商業の国 ラーハン4『レイ』
「・・・・・・イ、レイ。」
え・・・・・・?ルーク・・・・・・?ルークの声なの・・・・・・?
「レイ、大丈夫か?」
目をあけると目の前にルカの顔があった。
「どうした?嫌な夢でもみたのか。泣いてたぞ。」
そう言われて頬に手をやると、濡れていた。
あたし、いつの間にか眠ってた・・・・・・。
ルークの夢を見て、泣いてたんだ・・・・・・。
「うん、大丈夫だよ。もう、朝?」
「あぁ。昨日買出しから帰ったらおまえ、寝てたんだ。疲れてるみたいだったから、寝かしておいたんだが・・・・・・。おまえが泣くなんて、珍しい。あまりにも辛そうだったから起こしたんだ。」
そういうと、ルカはバン(小麦から作られる無発酵のパンのようなもの)と鹿肉の残りを渡してくれた。
「腹、減ってんだろ。」
そう言ったきりもう話さない。きっと何で泣いてたか気になってるはずなんだけど・・・・・・。自分もバンと鹿肉を食べている。ルカの、そんな優しさが今のあたしには嬉しかった。
「ありがとう。」
そう言ってあたしはバンと鹿肉を食べる。
おいしい・・・・・・!
ルークも、バン好きだったな・・・・・・。よく二人で食べたっけ。ルークは料理上手だったから、いろいろ教えてもらった・・・・・・。
ルークの事を考えてると、夢の続きでまた泣きそうになる。
ルークの事以来、人前では泣かないと決めていたのにな。
ルカの前だとつい、気が緩む。
ルカはルークによく似ている。優しい薄茶色の眼も、心遣いも・・・・・・。
今はまだ、ルークの事は話せないけれど・・・・・・。
「ごちそうさま。」
「ごちそうさまっ☆おいしかったよ。・・・・・・。ありがとね。」
「ん。」
ありがとう・・・・・・。ルカ。
ルークを失くしてから、ずっとつらかった。
毎日、泣いてた。
ルークもあたしの聞き耳の才に気づいて、よく現れてくれた。
でも・・・・・・。つらいのには変わりなかった。
あたしは、しばらくすると故郷の人々の冷たい目に気が付いた。
そう・・・・・・。あたしは村の人たちにとっては、あいつの手先になった、憎くて、憎くてたまらない人だった。
あたしは、村にはいられなくなった。
村には、大切な友人や家族がいたから、村を出るのはつらかった。
でも・・・・・・。村の人たちの気持ちを考えたら、村にはいられなかった。
そして、あたしは村を出た。
見送ってくれる人は、誰もいなかった。
村を出て、一年たった頃だっただろうか。
同じく旅をしていた、ルカに出会った。
あたしたちは、目的地が一緒だったから、一緒に旅をした。
次の国では別れるつもりだった。
けれど、旅をしていて気が付いた。
ルカは、今心を失くしてる・・・・・・。つらい、つらい過去のせいで自分でも気付かないうちに、心を失ってる。
この人に、心を取り戻して欲しい。
そう思ったのは、ルークに似ていたからなのかな・・・・・・?それとも・・・・・・。
ルカを元気付けようと、あたしはつらい心を押し殺して、必死に明るく振舞った。
最初は心を取り戻してはくれなかった。
でも、次第に・・・・・・。少しずつ、ルカの体に心が戻っていくのが分かった。
あたしの心も・・・・・・。
そうして、あたしとルカは二人で旅を始めた。
「ルカ、もう大丈夫だよっ!出かけようっ☆」
ルカとレイの出会いです。
次からは通常通り、二人で旅していきます。