旅路5『ルカ』
喉が渇く。いくら冬に近いといっても、歩けば熱くなる。休憩しているときは肌寒いくらいだが。
俺はいつものパーカーにジーンズ、それに薄手のレーシという上着を着ている。
レイはこれまたいつもの綿のシャツに上着、ハーフパンツだが、脚は寒くないのだろうか?
「ね、ルカ?今日には次の国に着けるよね?」
「あぁ。太陽があの位置だから・・・。」
俺は地図と太陽の位置から、今自分たちのいる場所を考える。
「このままなにもなければ、あと3エセット(約3時間)くらいで着くだろう。今夜は夜営する場所を探さなくてもよさそうだ。うまくいけば暖かい寝具で寝られる。」
「ぃやったぁっ!!久しぶりだねっ、それにロコ(風呂)にも入れるよね♪」
「あぁ、そうだな。」
しばらく他愛もない話をしながら半エセット(約30分)ほど歩いたところで、レイがもう待ちきれないと言うように
「ねぇ、ルカ、お腹すかない?もうお昼にしようよっ!」
と言い出した。そういえば、腹が減っている。
「しかたない。弁当食おうか。」
「うんっ☆」
そう言うと、荷物の中から握り飯の入ったハクリの包みを取り出して、美味そうに握り飯をほおばる。
見ているこっちまで食べたくなるじゃないか・・・。
「ごちそうさま。」
「ごちそうさまっ☆おいしかったね。」
「うん。美味かった・・・。よし、行くか。今から出れば、あと2と半エセット(約2時間半)もあれば着くだろう。」
「そっか、行こうかっ!」
歩く事2と半エセット・・・。ようやく何人かの人とすれ違うようになっていた。
が、どの人もこのあたりの地域の人ではない。ある人は褐色の肌に薄茶色の目、それに茶髪だ。ある人は真っ白な肌に緑の瞳、それに金髪。
「ねぇ、ルカ。今から行く国は商業で栄えてるって聞いたから、他の地域の人がいて当然よね。なのにここいらへんの人を全然見かけない・・・。」
それは俺もおかしいと思う。商業で栄えているのなら、売りに来る人がいるのは当然だ。だが・・・。売りに行く人がなぜいない?
そんなことを考えながら歩いていたら、ふいに人々のざわめきが聞こえた。
「声が・・・する。でも、人の声だけじゃなさそうよ・・・。」
レイには「聞き耳の才」がある。それは人には見ることのできない妖精、精霊、幽霊、時には獣の声も聞くことができる。この才は、ヴァンパイアの血を引くこいつだからこその才だ。
「なんの声か、分かるか?」
「ううん。まだそこまでは。でも、何かを、誰かに伝えたがってる・・・。」
「そうか。一旦聞き耳は閉じておけ。街に入ったときに、何がなんだか、分からなくなる。」
「うん、そうする・・・。」
と、人々のざわめきが大きくなった。
次からはレイ目線でいきます。
なるべく毎日更新したいですが、学校がある日は・・・。無理かもです。