。
「気は・・・・・・、すんだか?気が済むまで、殴れ・・・・・・」
あたしは、そのときやっと、自分が涙を流していたことに気がついた。
「もう・・・・・・、いいの・・・・・・か・・・・・・?」
「よく・・・・・・、ないよ。でも・・・・・・。」
「なんだ?」
あたしが涙を流していたのは、いつの間にかルークの声がしていたからだった。
『レイ、もう、いいよ・・・・・・?僕は、あいつの事は恨んでいるけど、レイにつらい思い、してほしくないんだ。だから、もう泣かないで・・・・・・。』
「ルークが、もう、いいって言ってるから・・・・・・」
あたしはそういうと、あいつの上から降りてルークを見た。
『もう、レイに悲しんでほしくないよ・・・・・・?僕は、レイのことをとっても大切に思ってた。だから、レイにこんなこと、してほしくないんだ。もう、いいんんだよ・・・・・・?』
「本当・・・・・・?本当に、もういいの?」
『うん。レイはなにも悪くない。だから、悲しい顔しないで・・・・・・。」
ごめん・・・・・・、ルークっ!
「ルーク、本当に、本当にごめんなさい。あなたを、こんな目にあわせちゃった・・・・・・。」
『いいんだよ。仕方のないことだったんだ。僕は、これからも、レイのそばにいるよ。」
そう言って、ルークは透けた手であたしの涙をそっと拭ってくれた。
優しい、手だった。
レイの過去です。この「ルカとレイのたびにっき」を書き終わったら番外編として、2人の過去をその当時のまま、書いてみたいと思ってます。
次で、レイの回想は終わります。