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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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4/7

適性①

 俺がレイヴェルクに到着してから半月ほど経った。

 この街に来てから何度か未開拓地調査のクエストを受け、未開拓地のモンスターとも戦った。

 それで分かったことだが、未開拓地のモンスターは俺の想像以上に強かった。意外に防御力が高く、なかなかダメージが通らないのだ。

 効率良くモンスターを倒すためにも、武器を変えるか、攻撃力の高い冒険者とパーティを組むか。俺はギルドで考え込んでいた。


「グレイン、久しぶり」

 そのとき急に声がかかった。驚いて顔を上げると、そこにはミレナの姿があった。

 また再会できた嬉しさに、思わず目頭が熱くなる。

 俺は、声が震えないように気を付けながら返事する。

「ミレナ、久しぶりだね。ゆっくり休めた?」

「うん。でも、いつまでも落ち込んでいられないから。……家でね、お父さんとの約束を思い出したんだ。世界一の魔法使いになるっていう約束」

 ミレナの目には力強い光が宿っている。本当に真っすぐで強い女の子だ。

「そうだったのか。話してくれてありがとう。これからどうするの?」

「私もこの街を拠点にして、冒険者を続けようと思ってる」

「そっか」

 二人の間に沈黙が流れ、俺の心臓が早鐘を打ち始める。

 俺は姿勢を正して小さく咳払いをすると、彼女に問いかける。その声は自分でも驚くほど震えていた。

「もし、ミレナが良ければ俺とパーティを組んでくれませんか?」

「うん。喜んで」

 その返事を聞いて、心の中で大きくガッツポーズする。

 彼女が父親との約束を果たせる日まで、隣で支え続ける。そう心に誓うのだった。



「そっか。このあたりのモンスターってそんなに手強(てごわ)いんだ」

「うん。俺の攻撃力だと全然足りないみたいだ」

 俺はミレナに未開拓地のモンスターについて説明する。

 本当は『一撃で倒せる』と言えれば良かったのだが、半月程度ではそこまで成長できるはずがなかった。

 実のところ、ミレナと再会するのはもっと先になると思っていたのは内緒だ。

「じゃあ、私が支援魔法でサポートしたらどうかな? 身体強化で攻撃力を上げれば戦闘が楽になると思うんだけど」

「確かにいいアイディアかもしれない。ミレナさえよければ明日にでも試してみる?」

「うん。大丈夫だよ」

 こうして俺たちは、未開拓地に向かうことを決めた。

 二人だけで冒険に出るのは初めてで、俺は言葉にできないほどの高揚感に包まれていた。



 翌朝。

 俺とミレナは準備を整えて未開拓地に来ていた。

 未開拓地には俺が苦戦したモンスターだけでなく、未知のモンスターもいるはずなので油断は禁物だ。何かあったらミレナだけでも逃がさないと。

「じゃあ身体強化いくよ」

「ありがとう。よろしく」

 ミレナが身体強化の魔法をかけてくれる。

 レオディスに酷評されたミレナの支援魔法だが、身体強化魔法に関してはそれほど悪くない。俺は平均的だと思っている。

 一方、敵への妨害魔法については初心者レベルで、練習しても一年間ほとんど上達しなかった。レオディスはそれが気に食わなかったのだろう。

 俺は、支援魔法の効果を確かめるために一度剣を振ってみる。

 うん。昨日までに比べて剣が軽く感じるし、剣速も上がっている。これならある程度戦えそうだ。



「ふう。……しばらく休憩しようか」

「うん。そうだね」

 モンスターを数体倒してから、俺はミレナに休憩を提案する。

 俺たちは未開拓地に入ってすぐの森の中に居る。

 この周辺は小型のモンスターが多く、身体強化があれば攻撃の通りも良い。

 それでも半分以上は一撃で倒せなかった。やっぱり攻撃力が足りないなぁ。

「ねえグレイン、もう少し奥まで行ってみない?」

「奥まで? 今の俺たちだと少し危険じゃないかな」

「ほんの少しだけだよ。それぐらいなら大きなモンスターも出てこないだろうし」

 一般的にモンスターは森の奥に行くほど大きく、強くなると言われている。しかし、ミレナの言う通り、少し奥に行った程度で劇的に変わったことはない。

 あくまで俺の経験上の話だが……。

「分かった、行ってみよう。そのかわり、危ないと思ったらすぐに戻るよ」

「うん!」

 こうして、俺たちは森の奥に向けて歩を進めた。



 奥に移動してから1時間ほど経っただろうか。

 俺たちは、森の中の少し開けた場所にいた。広さ5mほどの円形の空間だ。

 この空間の中央付近は林冠(りんかん)が途切れており、そこから太陽の光が差し込んでいる。その光がこの空間全体を柔らかく照らしているため、明るく見通しが良い。

 ここに来るまでの間に小型モンスターを数体倒したが、いずれも森の入り口周辺と比べて若干強い程度であった。


 ――カサカサッ

 音のした方に目を向けると、ちょうどこの空間内に小型のモンスターが入ってきたところだった。

 そのモンスターは右前方2mぐらいの場所から現れ、俺の正面まで走ったところでこちらに気付くと、急に向きを変えて奥に向かって駆け出した。

 背中がガラ空きで隙だらけだ!

 俺は反射的に後を追い、走りながらモンスターの背中に攻撃を繰り出す。その瞬間。

 ――ガサガサガサッ

 先程より明らかに大きな物音が右後方から聞こえた。マズい!

「グレイン、後ろ!」

 ミレナが慌てた様子で叫んでいる。俺は攻撃直後の体勢から足を踏ん張り、振り返ろうとする。だが。

 ――ズルッ

 踏ん張り切れずに足が滑る。体勢を崩した俺はそのままうつ伏せに転倒し、衝撃で剣を取り落としてしまう。

「グレイン!」

 ミレナの声にハッとして顔を上げる。すると、目の前で体長1.5mぐらいのモンスターが前脚を振り上げていた。振り上げた前脚には刃物のように鋭利な爪が生えている。

 あれをまともに受けると間違いなく死ぬ。

 遠くでミレナが何かを叫んでいる声が聞こえる。魔法かもしれない。それならば回避する隙ができるかも。

 とっさにそう考えた俺は、必死に身体をひねって横に転がる。

 直後、目の前のモンスターが咆哮し、そのまま前に倒れ込んでくる。そして、俺のすぐ隣に横たわった。

 俺は慌てて飛び起きる。そして震える手でなんとか剣を拾い上げると、すぐにモンスターに向けて構えた。

「はあっはあっ、……ん?」

 だがモンスターは一向に起き上がらない。俺が聞いたモンスターの咆哮、あれが断末魔だったと気付くのに時間はかからなかった。


 俺はモンスターが絶命したのを確認して、ミレナのもとに向かう。

「グレイン、大丈夫だった?」

「本当にありがとう、助かったよ。立てる?」

「ごめん。腰が抜けちゃって……」

 よほどショックだったのだろう。ミレナはぺたんと座り込み、目に涙を浮かべて小さく震えていた。

 俺はミレナの横に腰を下ろし、彼女が落ち着くまで隣にいるのだった。



 それからしばらくして、ミレナが落ち着いたのを見計らって立ち上がる。

 これ以上冒険を続ける気力もないので、二人肩を並べて街に向かって歩く。

 帰路に就く途中、俺はミレナに気になっていたことを尋ねた。

「そういえば、さっきのモンスターってミレナが倒したんだよね。どうやって倒したの?」

「攻撃魔法を使ったの」

「攻撃魔法? ミレナって攻撃魔法使えたんだ」

「失礼な。……と言いたいところだけど、私も使えることを忘れてた。あの時はグレインがピンチでパニックになってたんだけど、顔周辺に攻撃魔法を当てれば怯むかもしれないって急に閃いたの」

「そうだったのか。それにしてもすごい威力だったな」

 ミレナは怯ませる目的で攻撃したようだが、攻撃はモンスターの頭部を貫通していた。

 いくら急所とはいえ、あの大きさのモンスターを一撃で仕留めるということは、ミレナの魔法攻撃力はかなり高いのかもしれない。そう考えながら街へと歩を進めるのだった。


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