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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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グレインの過去①

 今からおよそ1年前。

 俺は王都の冒険者ギルドで、新しく加入したパーティのメンバーとの顔合わせに臨んでいた。

「初めまして、グレインと申します。いろいろと至らぬところがあると思いますが、よろしくお願いします!」

 最初に俺が挨拶すると、所属しているメンバーたちが次々と自己紹介してくれる。

 そして、最後にミレナの番がやってきた。

「初めまして、私はミレナです。あなたとは同い年ぐらいかな? これからよろしくお願いします!」

「俺は16歳です。ミレナさんは?」

「私も16歳だから同い年だね。私のことはミレナで良いよ」

「ありがとう、ミレナ。じゃあ俺のこともグレインで」

「うん! グレイン、よろしくね」

 ミレナはニコッと笑う。とても可愛らしい笑顔だった。



 俺がパーティに加入してから10日ほど経った。

 最初は覚えることも多くて大変だったが徐々に慣れてきたし、パーティのみんなの性格も大体分かってきた。


 この日も大きなトラブルもなくクエストを終える。

「今日もお疲れ様。これで解散だ。また明日な」

 リーダーのレオディスの号令とともに空気が弛緩(しかん)する。

 少しだけ雑談した後、レオディスとカナリスは二人一緒に、ガルドとミレナはそれぞれ一人で帰っていった。

 今日はクエストが早く終わったので、門限まであと2時間ぐらいある。

 早くチームの戦力になるために、城門の外で鍛錬することにした。


 城門の外に出ると、そこには3人の冒険者がいた。3人とも剣士のようで、一人は黙々と剣を振り、残りの二人は木製の剣で模擬戦をしていた。

 俺は3人から少し離れたところで素振りを始める。正しいフォームと剣の軌道を意識しながら、何度も何度も剣を振る。


「ふう。今日はこれぐらいにするか」

 素振りを初めて2時間近く経っただろうか。いつの間にか太陽が沈み始めている。

 俺より前に来て鍛錬していた冒険者たちは既に居なくなっていた。


「ん?」

 帰ろうとしたとき、誰かの声が聞こえたような気がした。

「どこだ?」

 周囲を見回すが、誰もいない。気のせいだったのだろうか。

「違う、また聞こえた」

 どうやら城壁の角を曲がった先に誰かが居るみたいだ。俺がここに来てから誰も目の前を通っていないので、俺より先に来ていた冒険者が他にも居たらしい。

 また声が聞こえてくる。……この声、聞き覚えがあるような?


 俺は城壁沿いに歩いて声のする方へ向かい、角の手前で立ち止まる。そして、顔だけを出して角を曲がった先をのぞく。

 そこに居たのはミレナだった。彼女は真剣な表情で魔法を練習している。……あれは身体強化魔法だろうか。

「そういえば、昨日レオディスに『お前の身体強化魔法は効果が無い』って言われてたな」

 リーダーのレオディスは熱血漢で悪い男ではないのだが、自分にも他人にも厳しい面がある。また、口調が強いので他人に厳しい言葉をかけて委縮させてしまうことが多い。


 俺はパーティに入ったばかりだから、まだ何も言われていない。しかし、ミレナは時々厳しい言葉をかけられていた。

 その一つが先ほどの言葉だ。レオディスにそう言われてミレナはショックを受けていた。

 確かにミレナの身体強化魔法はまだ初心者レベルだが、もう少し言い方というものがあるんじゃないかと思う。


「……俺ももう少しだけやっていくか」

 ミレナに触発されて再びやる気に火がつく。その後、門限の10分前ぐらいまで素振りをしてから宿に戻った。



 俺がパーティに加入してから約1か月が過ぎた。

 最近は受けるクエストの難易度を上げたようで、街に戻って反省会を終えるころには門限のギリギリになっていることが多い。

 なのであの日以降、街で素振りすることがなくなった。


 ――ミレナはあれからも毎日練習しているのかな? 

 ふと気になったので、城門の外にこっそりと様子を見に行くことにした。

 ちなみに、今日もクエストに時間がかかったため、門限まで15分ほどしか残っていない。

 辺りも少し薄暗くなってきている。


「ミレナ、今日も居るのかな?」

 前にミレナの姿を見た場所と同じ、城壁の角の手前に立って気付かれないようにのぞき込む。

 そこにはやはりミレナが居た。鬼気迫る表情で身体強化魔法を練習している。

 何度も何度も、魔法を唱えては納得いかないというように顔をしかめる。

「ミレナ、がんばれ!」

 いつの間にか俺は強く手を握り、小さな声で彼女を応援していた。

 ――ゴーン、ゴーン

 街の中から門限の5分前を知らせる鐘が鳴った、その瞬間。

「あっ!」

 ミレナが歓喜の声をあげ、彼女の身体が淡く輝く。

 遠目に見ても、今までの身体強化魔法より遥かに強力になっているのが分かる。

 ミレナはもう一度、自身に身体強化魔法をかけなおす。すると、先ほどと同じように彼女の身体が美しく輝いた。たぶん感覚を掴めたんだろう。

「やった!」

 ミレナは花が咲いたように笑う。そんな彼女の横顔は、魔法の輝きも相まって幻想的だった。


 まもなく城門が閉まるので、ミレナもそろそろ帰る頃合いだ。

 俺は彼女に見つかる前にその場を離れ、宿に向かって歩く。

 その間、心臓が鐘より大きな音で鳴っていた。



 ミレナが魔法を練習している姿を目撃してから半月ほど経った。

 ミレナの身体強化魔法は格段に効果が上がっており、クエストの効率も見違えるほど良くなった。

 レオディスも満足したようで、彼女のことを手放しに褒め称えていた。


 今はクエストを終えて今日の反省会を行っている。スムーズにクエストを達成してレオディスが上機嫌なので、今日の反省会も平和に終わりそうだ。

「そう言えばミレナ、妨害魔法は使えるか?」

 今日の反省が終わり、今後の話を始めたところでレオディスがミレナに尋ねる。

「妨害魔法……ですか? ほとんど使えません」

 ミレナが首をすくめて申し訳なさそうに答える。

 レオディスは特に怒っている様子もない。彼の予想通りだったのだろう。


「そうか……。今後、もっと難易度の高いクエストも受けたいんだ。妨害魔法があれば効率良くクリアできるから、ミレナにお願いしたくてな」

 レオディスは『できるか?』という目でミレナを見つめる。

 すると、彼の横でカナリスがおずおずと手を挙げる。

「あの、レオディス? 妨害魔法ならそれなりに使えるから、私が担当するよ?」

「いや、カナリスには攻撃に集中してほしいんだ。せっかく魔法使いが二人いるんだから、役割を分担したほうが良いだろう?」

 カナリスがしゅんとした顔になる。レオディスの言っていることは正論なのだが、カナリスの気持ちに気付いてあげてほしい。


「なあレオディス、ミレナにも攻撃を担当してもらうってのはどうだ? で、身体強化はミレナ、妨害はカナリスで分担すれば負担が偏ることも無いだろう」

 今度はガルドが別の案を出す。ミレナの攻撃魔法次第だが、面白い案だと思う。

 だが、レオディスは首を横に振る。

「あれこれ手を出すより、カナリスは攻撃、ミレナは支援に専念するほうが効果的だ」

 レオディスが自分の考えを変えることは無さそうだ。

 ガルドもそれを感じたようで、腕を組んで『仕方ない』と言うように一つ息を吐く。

「じゃあレオディスの案でいくか」

 ガルドが同意したことで異を唱える者は居なくなり、レオディスは満足したように頷く。

「決まりだな。じゃあミレナ、妨害魔法も頼むぞ」

「ミレナちゃん、私も手伝うからね。分からないことがあれば何でも聞いてね」

「はい! 頑張ります」

 ミレナは意外に乗り気のようで、両手を胸の前に構えて意気込んだ。


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