表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きな人がパーティを追放された  作者: myano


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/31

盗賊討伐任務③

 俺たちは伯爵家の私兵とともに村まで移動し、村からは馬車に乗ってレイヴェルクに移動する。私兵の皆さんとともに伯爵家の馬車も来ていて、帰りはその馬車に乗ることになった……のだが。

「……」

 どうしてこうなった。

 行きと帰りで席順が変わった。進行方向側に奥からカティア様、俺、ミレナ。向かいにグラシアさん、リリア、ゼフレンの順に座っている。

 カティア様が『隣に座りなさい』と命令してきたため、俺が真ん中になったのだ。


 カティア様は馬車に乗ってからずっと上機嫌で、楽しそうにグラシアさんやリリアと話している。たまに俺にも話題を振ってくるので、油断できない。

 行きは俺とゼフレンは蚊帳の外だったんだけどなあ……。


 ミレナは席順の関係であまり会話に加わっていないが、俺がカティア様たちと会話しているときは、こちらに注意を向けているようだ。

 あと、何故か俺の服の裾をずっと握っている。さっき一度ミレナを見たとき、きょとんとした顔になったので、無意識なのかもしれない。

 まるで、『私を置いてどこにも行かないで』と言っているように思ってしまうが、考えすぎだろうか。うん、我ながらキモい。


「――決めた!」

 突然、カティア様が大きな声を出し、みんなの視線が彼女に集まる。

 直前までリリアたちと話していたようだが、俺は考え事をしていたので聞いていなかった。

「わたくし、冒険者になるわ!」

 カティア様がそう言うと、一瞬遅れて「ええっ!?」という驚きの声が重なる。

「お嬢様!? 何を言っているのですか!」

「グラシア、もちろんあなたも一緒よ」

「ええっ!?」

 グラシアさんが目を白黒させているが、カティア様は構わず続ける。

「わたくし、ずっと冒険者に憧れていたの。誰も行ったことのない場所に、わたくしが最初に足を踏み入れる。それをずっと夢見ていたわ」

『誰も行ったことのない場所』というのは未開拓地のことだろう。

「ウチは先祖代々、未開拓地への野心が強い家系なの。お爺様は何度も未開拓地の調査に同行していたくらいよ」

「そうだったのですか。私も初耳です」

「お父様は『自分には冒険者としての才能がない』と言って、冒険者への資金援助が中心だけどね。でも、わたくしにも先祖代々の血が受け継がれているわ」

「しかし、旦那様が許してくださるでしょうか」

 フェルドリッジ伯爵はカティア様のことを溺愛しているからな……。どっちに転んでもおかしくない。

「そのためにグラシアがいるんじゃない。王都の魔法学校を、史上最高の成績で卒業したあなたと一緒なら、お父様も許してくれるわ」

「お嬢様! その話は恥ずかしいのでやめてください! しかも2年後には更新されてしまいましたので……」

 グラシアさんってそれほどの実力者だったのか。

 魔法学校史上最高の魔法使いなら、宮廷魔術師の誘いがあったはずなのに、どういう経緯でカティア様に仕えることになったんだろう。



 俺たちはレイヴェルクに戻ると、そのままフェルドリッジ伯爵家の別邸に直行した。馬車の窓から屋敷の玄関を見ると、フェルドリッジ伯爵がそわそわしている。

 伯爵は馬車に気付くと、こちらに向かって走ってくる。

「おお、カティア! よく戻った。あまりパパを心配させないでおくれ!」

 ……聞かなかったことにしよう。

「お父様、みなさまの前ですわ。……黙って飛び出して申し訳ありませんでした」

 危険な目にあったからだろうか、カティア様は素直に謝罪する。

「……何かあったのだな?」

 謝罪を聞いた伯爵は別人のように鋭い目つきになり、低い声を出した。

 このあたりの洞察力はさすが貴族の当主だ。

「閣下、お嬢様のご友人もいらっしゃることですし、続きは屋敷の中でされてはいかがでしょうか」

「……そうだな。エルド、皆を案内してくれ」

「かしこまりました」


 エルドさんが、俺たちを応接室へ案内してくれる。

 応接室には机と椅子が用意されており、一同は席に着く。

 伯爵は全員の顔を見渡してから一つ咳払いすると、カティア様に鋭い視線を向ける。

 一方、カティア様は背筋をピンと伸ばして自信に満ちた表情をしている。


「さて、何があったか話してもらおうか」

 伯爵がゆっくりとカティア様に問いかける。カティア様は今日の出来事を、滞ることなく説明していく。

 アジトでカティア様が盗賊の一人を斬り伏せたと聞くと、伯爵は驚きつつも誇らしげな表情を見せる。一方、カティア様が危機に陥ったところでは、ハラハラとした表情を浮かべていた。

 カティア様が今日の出来事を話し終えると、伯爵は瞑目して『そうか』と短く呟く。そして、目を開けると俺のことを見つめる。

「グレイン、この度は娘を護ってくれてありがとう」

 そう言うと、伯爵は深々と頭を下げる。

「身に余るお言葉でございます。お嬢様がご無事で、何よりでございます」

 必死に言葉を紡ぎながら頭を下げる。

 しばらくして頭を上げると、伯爵と目が合う。彼は柔らかい笑みを浮かべていた。



 沈黙の後、カティア様は覚悟を決めた表情で伯爵を見つめる。

「お父様、わたくし冒険がしたいですわ」

 カティア様がそう言った途端、伯爵は眉間にしわを寄せる。

「ダメだ。危険すぎる」

「グラシアもいるから平気ですわ」

 フェルドリッジ伯爵家のことなので、部外者の俺たちは口を挟めない。

「閣下、恐れながら少しよろしいでしょうか」

「なんだ、エルド。申してみよ」

 エルドさんは一瞬こちらを見て微笑むと、伯爵の隣に立って何かを耳打ちする。

「うっ。ううむ……」

 伯爵は苦悩に満ちた表情でエルドさんと話している。しばらく話し続けたあと、エルドさんが静かに離れる。

 伯爵は瞑目して天を仰ぎ、一つ息を吐くと、カティア様を見据える。

「カティアよ。そなたが冒険に出ることを許そう」

「お父様! ありがとうございます!」

 カティア様は深々と頭を下げる。エルドさんとグラシアさんは、そんなカティア様を嬉しそうに見守る。

「グラシアよ」

「は、はい!」

「カティアのことを頼む」

「はい! お嬢様はこの身に代えてもお守りいたします!」

 グラシアさんは背筋をピンと伸ばし、緊張の面持ちで返事する。そんなグラシアさんを見て、今度はカティア様が嬉しそうに微笑んだ。



 その後の話し合いで、カティア様はこれまで通り伯爵令嬢としての務めを果たしつつ、時間のある時に冒険に出ることになった。また、冒険の際は必ずグラシアさんが同行することになった。



 話し合いも終わり、俺たちは見送りに来たエルドさんと屋敷を出る。

「今日は本当にありがとうございました。お嬢様に付き合ってくださった上に、命まで助けていただいて……」

 そう言いながら、エルドさんは手にしたハンカチで目元を押さえる。

「とんでもございません。伯爵令嬢が無事で何よりでございました」

 エルドさんからもお礼を言われるとは思っていなかったので、恐縮してしまう。

「今後とも、どうぞよろしくお願いいたします」

「こちらこそよろしくお願いいたします」

 エルドさんの言葉に、俺たちは慌てて頭を下げる。

 今更ながら、フェルドリッジ伯爵家とは長い付き合いになりそうな気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ