SS⑥ らっきーで埋め尽くして
皆さんこんにちは。私です。
なんだかひさびさに語り手の役目がまわってきたような気がするので、思わずあいさつしてしまいました。あ、念のため補足しておきますが、私ってプリオリですよ?
異世界最強の大魔導士にして、林檎の聖女と讃えられているあのプリオリですよ?
さて、突然ですが皆さんは〝守護霊〟というものを信じていますか?
私は信じています。
舞台が異世界であるとき、という条件は付与されますけどね。
「では今日も街にいきましょうか」
「メプメプッ」
メープルを肩に乗せ、今日も鼻唄交じりにプリテンドに向かいます。
……ちょっとメタな話になりますが、この物語は私が林檎の聖女と街の皆さんから讃えられるようになった翌日の物語になります。
モカモカとギルティアという可愛い弟子ができるのは少し先の話。この時間軸の私は人と交流できる喜びに舞い上がっています。2日後にはげっそりしていますけど。
――話の軸を戻します。
私がプリテンドに足を踏み入れれば、それだけで街の方々は大歓喜です。
「聖女さまだ! 聖女さまがいらしたぞ!」
「どもども」
選挙前の市議会議員みたいに手を振りながら私は人がごった返す街を闊歩します。
しかし、一度に大勢の人が押しかければ当然事故が起きるわけで……
「きゃッ!」
甲高い声に目をやれば、子どもの手から離れたジュースの入った紙コップが私めがけて迫っていました。
スローになる世界。――あ、かかる。
「メプッ」
きゅっと目をつぶった直後、勢いよく風が吹き、紙コップはジュースを一滴も零すことなく地面に直立しました。そんなことある?
ラッキーはそれからも続きました。
「うわぁ!? か、花瓶が……!」
「メプッ!」
頭上から迫りくる花瓶が、急に軌道を変えてプロポーズしている男性の方の手にすぽっと収まりました。そんなことある?
「バウバウッ!」
「ちょこらッ、聖女様の前よ!」
「メプッ!」
私に敵意を向けていた大型犬がきゅうにしゅんとしました。なにがあった?
「メプッ!」
「おめでとうございます! 一等一等! 当選です!」
「仕込んでたってわけじゃないですよね?」
「はい! ほんっとうに偶然です! さすが聖女さま! 運も味方していますね!」
くじ引きで一発で一等が出ました。んなアホな。
「メプッ!」
「よかったぁ~。そのベンチ、ペンキ塗りたてだったんだよ~」
「なんと危機一髪だったんですね……さてはメープル気づいてました?」
「メプメプッ!」
これはまぁメープルのおかげですね。
どうやら幸運値9999の恩恵は伊達ではないようです。私は幸運の神様に愛されているようでした。
……な~んて目には見えないなにかに感謝してしまうほど私は鈍感ではないです。
「今日の立て続きのラッキーはメープルが起こしたものなんでしょ?」
「メプ~?」
「なんのことかな~? って顔してもバレバレですよ」
就寝前、私はメープルを抱き上げもふもふしました。
「もふもふもふ~♪」
「メプッ♪ メプメプッ♪」
「ふふ、あなたは相変わらずかわいいがすぎますね。今日はありがとうございます。ですが、やりすぎには注意しなきゃですよ?」
「メプ……」
「怒ってはいませんよ。あなたがいるおかげで私の人生は鮮やかに彩られました。ほんとうにありがとうございます。あなたと出会えてよかったです」
「それはぼくの台詞なんだけどなぁ」
「え?」
「メプ?」
「……気のせいですよね、メープルはメプメプしか言えませんもんね」
身体を横たえてメープルを抱き留め、私は瞬く間に眠りの底に落ちていきます。
「おやすみプリオリ」
「おやしゅみなしゃい……」
今日も良い1日でした。
明日も素敵な日になりますように。




