幕間 女子会
盗賊討伐から数日が経った。今日はオフの日だ。
本当は冒険に出る予定だったが、カティア様から『女子会するから来てね♡』と呼び出されたので、急遽休みになった。
あたしは待ち合わせ場所である、街の広場にいる。
ここはレイヴェルクの中心地で、いつも人で賑わっている。広場の中心には噴水があり、いつでも勢いよく水が噴き出している。
お祭りや何かの記念日には露店や屋台が出ることもあるらしい。
広場の北東には時計塔があり、門限や時刻を知らせる鐘はここでついている。時計塔の隣にはお花屋さんがあり、いつも綺麗な花が売られている。
ちなみに、冒険者ギルドはこの広場に面していて、南西に位置している。ギルドの中が静かだと、広場の喧騒が聞こえてきてちょっと楽しい。
「リリア、おはよう」
ここに着いてから5分もしないうちにミレナがやって来た。
ミレナの私服はレイヴェルクの女の子たちの間で流行している服で、どちらかというと控えめなデザインだ。
だけどミレナが着ることで、彼女の素材の良さが引き立っている。
ミレナの姿を見ていると、左手にブレスレットを着けていることに気が付いた。グレインが彼女に贈ったものだ。
「そのブレスレット、似合ってるね」
「ありがとう」
ミレナは少し頬を染め、嬉しそうな顔をする。その顔を見ると、ちょっと意地悪なことを言いたくなる。
「せっかく『魔よけのブレスレット』なんだから、毎日着けたらいいのに。グレインにも着けてるところを見せてあげなよ」
「ええっ!? ダメだよ。冒険中に失くしたり汚したりしたらイヤだもん……」
「ごちそうさま」
この子は何でこんなにかわいいんだろう。
というか、無自覚なだけで絶対グレインのこと好きでしょ。
広場でしばらく待っていると、一台の馬車がやってくる。フェルドリッジ伯爵家のものだ。
馬車は噴水の近くで停車し、中からグラシアさんが降りてくる。
「お待たせしました。どうぞお乗りください」
どうやらカティア様は来ていないようで、3人で馬車に揺られながら屋敷に向かう。
「そういえば、カティア様とグラシアさんも冒険者として登録されたんですね」
「はい。まさか旦那様にお許しいただいた次の日に冒険者登録するとは思いませんでしたが……」
「いきなりカティア様が来て、ギルドがパニックになったみたいですね」
グラシアさんが苦笑する。
あたしたちはその日はオフだったので二人には会えなかったが、次の日にはギルドで噂になっていた。
二人は既に何度かギルドに来ているみたいだが、タイミングが合わず会えていない。
早く二人と一緒に冒険できるといいな!
馬車がフェルドリッジ伯爵家に到着し、あたしたちは中庭に案内された。
中庭は芝が綺麗に手入れされていて、色とりどりの花が鮮やかに咲いている。手入れしている職人の腕の良さが見て取れる。
中庭の中心には円卓が置かれていて、それを囲むように4脚の椅子が置いてあった。
「ようこそ。今日は来てくれてありがとう!」
そのうちの一つにはカティア様が座っている。
カティア様はあたしたちに気付くと、ぱあっと花が咲いたような表情になる。思わず抱きしめたくなるほどかわいい。
4人全員が椅子に座ると、お茶とお菓子が運ばれてくる。
ふわりと漂うバターの芳醇な香りが心地良い。
お菓子を味わっていると、カティア様が目を輝かせてあたしたちを見ていることに気付いた。
カティア様の性格的に、早くあたしたちの冒険譚が聴きたいのだろう。あたしとミレナは互いに目配せすると、最近の冒険について話し始めた。
「やっぱり良いわね。わたくしも薬草採集以外の冒険がしたい! 早く未開拓地の奥へ行きたい!」
カティア様はあたしたちの冒険譚を聴くと、そう言って頬を膨らませる。あたしたちも中型モンスター討伐ぐらいしか受けていないが、それさえも魅力的に感じるみたい。
「私もカティア様と一緒に未開拓地の奥に行きたいな」
「そうよね! ミレナはやっぱり良いこと言うわ! 早くAランクに上がりたいわ……」
さすがカティア様だ。目標も大きい。
あたしも6人で未開拓地の奥を探索する様子を想像する。みんなで一緒にご飯を食べて、助け合って、並んで眠る。
この6人ならどんなピンチでも乗り越えられそうな気がした。
「……?」
あたしがその違和感に気付いたのは、4人で話し始めてから1時間ぐらい経った頃。
ミレナは気付いて無さそうだけど、グラシアさんは多分気付いてる。
――カティア様、グレインの話題多くない?
やたらとグレインのことを知りたがっている気がする。これが恋愛感情ではなく、『命を助けてもらったお礼がしたい』とかだったら良いんだけど。
ミレナはミレナでグレインの話題になると饒舌になるし……。
もし、カティア様がグレインに恋しているとしたら、ミレナはどうなるんだろう。




