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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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7/7

仲間

 翌朝。

 ギルドに集合した俺たち4人はクエストを受注する。

 4人で話し合った結果、未開拓地の森の少し奥に入り、中型のモンスターを討伐するクエストを受注する。先日、森の中で俺に襲いかかってきたモンスターだ。

 なお、今回のように複数のパーティで同じクエストを受けるのは制度上問題ない。

 もっとも、人数が大所帯になりすぎたり、報酬の配分で揉めたりすることがあるため、あまり一般的ではない。

 非常に危険度の高い、巨大モンスターや大規模な盗賊の討伐の際に行われる程度だろう。

 また、クエストの受注条件を全てのパーティが満たしていないといけない。

 過去に、初心者パーティとAランクパーティが共に高難易度のクエストを受け、初心者パーティ側が全滅したことがあったらしく、それ以来厳しくなった。

 ちなみに、ゼフレンさんたちのパーティも俺たちと同じEランクらしいので、何も考えなくていいのは助かる。


 Dランクまでは、達成したクエストの数に応じてランクが上がる仕組みになっている。

 一方、Cランク以上に上がるためには、クエスト達成数を満たした上で昇格試験を受けて合格しなければならない。当然、ランクが上になるほど条件や試験内容が厳しくなる。

 Aランクに至っては、定期的にランク維持のための実技試験を受けなくてはならない。

 パーティメンバーが衰えたり入れ替わったりして実力の落ちたパーティは、容赦なくAランクから落とされる。

 それ以外にも、ギルドの裁量でパーティランクを下げられることもある。

 例えば、1年間のクエスト達成率が低すぎるパーティは容赦なく降格させられる。

 このようにして、上位ランクではパーティの実力を担保しているのだ。



 さて、俺たちは森の少し内側まで歩を進める。といっても、以前あのモンスターと出会った場所より外側だ。

 後で分かったことだが、あの中型モンスターは、もっと奥地に生息するモンスターらしい。

 あの時は小型のモンスターを追いかけてきて、偶然俺たちと遭遇したようだ。つまり、俺たちは運が悪かったのだ。

 結果的にミレナの攻撃適性に気付けたので、ある意味幸運だったといえるが。


「いた」

 さらに森の奥へ進むと、討伐対象のモンスターを2体見つけた。俺たちは草の陰に隠れているため、まだこちらに気付いていない様子だ。

 リリアがモンスターに気付かれないよう、小声で身体強化魔法をかけてくれる。

 ――戦闘開始だ。

 まず、ミレナが不意打ちで1体を攻撃する。モンスターはこちらに気付いていなかったため、急所に攻撃魔法を受けて倒れた。


 すると、もう1体がこちらに気付いて突進してくる。次はゼフレンさんの番だ。

 ゼフレンさんの武器は細身の片手剣だ。

 ゼフレンさんはモンスターの突進を回避すると、即座に背後を取ってモンスターの背中に斬撃を加える。すごいスピードだ。

 その後もモンスターを手玉に取って側面や背後から何度も攻撃を加え、ついにモンスターは力尽きて地面に倒れ伏してしまった。

 そんなゼフレンさんにリリアが駆け寄る。所々にかすり傷を負っていたようで、リリアが回復魔法で治療する。

 二人が淡い緑色の光に包まれ、あっという間にゼフレンさんの傷が癒えていく。リリアの回復魔法も見事だ。

 というより、ゼフレンさんとリリアはEランクパーティなのが不思議なほどの逸材だ。彼らの実力は、Bランクパーティのメンバーと比較しても遜色ないだろう。

 俺も負けられないと闘志を燃やすのだった。


 その後も昼過ぎまで討伐を続けた結果、クエスト達成に必要な討伐数を上回った。

 俺とゼフレンさんが手分けしてモンスターを解体して、素材を入手する。

 このモンスターは毛皮と爪と肉が素材になっており、冒険者ギルドに持ち帰ると買い取ってもらえる。

 討伐数を証明出来れば素材は置いて帰っても問題ないが、これも収入源の一つなので出来る限り持って帰ることにする。

「ねえグレイン、ご飯にしない?」

 モンスターを解体していると、ミレナが話しかけてくる。

 ミレナが昼食を食べたがるのは珍しいな。いつもは夕方、街に戻るまで何も食べていないが……。

 そこまで考えてから気付く。恐らくゼフレンさんやリリアと一緒に食事をして仲を深めたいのだろう。また、戦闘であまりいい所が無かった俺に、名誉挽回の機会をくれるのだろう。

 こういうところ、本当にずるい。


 ゼフレンさんたちに食事の提案をすると、快く賛同してくれた。ゼフレンさんが火を起こしてくれるそうなので、お言葉に甘えることにする。

 料理を担当するのは俺だ。

 手元にある食材は、入手したばかりの肉と日持ちする調味料、それからパンだ。パンは今朝、ミレナが街で購入してくれていた。本当に準備がいい。

 この食材だと簡単なものしか作れないため、ジビエドッグとスープを作ることにする。

 レオディスのパーティにいた頃は、ガルドに教えてもらいながら一緒に作っていた。下ごしらえや味付けなどもガルドに仕込まれている。


 30分ほどで料理が完成する。料理は久しぶりなので、少し手際が悪くなっていたように感じる。

 とはいえ、味見をした限りおいしくできたと思うので、みんなの口に合えばいいが……。

 料理を取り分けてみんなで食べる。

「おいしい!」

「うん、おいしい。グレイン君は凄いね」

 真っ先に感想をくれたのはリリアだった。それに続いてゼフレンさんからも賞賛される。

 やはり『おいしい』と言ってもらえるのは凄く嬉しいものだ。それだけで疲れが溶けて無くなっていくのを感じる。

 ミレナを見ると、満足そうに目を閉じて『うんうん』と頷いていた。こちらも問題なさそうだ。

 彼らの反応を見て、調味料や日持ちする食材を取り揃えておこうと思うのだった。



 俺たちは食事と片付けを終えるとレイヴェルクに戻り、ギルドの窓口でクエストの結果を報告して、集めた素材も買い取ってもらった。

 その後、4人で膝を突き合わせて話し合う。

「ゼフレンさん、リリア。今日は本当にありがとうございました。俺としてはぜひ二人と一緒に冒険できればと思います。ただ正直なところ、二人ならばもっと上のランクのパーティでも引く手あまただと思うんですが、本当にウチのパーティでいいんですか?」

 俺は正直な気持ちを打ち明ける。ミレナも頷いているので、同じことを思っていたらしい。

 俺の言葉に、ゼフレンさんは優しい口調で答える。

「グレイン君。そう思ってくれたんだね。ありがとう。僕たちも、君たちと一緒に冒険したいという気持ちは変わっていないよ。だよね、リリア」

「うん!」

 リリアが元気良く頷く。二人が本心からそう思ってくれているのが伝わってきて、心が温かくなる。

「その上で、なぜ君たちのパーティなのかについてだね。まず、上級のパーティでメンバーを二人募集しているパーティはほとんど無い。有っても僕たちと役職が被っていて、活躍が見込めないんだ」

「そうだったんですね」

 知らなかった。よく考えると、この街に来てからメンバー募集の掲示板を見たことがなかった。

 この二人は本当の兄妹、いやそれ以上に仲が良い。だから別々のパーティに入るのはあり得ないし、二人が共に活躍できるパーティでなければ、入る意味がないのだろう。

「そして何より、君たちのパーティだからこそ、僕たちは入りたいと思ったんだ」

「俺たちのパーティだから?」

「うん。僕は幼少期の頃から同世代や年下の子に怖がられることが多かった。それは今でも変わらず、宿の食堂や街中で、初対面の人に話しかけても怖がられてばかりだ。だけど、君は違った。食堂で相席を頼んだ僕のことを怖がらず、普通に接してくれた」

「あたしも。お兄ちゃんに貰った髪留めを落としてから、3日間街の中を探し続けたの。街の人で探すのを手伝ってくれる人はいたけど、他の冒険者は誰も手伝ってくれなかった。そんな時、グレインが手伝ってくれたの」

 そうだったのか。どちらも俺としては何気ない行動だったが、二人にとっては特別なことだったのか。

「それにね、僕は君たちがこれから強くなると思っている。確かに今はEランクのパーティかもしれない。だけど君たちが道を(たが)えなければ、いずれAランクに到達すると思っている。だから改めて言わせてくれ。僕とリリアを君たちのパーティに入れて欲しい」

 凄く嬉しい。思わず泣きだしてしまいそうなのを(こら)えながら返事する。

「お二人の加入を歓迎します。これからよろしくお願いします」



 夕方の冒険者ギルド。冒険者たちの姿はまばらで、職員たちは書類作業に追われている。時折入ってくる冒険者たちからは、安堵(あんど)と充実感がにじみ出ている。

 そんなギルドの中で、俺はミレナと二人で並んで座っていた。

 ゼフレンさんとリリアはパーティの解散と、俺たちのパーティへの加入を申請するために窓口へと向かった。

「ありがとう、グレイン」

 ミレナが前を向いたまま、俺に話しかけてくる。俺も前を向いたまま会話を続ける。

「どうしたの? 急に」

「私ね、レオディスのパーティを追放されて、目の前が真っ暗になったの。世界一の魔法使いになるっていうお父さんとの約束であり、私の夢。それが叶わなくなったと思ったんだ。そしたら、これからどう生きていけばいいか分からなくなっちゃって……」

「……」

「でもね、あなたはそんな私を見捨てなかった。レオディスのパーティを抜けてでも、私に付いてきてくれた。この街で待ってるって言ってくれた。おかげで私はまた戻ってこられた。そして、初めて水魔法でモンスターを倒したあの日、私の夢へと至る道がもう一度見えた。だから、あなたにお礼を言いたかったの」

 ミレナの言葉を聴いて衝撃を受け、返答に(きゅう)する。そんな俺をよそにミレナは立ち上がると、そのままリリアたちの方に駆けていく。

「俺の方こそ、きみに救われてばかりだ」

 やっとの思いで絞り出した言葉は、誰の耳に入ることもなく消えていった。


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