決闘後①
フィルザードとの決闘から数日が過ぎた。
あの日、ミレナが泣き止んでから仲間のもとに戻った俺は、二人から安堵の表情で迎えられた。
「グレイン、勝ってくれてホントに良かった。どうなることかと思ったよ」
リリアは目に涙を溜めていた。もし俺が負けていれば、彼女は親友のミレナと別れることになっていたのだから当然だ。冷静に考えると軽率なことをしたと思う。
決闘の翌日、リリアとゼフレンにも謝罪した。二人は『二度とこんなことが無いように』と釘を刺しながらも謝罪を受け容れてくれた。
『決闘を見た』と言う冒険者や住民に話しかけられるなど、反響の大きさにも驚いている。
決闘から数日経ったが、俺に向けられる視線は減らない。
「相変わらず視線を感じるなあ」
「時の人って感じだね。グレイン、他のパーティに移っちゃダメだからね?」
リリアがニヤニヤしながらそんなことを言ってくる。
「分かってるよ」
俺が移籍したら何のために決闘を受けたのか分からなくなる。
この数日間に何度かパーティ移籍の誘いを受けたが、当然全て断った。
「あのフィルザードに勝ったんだから、注目を集めるのは当然だ。だけど、早い奴は緊急クエストの時点でグレインの能力に気付いていたよ」
「えっ? そうなんですか?」
マジで? 全然気付かなかった。注目されるような要素あったかな?
「僕も後で知ったんだが、緊急クエストで前線から一度も下がらなかった冒険者は数えるほどだった。しかも、Aランク以外の冒険者に限ると、グレインだけだったみたいだ」
「それは両隣の冒険者に助けてもらったからですよ」
俺の攻撃力ではモンスターを倒すのに時間がかかりすぎたので、攻撃は両隣の冒険者にお願いした。
彼らがモンスターを倒してくれたから俺は防御に専念でき、戦線を維持できたのだ。
「その両隣の冒険者が『アイツは凄い奴だ』って広めたらしいよ」
「ええ!?」
「そうなの!? グレイン、凄いね。適性を探して迷走してたのがウソみたい」
「うっ」
……痛いところを突いてくる。しかし、適性を見極めるだけでこんなに人生が変わるとはなあ。
「そうだね。キミの重戦士としての才能はこの街の冒険者の中でも屈指のものだ。ボクが保証するよ」
「うわっ! いつの間に!」
気付けば隣でフィルザードが腕を組んで『うんうん』と頷いている。
あの決闘の後、フィルザードは隙があれば絡んでくるようになった。
「……ミレナには近付かない約束では?」
「今はまだ来ていないからセーフだよね? それに、ボクはミレナではなく、キミに近付いているのだからミレナが居てもセーフだよ」
何という屁理屈だ。まあ、ミレナを引き抜こうという意思は無くなったみたいなので、あまり邪険にする必要はないか。
「これはまさか、グレインを取り合う三角関係!? しかも片方は禁断の恋!?」
「リリア、違うと思うよ」
真っ青な顔で震えるリリアを見てゼフレンが呆れている。俺もそれは勘弁してほしい。
「ミレナさん、そろそろ機嫌を直してもらえませんか?」
「……」
俺の懇願に対して、ミレナはぷいっとそっぽを向く。
決闘のあと泣き出してしまったミレナだが、泣き止んだ後は口を利いてくれなくなった。それに、目も合わせてくれない。
彼女からは『怒っています』という雰囲気が出ている。まだ勝手に決闘を受けたことを許してくれていないみたいだ。
冷静に考えると、俺の行動はただの暴走だった。
受けなくてもいい決闘を受けて、その結果ミレナと離れ離れになる可能性も高かった。
ミレナからすると、意思に反して移籍させられる可能性があったわけだから怒るのも当然だ。
俺はミレナが許してくれるまで、毎日のように謝り続けるのだった。
いつも拙作をお読みくださり、ありがとうございます。
今日は文字数と展開の都合上、続けてもう1話投稿いたします。
投稿時間は12:10を予定していますので、そちらもお読みいただけると幸いです。




