商業の国 ラーハン1『レイ』
なに、ここ・・・。
人の声に混じって、なにか得体の知れないモノの声がする。
ルカに言われて、今は聞き耳を閉じているけど・・・。
そんなことを考えながら歩いていると、広場のようなところに出た。
円い、大きな広場の真ん中には噴水があって、その周りに色とりどりの異国の店が軒を連ねている。
「ルカっ、あのお店に入ってみよっ!可愛い装飾品がいっぱいだよっ。」
「あぁ、いいだろ。」
店の中は冷たい風が吹く外とは違って、人の熱気で暖かい。
「あったかい・・・。」
思わず呟くと、ルカが、
「あそこに火鉢のようなものがある。あれで暖をとっているんじゃないか?」
と言った。
しばらく店の中を見ていると、ぱっと眼に留まる一着の着物があった。
「これきれいっ!」
その着物は深い海のような瑠璃色から、夏の朝の抜けるような空の色まで、様々な青い糸で織ってある布で作られていた。ワンピースのような形だ。
襟の部分には、決して派手ではないがルーシェ(3~4mmほどの、中心部分に穴が開いた色ガラス)が縫い付けてあり、窓から入ってくる微かな光に反射してきらきらと輝いている。
きれい・・・。
「ねぇ、ル・・・。」
「すいません、この着物いくらですか?」
「って、ルカっ!なに買う気になってんのよ!まだ買うって決めたわけじゃ・・・。」
「おまえの眼がああなったら、もう買うまで離れないだろう?」
「う・・・、そうかもしれないけど・・・。」
そうこうしているうちに、店の女主人がやってきた。
「はい、なにか御用でしょうか?」
そういった女主人は、よく日に焼けた顔に、くるくると良く動く茶色の眼、愛想のよさそうな口元。
とても人のよさそうな人だ。
「あの、この着物はいくらでしょう?」
全く、ルカってば・・・。
「良い着物に目をつけられましたね。この着物はトカラ産なんですよ。ほら、いかにも海って感じの色合いでしょう?今なら2カロン(約2000円)にしておきますよ。」
「うん、悪くない。レイ、買うか。」
「え・・・、いいの?」
「あぁ、おまえにはいつも世話になってる。それにその服。洗い代えも入れて、いつから着ている?もうそろそろ、新しいのを買ってもいいだろう。」
「やったぁっ!嬉しいっ、嬉しいよっ!ありがとう、ルカっ☆」
「あぁ。」
あたしは、早速買った着物と、まだ新しい白い内側に着る着物、それに女主人が「これも持ってっていいわよ」と言ってくれた、毛皮の暖かい靴に着替えた。
「ルカ、どうかなっ?」
「あぁ、いいんじゃないか?その青、綺麗だな・・・。」
「でしょっ☆」
あたしはにっと微笑み返すと、軽い足取りで次の店へと向かった。
レイ目線です。難しい・・・。
地の文と、話してることの口調が違うのは、これからの話で分かると思われます(笑