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150年のりんご採取で異世界最強の大魔導士になった私は、林檎の聖女と讃えられ可愛い弟子たちと平和なスローライフを満喫します!  作者: 風戸輝斗
第三章 そんなこんなで、魔族の皆さんからも聖女と讃えられるようになりました。
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第25話 紫紺のアイテムを探していました。

 お昼を済ませてからも私たちはラスエルツァの観光を続けました。


 ところで私は、観光をあまり楽しめない側の人間だったりします。というのも、常になにかしらのタスクを背負っていて、観光している最中もそれが頭のなかをぐるぐるしていたのが前世での観光の想い出だからです。もはや一生働いてましたよねぇ。


 ですが、今は特にすることもないので観光を思う存分楽しめています。

 それに、


「ギルティアのわたあめひと口ちょうだい!」

「えぇいいわよ。モカモカのクレープもひと口もらっていいかしら?」

「うんっ、いいよ!」


 可愛い弟子もいますしね。

 観光が楽しいというよりは、ふたりと同じ時間を過ごすのが心地良いのでしょう。


 宝石店に立ち止まって物色していたときのことでした。


「その宝石欲しいの?」

「え? まぁそんなところですかね……」


 宝石とギルティアの瞳の色を交互に確認します。……うん、やはりよく似た紫紺の輝きを放っています。


 こっそりとギルティアのイメージに合ったなにかを探していましたが、これがその条件にぴったり合っていそうです。

 モカモカにはリボンをプレゼントしたのでギルティアには……


「たっか!?」

「値段を気にする必要はないわよ。聖女であるプリオリ様にはこの街のものがすべて無償提供されるのだから」


 そのため、私は無賃宿泊、無賃飲食を可能としています。ちなみにラスエルツァの通貨もEP交換で無限入手できますので、まんいち支払いを求められていたとしても、私が金銭問題で苦悩することはありません。EP交換所、チートすぎ。


 私がお金を払うといっても店員さんは認めてくれないでしょう。しかし、この宝石ひとつの価格はとんでもないです。それを無料でいただいてしまうのはさすがに……


「この宝石、ディトゥルクって言うの。私、在り処を知っているからよかったら直接採りにいかない?」

「あ、その手があったか」


 うっかりしていました。名前さえ確認できれば、私はどこにそのアイテムが眠るのか瞬時に特定できるのでした。


 ぴこんと頭の中で音が響きます。早速地図にディトゥルクの場所が記されたようです。


「せっかくの機会だし、なにかプリオリ様にプレゼントしたいと思っていたの。店で買うよりも直接手に入れて渡すほうが付加価値がつくでしょうから、そうさせてくれないかしら?」

「えぇ、構いませんよ」


 こうして私たちは観光を一時中断し、ディトゥルクの採掘に向かうのでした。


 ◇◆◇◆◇


 街を出て、黒馬に乗って高原を駆け抜けます。私とモカモカは二人乗りで、ギルティアはひとり乗りです。


「ギルティアはどうして宝石の場所を知ってるの?」

「幼い頃にお父さまに連れて行ってもらったことがあるからよ。ディトゥルク以外の宝石がどこにあるかはわからないけれど、ディトゥルクだけはどこで採掘できるか知っているわ」


 モカモカの素朴な疑問にギルティアは丁寧に応じます。


 ふむ、向かっている方角が私の地図で点灯している地点と一致しているので、その記憶に相違はないのでしょう。私は最強の地図なので、私がいれば迷うことはありえません。


 黒馬を走らせること20分ほど、私たちは洞窟の前で馬を止めました。どうやらこの洞窟の中にディトゥルクが眠っているようです。


「では行きましょうか」


 ギルティアに先導される形で足を踏み入れます。


 ひんやりした洞窟でした。等間隔で松明が並んでいますが、ここは既に攻略されたダンジョンかなにかなのでしょうか。魔物が襲ってこないかだけが気掛かりです。


 私の懸念に反し、魔物が出現する気配はありませんでした。


 不意に螺旋階段が見えてきます。足音を反響させながらそこを降りていきます。

 すると、ひときわ明るい空間が見えてきました。かんかんと硬質な音が聞こえてきます。


「失礼するわ」


 ギルティアさんが声を投げた先には大勢のトロールがいました。


 ……本物のトロールです。はじめて見ましたが、図鑑で見たものと同じ姿かたちをしているので間違いないでしょう。

 身長は1メートルに満たず、ずんぐりとした体躯をしています。


「どちら様ですか?」

「私はギルティア。エリシュナの娘よ」

「おぉ、ギルちゃんか! 大きくなったねぇ! ……そちらにいるのは人間さん?」


 その瞬間、ドワーフさんの瞳に険が宿ったのを私は見逃しませんでした。争いこそありませんが、魔族の方々は人間をよく思っていないのでしょう。


「えぇそうよ。人間と魔族の争いを止めた林檎の聖女プリオリ様に、その一番弟子のモカモカ。プリオリ様は私の師で、モカモカは私のお友達よ」

「お友達……」


 モカモカが呆気にとられています。思えば、ギルティアはモカモカにとってはじめての友人ですね。

 ドワーフさんから警戒の気配が剥がれました。


「そうかい。なら警戒せんでも良さそうだな。それで遠路はるばる何用かな?」

「ディトゥルクをひとついただきたいの。採掘してもいいかしら?」

「あぁ構わんよ。その代わり魔法は厳禁で頼む。このピッケルで掘り出してな」

「承知したわ。では、ふたりともいきましょうか」


 さらに地下にもぐっていきます。すると、視界いっぱいにパープルブラックの小さな光が散りばめられた空間に出ました。


「きれい……」

「圧巻ですね」


 私とモカモカが立ち尽くしていると、ギルティアは早速ピッケルで採掘に励みはじめました。


 かつんかつんと、しばらくピッケルと岩石のぶつかる音が響きます。不意に音がやみ、ギルティアはへたりと座り込みました。


「これ、めちゃくちゃ、骨の折れる作業だわ……」

「ですよね」


 あっさり掘り出せるものならあれほどの価値がつくはずがありませんから。


 素人目に進捗を確認します。……気のせいでしょうか、傷ひとつついていない気がします。ギルティア、全力で振り下ろしていましたよね?


「諦めて採掘したものをもらいません?」

「いいえ、諦めないわ」


 ギルティアはピッケルを杖にして立ち上がり、かつんかつんとピッケルをぶつけはじめます。響く音は先ほどよりも弱く、これでは発掘まで至らないことは明白でした。


「絶対、自分で採掘してみせるんだから」


 そう口にするギルティアの瞳には決意の炎がたぎっています。


「あたしも手伝うよ!」


 ピッケルを借りてきたモカモカも採掘作業に加担します。ですが、焼け石に水もいいところでしょう。まるで削れている気配がありません。


「私も手伝いたいけどなぁ」


 なにしろ筋力9999ですから、洞窟を破壊しかねません。強すぎることが仇となっていました。


 なにか方法はないかと頭を悩ませつつ地図を確認します。目を皿にしていると、私はひとつだけ湖地点に光があることに気づきました。


 その地点に近づいてみます。浅い川でした。……あ、砂の上で光ってるアレがそれっぽいです。


「ギルティア、モカモカ、この川にディトゥルクのようなものが落ちているので拾って確認していただけませんか?」

「え、ほんと? もしそうなら採掘しなくていいじゃん! すぐに確認するね!」

「川底にあるなんて話は聞いたことがないのだけれど」


 靴を脱いで川に足を踏み入れ、ふたりはすぐにディトゥルクを発見しました。


「あったあった! 街で見たのとおんなじ輝きだ!」

「わ~、すごいです! 自力で宝石入手しちゃいましたね!」

「やったやったっ、すごいねあたしたち!」

「……少し釈然としないけれど、まぁ良しとしましょうか」


 ギルティアは私にディトゥルクを渡してきます


「どうぞ。気に入ってくれるといいのだけれど」

「ありがとうございます。大切にしますね」


 ディトゥルクを所持アイテムの中にしまいます。

 私はブーツを脱ぎ、ふたりと同じように川に足を入れました。


「つめたっ。でも、ひんやりしていて気持ちいいですね」

「いっぱい歩いて疲れたし、ちょっとここで休んでお話しよっ」

「うん、名案です。ギルティアも立ってないでお隣にどうぞ」

「……ふふ、プリオリ様とモカモカと過ごしていたら平和ボケしそうだわ」


 それでいいんですよ。

 こうやっての~んびりと、なんでもない日々を過ごせるのがなによりの幸せなのですから。


 



 


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