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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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6/7

出会い

 俺たちのパーティがEランクに上がってから数日が経った。

 この数日は毎日クエストを受けていたが、今日は休みにした。

 ミレナはこの街に来てから毎日のように冒険に出ていたので、彼女の疲労を考慮して俺から休みを提案したのだ。

 ミレナは少し不満そうだったが、何とか同意してくれた。


 そんな訳で、今日は冒険ではなく街へ出た。

 街で武具や防具を見て回るうちに日が暮れてきたので、今は宿に戻って夕食を採っている。

 今日はいつもより客が多く、店内はごった返していた。

「失礼、相席しても良いだろうか?」

 顔を上げると、20歳前後の若い男が目の前に立っていた。

 男は目鼻立ちが整っていて少し色白。肩ぐらいまで伸びた黒髪を後ろで束ねている。

 身体はやや細身だが長身で、背丈は185cmぐらいだろうか。武骨でありながら(もろ)さも感じる雰囲気の男性だ。

「構いませんよ。どうぞ」

「では失礼させていただく」

 この宿で相席になったのは初めてだが、別に珍しいことではない。

 王都では何度も経験していたので慣れている。俺は特に気にすることもなく食事を続ける。


「なあ、君」

「ん? 呼びましたか?」

「すまない。僕はゼフレンと言う者だ。最近この街に来たばかりなんだ。以後よろしく頼む」

 相席した他の冒険者と、世間話をしたり情報を交換したりすることは珍しくない。

 だが、なんとなく目の前の男性は寡黙(かもく)で口下手な印象を受けたので、お互いに無言で食事を採ることになるだろうと思っていた。

 それだけに、相手から話しかけてくるのは予想外だった。

 驚きを顔に出さないように気を付けながら会話を続ける。

「初めまして、グレインです。よろしくお願いします。……ゼフレンさんもこの宿に泊まっているんですか?」

「ああ、そうだ。もう一人、僕の幼馴染もこの宿に泊まっているから、良ければ仲良くしてあげて欲しい。その子は17歳だから、君と同じぐらいだと思う」

「17歳ということは俺と同い年ですね。分かりました」

 その後もゼフレンさんとは付近のモンスターについて情報を交換した。

 最初は寡黙(かもく)な印象だったが、意外と話しやすい人だった。



 それから数日間、昼はクエストを受けて、夜はゼフレンさんと食事をしながら情報を交換する日々が続いた。

 ゼフレンさんの幼馴染は、周囲の飲食店を巡っておいしい店を探しているらしい。なので、幼馴染さんとはまだ会っていない。

 俺もゼフレンさんにミレナを紹介していないので、人のことは言えないが……。



 次の日の夕方。

 クエストを終えて宿に戻ると、女の子が宿の周辺で探し物をしていた。小動物がぴょこぴょこと動き回っているような動きをしている。

 俺より少し年下だろうか。どこか幼さを感じる顔立ちに、ぱっちりと大きな瞳。

 セミロングほどの長さの、夕焼けを浴びてきらきらと輝くホワイトブロンドの髪。

 背丈は150cmほどだろうか。服装は町娘と同じような格好なので、冒険者かどうかは分からない。

「こんにちは、何か探し物ですか?」

「えっと、……こんにちは。お兄ちゃんに貰った髪留めをどこかに落としてしまって……」

「よければ手伝いますよ。心当たりはありますか?」

「ありがとうございます。最後に着けたのが3日前で、その日は街に買い物に行きました。宿に帰ってから髪留めがないことに気付いたんです」

 それから彼女に髪留めの特徴と3日前に行った店を訊く。

 手分けして探す方が早く見つかると思い、俺は彼女と別れてその店を順に当たってみることにした。だが、どの店の店員に訊いても髪留めは見ていないという。

 最後の店を出た俺は肩を落とす。すると、俯いた視界の中、店先にある花壇にピンク色の髪留めが落ちているのを見つける。

「これだ」

 俺はその髪留めを拾い上げると、宿へと急いだ。


 宿に戻ると、女の子はまだ髪留めを探していた。俺は女の子に、拾った髪留めを見せる。

「君の髪留め、これであってるかな?」

「はい! これです! 本当にありがとうございます!」

 女の子は興奮した様子で、目尻には安堵の涙が浮かんでいた。

 俺は女の子に髪留めを手渡す。

 よほど大切なものだったのだろう、女の子は髪留めを胸に抱いたまま動かなくなってしまった。

 喜びに浸る彼女に水を差さないよう、小さな声で「よかったね。じゃあ」と告げ、宿に入った。



 翌朝。

 ミレナと合流すると、どのクエストを受けるかについて話し合う。

 最近、『ミレナがどのクエストを受けたい気分なのか』が何となく分かるようになってきた。今日は薬草採集の気分と見た。

「ミレナ、今日は薬草採集かな?」

「そうだね、じゃあ――」

「おはようございます! やっと見つけました。何で昨日あたしを置いて行っちゃったんですか!」

 ミレナと話していると、横から声がかかる。

 ふとそちらを見ると、昨日髪留めを探していた女の子が立っていた。今日の彼女は冒険者、それも魔法使いと分かる服装をしている。

 隣にいるミレナはきょとんとした顔でこちらを見ている。

「違うんだ、ミレナ。これには事情があって」

「何を言ってるの?」

 何も悪いことはしていないのだが、何となく後ろめたさを感じて思わず弁明してしまう。

「昨日は本当にありがとうございました! あっ、自己紹介がまだでしたね。あたしはリリアと言います。よろしくお願いします」

 そう言って女の子――リリアは深々とお辞儀をする。昨日も思ったが、本当に元気な子だなぁ。

「俺はグレインです。よろしく」

「私はミレナです。よろしくね」

 お互いに自己紹介を済ませたところで、昨日の顛末(てんまつ)をミレナに説明する。

 一通り説明し終わったところで、リリアが目を輝かせて尋ねてくる。

「お二人は同じパーティなんですか?」

「そうだよ。二人しかいないしランクもEだけどね」

「そうなんですね、わかりました。ではまたお会いしましょう!」

 そう言い残して走り去るリリア。嵐のような子だったな……。ん、また?

 引っかかりを覚えつつ、ミレナに声をかける。

「元気な子だったね。そういえば今日は薬草採集だったよね」

「……やっぱりモンスター討伐がいい」

 あれ?


 その日の夕方。

 クエストを終えた俺たちはギルドに到着する。今日のミレナはいつもに増して凄まじかった。

 その一方、俺は片手で数えられるほどしかモンスターを倒していない。

 最近、戦闘において俺はほとんど役に立てていない。ミレナを護るためにあまり前に出ないようにしているのだが、モンスターが俺の攻撃範囲に来る前にミレナが倒してしまうのだ。

「こうなると、戦闘以外ももっと頑張らないと」

 と、ミレナに聞こえないように呟く。

 ミレナが攻撃を担当してくれているので、俺は壁役などに回る方が良いバランスになるかもしれない。そんなことを考えながらクエストの報告を済ませる。


 ギルドの出口に向かう途中で見知った顔を見つける。ゼフレンさんとリリアだ。

 二人が一緒にいるということは『幼馴染』と『お兄ちゃん』って、もしかして……?

 二人はこちらの用件が済むまで待っていてくれたようだ。

「やあ、グレイン君。また会ったね」

「ゼフレンさん、こんにちは」

 俺がゼフレンさんと挨拶を交わしていると、服の後ろを引っ張られる感覚を覚える。

 ちらりとミレナの方を見ると、『誰?』と訊きたげな目をしている。俺はハッとしてゼフレンさんにミレナを紹介する

「ゼフレンさん、紹介します。彼女は俺とパーティを組んでいるミレナです」

「ミレナです。よろしくお願いします」

「おっと、そうだったね。僕はゼフレン。で、こっちが――」

「お兄ちゃん、あたしと二人はもう友達だよ?」

 リリアの言葉にゼフレンさんが混乱した様子を見せる。なので、これまでの経緯をゼフレンさんに説明した。


「そうか、リリアの髪留めを見つけてくれたのはグレイン君だったのか。僕からも礼を言わせて欲しい、本当にありがとう」

「いえいえ、当然のことをしたまでです。それにしても、ゼフレンさんの幼馴染がリリアだったとは驚きました」

「僕もリリアと君たちが知り合いだったとは思わなかったよ。そうだ、リリアから聴いたのだが、君たちのパーティは二人で活動しているんだよね?」

「はい。メンバーを募集しているのですが、全然応募がなくて……」

「良ければ、僕とリリアを君たちのパーティに入れてくれないかな?」

「お兄ちゃん!」

 リリアがキラキラとした目でゼフレンを見ている。リリアはこのことについて賛成のようだ。

 次にミレナを見る。ミレナは驚いた表情をしているが、嫌がっている様子はない。

 俺もパーティのメンバーが増えることは歓迎なので受け入れたい。問題は二人の実力と役割についてだが……。

「ゼフレンさんとリリアの役職を教えていただけますか?」

「そうだね。僕は剣士で、どちらかと言うと攻撃寄りの戦闘スタイルだ」

「あたしは魔法使い。回復魔法が得意なんだ。支援魔法もちょっとだけなら出来るよ」

 なるほど。俺とゼフレンさんの役割が近いが、何とかなるだろう。

 いざとなれば俺が役割を変えれば良い。こういう時のための器用貧乏だ。

 俺が心の中で自虐している間に、ゼフレンさんが何かを思いついたようだ。

「いきなりパーティに入れろと言っても決められないだろうし、良ければ明日、この4人で試しにクエストを受けてみないかい?」

 確かにそれが良いかもしれない。ミレナの方を見ると、彼女はこちらを向いて頷く。

「分かりました。それでお願いします」

 こうして明日、俺たちは4人でクエストを受ける事になった。


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