SS➀ プリオリハウスのようせいさん
太陽が目覚めてからほどなくして、モカモカはパチッと目を覚ました。
「ふわぁ~」
背中を伸ばしつつ大きなあくびをする。
目頭をごしごしと擦りつつ隣に目をやると、ふにゃふにゃの顔で眠るお師匠様と、そんなお師匠様の腕にぎゅっと抱きつき、すやすやと眠る友達の姿が映った。
「おはよ、お師匠様、ギルティア」
「みゅへへ……もっとりんご食べたいでしゅぅ……」
「う~ん、むにゃにゃ……むにゃにゃにゃにゃ~」
起こさないように静かなあいさつをし、布団をそっとかけ直す。すると、メープルが頭にぴょんと飛び乗ってきた。
「メープルもおはよ」
「メプメプッ」
この家における早起きトップ2は、基本的にモカモカとメープルである。
頭のうえのもふもふを堪能しつつ、モカモカはリビングに向かう。
「今日も1日がんばるぞっ」
「メップ~!」
ふんすと気合いを入れ、モカモカはモップを手に取った。
プリオリもギルティアも気づいていないが、この家の清潔感が常に保たれているのは、モカモカという小さな妖精さんが日頃から掃除に励んでいるからである。
床にモップをかけ、机を雑巾で磨き。それで終わりかと思いきや、家の外に出て、ほうきでサッサと掃き掃除まではじめる。そのほうき、飛行用じゃなくてお掃除用だったのかよ。
「ふぅ。終わった終わった~」
と、モカモカが額にほのかに浮かんだ汗を拭う頃には陽射しがまんべんなく地上に届けられていた。早朝を超えて、ようやく朝の訪れである。
「メプメプ」
「言われなくてもわかってるよ。今日の朝ごはんは少し豪勢にしちゃおうかな~」
「メプ~……」
そうじゃない、休もうって言ったんだよ……とでも言うかのようなメープルの困り顔に献身の化身であるモカモカが気づくことはなく。
手を洗って割烹着をつけると、モカモカは鼻唄交じりに朝食の支度をはじめる。
その過程でまっさきに用意されるのはメープルの朝ごはんである。お皿にこんもりと盛られているのは彼の大好物のナッツ。メープルはモカモカの肩に移動し、頬にすりすりと身体を擦りつけた。
「メプメプッ♪」
「あははっ、くすぐったいよメープル」
メープルがナッツにぱくついている間もモカモカの手は休まらない。オーブンでバゲットを焼き、鍋でミネストローネをあたため、フルーツをカットしてヨーグルトと混ぜる。
……モカモカが言う豪勢な朝食はいつもこの献立じゃないかって? この子の得意料理だしふたりから大絶賛だし楽しそうに調理してるから野暮なこと言わないの。
そして30分後、朝食が完成した。
モカモカは割烹着をつけたまま、寝ついているふたりを起こしにいく。
「お師匠様っ、ギルティアっ、朝だよっ!」
「うぅ、あと30分だけ寝させてください……」
「プリオリ様が起きないなら私も眠るわ」
「も~、ご飯が冷めちゃうよ~! ……あとギルティア、あたしが起きたときからずっと寝たふりしてるってバレてるからね」
「っ! い、今起きたばっかりよ! 勝手なこと言わないでっ!」
「寝言であんなにむにゃむにゃ言ってるのはマンガだけだよ。……まぁギルティアはお師匠様のこと大好きだもんね~。まっ、あたしも負けないくらい大好きだけど!」
「ちょっ、モカモカだけ抱きついて卑怯だわ! 私もぎゅ~ってする!」
「く、苦しいです……。起きます起きますから、ちょっと離れてくれません?」
「大好きのぎゅ~!」
モカモカはプリオリに抱きつき、お師匠様成分を思う存分摂取する。
こうして今日も、プリオリとふたりの弟子と1匹のもふもふの日常がはじまるのだった。




