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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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19/30

盗賊討伐任務②

「うーん、これ以上近付くと気付かれそうだ」

 俺たちは近くの物陰からアジトの様子をうかがっている。アジトの外では二人の男が談笑している。二人とも武器を持っているので、アジトを警備しているのだろう。

 他の盗賊たちの姿が見えないが、アジトの中に居るのだろうか。建物には窓がないので、中の様子を見ることができない。


「カティア様、盗賊が全員揃っていることを確認するまで、ここで待ちませんか?」

 俺は小声でカティア様に提案する。時間はかかるが、それが確実だと思ったからだ。

「必要ないわ。5人中2人(ふたり)が警備している。つまり、リーダーはここに居るということ。さっさと片付けて帰るわよ!」

 そう言うとカティア様は俺たちの制止を振り切り、二人の盗賊を目がけて走っていく。彼女の右手には、細身の剣が握られていた。

「嘘だろ!?」

 俺たちは慌てて物陰を飛び出し、カティア様を追う。後ろからミレナが攻撃してくれたようで、盗賊の一人がうめき声をあげて倒れる。

「なんだお前ら! ぐわっ!」

 もう一人の盗賊は異変に気付いて声を上げるが、カティア様の攻撃を受けて倒れる。

 カティア様、めちゃくちゃ強いな。貴族のお嬢様なんて、まともに剣を扱えない子が大半だと思うのだが……。

「ふん、大したことないわね」

 カティア様はつまらなそうに呟く。

 確かに二人は倒した。だが、問題はここからだ。


「なんだ? おまえら何者だ?」

 アジトの中から二人の大男がのっそりと出てくる。どちらもただ者ではない雰囲気をまとっている。先ほどの二人とは段違いだ。

「おい、やれ」

 リーダーらしき男がもう一人の男に短く指示を出す。すると、隣にいた男が棍棒を片手に突っ込んでくる。俺はとっさに前に出て両手で剣を構え、その棍棒を受け止める。

「ぐっ!」

 両手に強い衝撃が走り、手が痺れる。何とか剣は手放さなかったが、長くはもたないかもしれない。

 俺の後方からミレナが魔法を放つ。しかし、その攻撃は棍棒で防がれてしまう。

 続けざまにゼフレンが攻撃を仕掛ける。右肩を狙った鋭い突きだが、棍棒で軌道をそらされ、右肩を掠めるだけに終わった。

「みなさん、離れてください!」

 背後でグラシアさんの声が響く。とっさに振り向くとグラシアさんが魔法の準備をしていたので、慌てて男から離れる。

 すると、グラシアさんが男に向けて大量の氷柱を放った。男は棍棒で防ごうとするが、全てを防ぎ切れずに傷を負う。

「はあっ!」

 そしてカティア様がとどめと言わんばかりに斬り込む。手負いの男はその攻撃を防ぐことができず、地面に倒れ伏した。

「っ! まだこいつ息がある。化け物なの?」

 男はカティア様の攻撃をまともに受けたが、まだ生きている。とはいえ、もう起き上がれないようだ。


「くそっ! 覚えてやがれ!」

「待て!」

 それを見たリーダーの男が南に向かって逃走を始める。最も近くにいたゼフレンが後を追う。

「誰!?」

 俺もリーダーを追って駆け出すが、背後からグラシアさんの声が聞こえて立ち止まる。慌てて振り返ると、アジトのすぐそばに、俺たちを案内してくれた青年が立っていた。

 青年は俺たちを見てニヤリと笑うと、アジト西側の森の中へ逃げていく。あいつも盗賊の仲間だったのか!


「待ちなさい!」

 グラシアさんが青年を追いかけて走り出す。俺も青年を追おうとした瞬間、アジト北側の森の中で、男が立ち上がったのが見えた。

 ――もう一人いるのか!

 俺は迷わずその男に向かって走る。男も森を飛び出し、最も近くにいるカティア様に向かっていく。カティア様はグラシアさんが追いかけた青年に気を取られていて、男の存在に気付いていない。

「カティア! 逃げろ!」

 俺は思わず叫ぶ。カティア様は驚いてこちらを見たあと、振り返って男の襲撃に気付く。

「きゃあ!」

 カティア様はとっさに男から逃げようとするが、足がもつれて転んでしまう。

 ミレナが男に向けて攻撃魔法を放つ。男は一瞬足を止めるが、剣で攻撃を防ぐと、再び走り出す。

「いや! こないで!」

 カティア様はパニックになっているようで、涙交じりの声をあげて尻もちをついたまま後ずさる。

「くらえ!」

 男はカティア様の目の前に立つと、剣を振りかぶる。

 その剣が勢いよく振り下ろされるのと同時に、俺の身体が二人の間に割り込む。

 ――ガキッ

 その瞬間、胸部に強い衝撃と鈍い痛みが走る。一瞬遅れて、右足に鋭い痛みが襲ってきた。

「ガハッ!」

 幸い、俺はまだ生きているようだが、激しい痛みで起き上がれない。男は俺を見て嗤うと、もう一度剣を振りかぶる。

 ――これまでか。

 そう思った瞬間、男の腹部から尖ったものが生え、男が小さくうめき声をあげる。そして、彼は口から血を流しながら倒れ込む。

 俺の命を救ってくれたのは、グラシアさんが放った氷柱だった。



「グレイン! 大丈夫!?」

 ミレナが駆けつけてくれる。俺を覗き込む彼女の目には涙が溜まっていた。

 すぐに『大丈夫』と言ってあげたかったが、胸部の激しい痛みで声が出せない。もしかすると、骨が折れているかもしれない。

「グレイン! グレイン!」

 カティア様はボロボロと涙を流しながら俺の名前を呼んでいる。怪我が無さそうで本当に良かった。

「グレイン、今すぐ治療するから」

 少し離れたところに居たリリアも飛んで来て、手を握ってくれる。直後、周囲が淡い緑色の光に包まれ、ほんの少しずつだが痛みが引いていく。

 安心感と達成感に包まれながら、俺は意識を手放した。



「うーん」

 しばらくして、俺は目を覚ます。目の前にはカティア様が座っていて、こちらを見ている。

 意識がはっきりしてくると、先ほどまでの出来事を思い出す。

「良かった。気が付いたのね」

 カティア様は嬉しそうにしているが、目が真っ赤だ。起きるまでずっと心配してくれていたのかもしれない。

「グレイン、大丈夫? 痛いところはない?」

 すぐ近くでミレナの声がする。俺はそちらを向くために寝返りを打とうとするが、頭を押さえられる。

「こっち向いちゃダメ」

 それで俺は今の状況に気付く。俺はミレナに膝枕してもらっているようだ。

 後頭部に感じる温かさと幸せな感触を意識すると、思わず鼓動が早くなる。

「うん。痛みは平気だ。そろそろ起きないと」

 このままだとダメになってしまいそうだったので起き上がる。名残惜しいが仕方ない。


「あっ……」

 体を起こすと、背後からミレナの切なげな声が聞こえる。慌てて振り向くと、ミレナが寂しそうな顔で膝を見つめていた。

 俺は見てはならないものを見た気がして、ミレナから視線を逸らそうとする。だが、その前に彼女と目が合ってしまう。

「――っ!」

 ミレナは俺と目が合うと、慌てて顔を背ける。しかし、耳が真っ赤に染まっている。


「コホン!」

 その時、目の前でカティア様がわざとらしく咳払いをする。俺が慌ててカティア様を見ると、彼女はジト目でこちらを見ていた。

 カティア様は小さくため息をつくと、頬を染めて話し始める。

「グレイン、その……ありがとう。助かったわ。痛いところは無い?」

「ああ、大丈夫。カティア様こそ怪我してない?」

「ええ。あなたのおかげよ」

 そう言うと、カティア様は上目遣いでこちらを見てくる。初めて見る、カティア様のしおらしい態度に思わずドキドキしてしまう。俺たちは何も言わないまま、見つめあう。


「あのー。アツアツのところすみません。あたしたちは何を見せられてるんでしょうか?」

 横から聞こえてきたリリアの声に、俺たちは飛び上がる。リリアは呆れたような視線をこちらに向けていた。

「お嬢様、報告があるのですが、よろしいですか?」

「ええ、何かしら」

 カティア様は声を上ずらせながら答える。

「私が追いかけた案内人の男ですが、森の中で見失いました。申し訳ございません」

「構わないわ。むしろあなたが戻ってきてくれたおかげで、わたくしとグレインは助かったのよ。感謝するわ」

「もったいないお言葉です」

 カティア様とグラシアさんのやり取りを聞き、心が温まる。本当に仲が良いなあ。

 二人は主従であると同時に、姉妹のようでもある。

 時々、グラシアさんが慈愛に満ちたまなざしでカティア様を見つめていることがある。それだけカティア様のことを大切に想っているのだろう。


「僕からも。盗賊のリーダーだが、こちらも逃げられてしまった。本当に申し訳ない」

「そちらも仕方ありません。一人で追ってくれてありがとう。怪我が無くて良かったわ」

「そう言ってくださると救われる思いです。……これからどうしますか?」

「そうですわね――」

 カティア様が何か言おうとした直後、遠くから大量の足音が聞こえてきた。

「何の音でしょうか?」

 俺は警戒しながら立ち上がる。目を凝らすと遠くに土煙が上がっているのが見える。

「あれは恐らく我が家の者たちね。そろそろ来ると思っていたわ」

「どういうことですか?」

「わたくしが屋敷に居ないことに気付いたお父様が探させたのでしょう。よくあることですわ」

「よくあることなんだ……」

 カティア様って相当お転婆だな。フェルドリッジ伯爵家の人たちに同情する。



 伯爵家の方々を待つ間、少し時間ができたので、攻撃を受けた部分を確認しておくことにする。

 どうやら盗賊の攻撃は防具の左胸の部分に当たり、そのまま防具を滑って右の太ももを斬ったようだ。

 防具の左胸、最初に剣を受けた部分は少しへこんでいるが、他に傷やへこみは無い。防具に質の良さに助けられた格好だ。

 右足は太もも付近の衣服が破れて足が露出している。その近くには、ベットリと血が付着している。リリアの治療のおかげで傷口は塞がっているが、かなり傷が深かったのかもしれない。


「リリア、治療してくれてありがとう」

 俺は怪我を治してくれたリリアに感謝を伝える。

「あたしは当然のことをしただけだよ。それにしてもグレイン、カッコ良かったよ!」

 カッコいいと言われて思わずドキッとする。もちろんリリアに他意がないことは分かっているが、男のサガなのでどうしようもない。



 しばらくすると、カティア様の予想通り、フェルドリッジ伯爵家の私兵たちが姿を現した。

「カティア様、探しましたぞ。黙って出かけるのは控えてほしいとあれほど……」

「まあまあ。それより、盗賊の一味を蹴散らしましたわ。連行の準備してください」

「盗賊ですか! かしこまりました」

 盗賊と聞いて、指揮官は目を丸くするが、すぐに連行の準備を始める。

 俺たちが倒した盗賊のうちの一人――棍棒を持っていた大男――だけは生きていたので、厳重に縛り上げてからリリアが治療した。

 カティア様曰く、彼には情報を洗いざらい話してもらう予定だという。


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