3話 魔王は隠したい。
あれから少し経ったある日。
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「ふふ、今日も我とマモノンで勝負して貰うぞ!」
魔王は遊び耽っていた。
近頃は勇者も魔王城に来る頻度が減り魔王には
暇な日々が訪れていた。
「マオ兄ちゃん!今日も来てくれたんだ!」
「うむ。あれから試行錯誤し、より強さに磨きがかかった我のデッキと勝負して貰うぞ!」
「あ!そうだマオ兄ちゃん、今日はマオ兄ちゃんに紹介したい人がいるんだ!」
「そうか、それは一体どんな者なのだ。」
「えっとねー、今ショップにいるから呼んでくるね〜!」
そう言うとカードショップに入っていった。
少し待つとカードショップから1人の男が出てきた。
「うーん…まだカード見たかったんだけどなぁ…」
「……」
「ん?アンタ…どっかで会ったことあるか?」
何故…
「(なぜ勇者がここにいるんだ…!!??)」
「いや…初めてだが……。」
「そうかな〜…?どっかで見覚えあるような顔してるんだけどな……」
勇者はずいずいとこちらに顔を近寄せてくる。
「それより!アンタもマモノンをやっているのか?」
「おう!俺、最近マモノンをやり始めたんだけど、なかなか面白いんだ!」
なるほど…あの頑固で話を聞かない勇者ですらマモノンに夢中になるとは…
「マオ兄ちゃん、聞いて驚くなよ〜?コイツ、勇者なんだぜ!」
「コイツとはなんだコイツとは、俺にはリオってれっきとした名前があんだぞ。」
なるほど、勇者の名前はリオと言うのか…
「んで…そこのアンタの名前は?」
「あぁ、俺はマオだ…よろしく。」
「マオ…?マオ…マオ……うん、よろしく。」
「だがしかし、リオ…お前は勇者だと言うなら魔王を討伐しに行かなければいけないはずだろう?」
「あぁ…えっと、実は最近マモノンにどっぷりハマっちまって…」
「俺さ…勇者の素質があるって分かったのがガキの頃で、それが分かってから毎日鍛錬鍛錬って…そのせいで友達と遊んだ事とかも無くて…」
「って…こんなん初対面のアンタに言うことじゃないよな、ごめん。」
可哀想だとは思わなかった。
だが理解は出来た。
生まれ持った【肩書き】に縛られること。
周りから「こうあれ」、「こうなりなさい」
「こうあるべき」と言われ自分を殺す辛さ。
自分のしたいこと、やりたいことを言えばそれは間違いだ、これが正しいと言われる恐怖。
勝手に向こうが押し付けてきた夢や希望に少しでも応えられなければ「嘘つき」「期待してたのに」と言われる絶望。
我は魔族だから耐えられるが、人間はそうもいかないだろう。
「我も少しは分かるぞ、その痛みが」
「はは…そうか、お前優しいんだな。」
「別に我が優しい訳じゃない、ただ理解できると言っただけだ。」
「それでも、ありがとう。」
「暗い話ばっかしていてもつまらんだろう。」
「お前は今日、マモノンをする為にここに来たのだろう?」
そんな顔をされていてはこちらも興が冷める。
勇者ならば、我を倒す使命を持つ者ならば。
「早速だが、゛リオ゛よ、このマオと勝負して貰うぞ!」
立場が違えば……生まれる種族が違えば。
勇者とも仲良く、友人のようになれたのだろうか。
「っ…、あぁ。」
「このリオの相手になってもらうぞ!゛マオ゛!」
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「2勝3敗…俺の負け、か……強いな、マオ。」
「ふふ、当然だろう。」
「だが、勝負は実力が拮抗してなくては面白くない。」
正直驚いた、勇者がここまで強いとは。
だが、勝者はこの魔王だ。
マモノンでも、戦いでも、この我が勇者に負ける事はない。
「あの…もしもマオが良ければ俺と友達になってくれないか…?」
「……」
【勇者】と【魔王】が仲良くなる……そんなことあってはならない。
だが、【リオ】と【マオ】なら。
「(俺は……コイツを…゛リオ゛を含めた人間の事を理解する必要がある。)」
ただ無益に争うのではなく。
互いの事を知り、尊重しあえたなら。
俺は………
「あぁ、これからよろしく」
「リオ。」
「……!」
「あぁ!俺の方こそ、よろしく!」
「マオ!」
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【魔王城】
「今日こそお前を倒すぞ!魔王!」
あれから、勇者が魔王城に来る回数が増えた。
我…マオと出会う前の死んだような顔から、少し顔の明るさが増している。
「勇者よ、何かご機嫌のようだな。」
「それをお前に教えてやる義理はない!」
「そうか。」
「では【勇者】よ…この【魔王】に向かって来るがいい!」
「言われなくても!」
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「くそっ…強い…!」
「はぁ、つまらんな。」
「ここまで実力に差があると退屈だ。」
「なっ!?」
「もっと強くなってから出直して来るのだな。」
勇者の足元に転移魔法陣を召喚する。
「く……そ…!」
強くなれ、我に負けないくらい。
「勝負は、実力が拮抗してなくては面白くがないだろう。」
「………!」
「では、またな…勇者よ。」
転移陣が光を放ち、勇者の姿が消えた。
「魔王さま、今日は何かご機嫌ですね。」
「そうか…ふふ、そう見えたか。」
「?」
「いや、なんでもない。」
「セバス、飯を用意してくれ。」
「はい、かしこまりました。」
そうしてセバスは厨房へと消えていった。
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【人間の国】
「くそ…また負けた……!」
だが何故だ。
「なんで魔王は俺を殺さない…!」
刹那脳裏によぎる魔王の最後の一言。
「(実力が拮抗してなくては面白くない…か。)」
なんで俺がマオと仲良くなりたいか分かった。
アイツが…マオが魔王と似ていたから。
「俺だって本当は…!」
本当ならば、人間族と魔族だって分かり合えるはずだ。
ただ、言葉をかわそうとしないから、相手を理解しようとしないから余計な争いや衝突が増えるだけなんだ。
魔王がその良い例だろう。
本来ならば脅威となる勇者の俺を魔王が生かしておく理由がない。
ただの暇つぶしと言ってしまえばそれでお終いだろう。
だが、勇者に「もっと強くなれ」と言ったのだ。
本当は魔王も…戦いたくないのだとしたら。
争いをせず、平和に暮らしたいだけなのだとしたら。
「俺は……」
゛魔王と仲良くなりたい゛
「魔王と仲良くなりたい…か。」/「勇者と仲良くなった…か。」
「こんなこと、口が裂けても言えないな」/「こんなこと、口が裂けても言えないな。」
そうしてその日、勇者と魔王には…絶対に口に出せない秘密ができた。
3話 完




