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好きな人がパーティを追放された  作者: myano


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緊急クエスト

 翌朝。

 俺たちはギルドのクエスト掲示板の前にいた。

 昨日はあの後、特に問題もなくクエストを達成した。

 モンスターの件は杞憂(きゆう)だったのかもしれない。そんなことを考えていると、突然ギルド内に大声が響き渡った。

「緊急事態発生。緊急事態発生。冒険者各員はギルドの窓口に集合してください」

 俺たち4人は顔を見合わせると、すぐに窓口に向かった。



 ギルドに居る冒険者全員が窓口の前に集まる。

 人数は200人ぐらいだろうか。まだ宿や街に居る冒険者もいるかもしれない。

 ギルド内の冒険者が集まったのを見て、ギルド職員が話し始める。

「みなさん、お集まりいただきありがとうございます。時間が惜しいので手短に説明します。先ほど、未開拓地でモンスターの大群が暴走を始めたという情報が入りました。彼らは現在、一直線に走っていますが、その進路上にここ、レイヴェルクがあるとのことです」

 それを聞いて冒険者たちがざわめく。

「みなさん、落ち着いてください。幸い、大半は小型のモンスターであるとの情報ですので、落ち着いて対処に当たってください。報酬については、時間がないので完了後に提示いたします。では、城外への移動をお願いします」

 担当者の話が終わると、冒険者たちは揃って城外に移動し始める。俺たちもそれに続いて外へ向かう。



 城外に出ると、遠くで土煙が巻き上がっているのが見えた。モンスターはまだ遠くにいるようで、戦闘は始まっていない。

 そんな中、一人の若い冒険者が声を上げる。……アイツ、何であんなに金ピカなんだろう。

「みんな、聞いてくれ。ボクはフィルザード。とあるAランクパーティのリーダーだ。今回は、みんながバラバラに戦うと被害が大きくなると思う。だから、ボクの指揮にしたがってくれないだろうか?」

 フィルザードは若干不安になる見た目をしているが、言っていることはまともだ。反対意見も出ず、彼がこの場の指揮官に決まる。

「ありがとう。では、前衛職は前に出て、その後ろに魔法攻撃部隊を配置。さらに後ろに支援と回復部隊だ。ボクとAランク冒険者の数人は、遊撃部隊として前衛の補助に回る。遊撃担当はボクが今から声をかけていく」

 見た目に反してまともな指示が出る。

 その指示を聞いてみんな安心したのだろう。冒険者たちがすんなりと配置に着く。

 ウチのパーティでは、俺とゼフレンが前衛、ミレナは魔法攻撃部隊、リリアは支援・回復部隊に回っている。

「さて、頑張らないとな」

 何が何でも敵を通すわけにはいかない。



「グレインと言います。よろしくお願いします」

「おう、よろしく」

「お前、なんだか頼りないな。オレたちの足を引っ張るなよ」

 持ち場につくと、左右の冒険者に挨拶する。二人ともAランクパーティの前衛らしい。


「来たぞ!」

 近くにいる誰かが叫ぶ。モンスターの大群は全く止まる気配がない。

 俺は無我夢中で戦うが、敵を食い止めるので精一杯だ。

「無事か!?」

「助かりました!」

 時々見兼ねた隣の冒険者が助けてくれる。

「ぐわっ!」

「しっかりしろ! 回復地点まで運ぶぞ!」

 その時、遠くで誰かがやられたらしく、冒険者たちの慌てた声が響く。

「ちっ! おい、グレイン! 俺たちが左右からサポートするから、お前は敵の足止めを頼む! やばいと思ったら構わず後退しろ!」

「わ、わかりました!」


「あいつ、凄えな」

 右隣の冒険者が戦いながらポツリと声を漏らす。視線の先を見ると、ゼフレンが次々とモンスターを(ほふ)っていた。

 その時、反対側で大きな歓声が上がる。

「何事だ!」

 とっさに反対側を見ると、水魔法がモンスターたちの急所に突き刺さっていた。威力や精度から考えて、ミレナだろう。

「あの魔法……どうなってるんだ?」

 左隣の冒険者が驚いたよう呟く。

 俺もゼフレンたちに負けていられない!


 しばらくして、少しずつモンスターが減り、余裕が出てきた。

 左隣の冒険者が別の冒険者と会話しながら敵を倒している。

「へえ。疲労回復の魔法か」

「ああ! すげえぜ! 鉛のように重かった体が羽のように軽くなった!」

「面白い魔法を使う奴が居るもんだなあ」

「しかもその魔法使い、Eランクパーティらしい。ぜひウチに来てほしいもんだ」

「ははっ! お前のところはCランクだろ? Aランクの連中が放っておかねえよ」

 今度はリリアが褒められているが、少し雲行きが怪しい。みんな、引き抜かれたりしない……よな?



 夕方になった。数人のギルド職員が城門付近で話し合っている。

 やがて、その中で一番恰幅(かっぷく)の良い男が冒険者たちに向かって話し始める。

「みなさん、今日はご苦労様でした。ここにモンスターの鎮圧を宣言します。みなさんのおかげで街は守られました。報酬については明日以降、クエスト完了時にまとめてお支払いします」

 男が話し終わると同時に、周囲から歓声が上がる。

 俺は歓声を聞きながら、達成感と程よい疲労感に包まれる。

「おう、グレイン。お前最後まで一歩も引かなかったな。大した根性だ」

「オレもそう思うぜ。……足を引っ張るな、なんて言って悪かった」

「いえいえ。俺は必死に戦っていただけで……。お二人のおかげです! 本当にありがとうございました!」

 俺がそう言うと、二人は顔を見合わせる。そして、『フッ』と笑って肩をすくめた。



「グレイン、お疲れさま。ケガはない?」

 二人と別れてしばらくすると、ミレナが話しかけてきた。

「うん、大丈夫。ミレナもお疲れさま。凄い活躍だったね」

 あの後もミレナ、ゼフレン、リリアはそれぞれ大活躍を見せた。その結果、他の冒険者の注目を集めていた。


 ちなみに金ピカ男ことフィルザードだが、遊撃部隊として序盤は活躍していたものの、調子に乗って一人だけ突出したところでモンスターの突進を受けた。

 その後もモンスターから集団リンチされそうになっていが、ミレナが魔法で周囲のモンスターを制圧したため難を逃れた。

 結局よく分からない奴だったな。



「グレインたちが頑張って食い止めてくれたおかげだよ。それに、グレインも一日中前線で頑張ってたじゃない」

 ……よく見てるな。まあ、俺より後方に居たから視界に入ったんだろう。

「まあ頑丈が取り柄だからな。今日はこの防具にも助けられたよ」

 そう言って先日買った防具を優しく撫でる。

 今日は乱戦の中、何度かモンスターの突進を受けた。しかし、いずれもこの防具が防いでくれたので俺は無傷だ。前の防具だったら多少のダメージを受けていただろう。

 図らずも、この防具の防御力を思い知ることになった。

「やっぱりグレインは前衛でどっしり構えてるのが一番似合うかも」

「うん。俺もそれが性に合ってると思った」

 二人で笑い合う。

 ミレナは俺が迷走していた時から気付いていたのかもしれない。その上で俺のやりたいことを尊重してくれたのかな。なんとなく、そんな気がした。



 ミレナとしばらく話をしていると、他の冒険者から解放されたゼフレンとリリアがやってきた。リリアはそのままミレナに抱き着く。

「ミレナお疲れさまー。大活躍だったね」

「リリアもね。リリアの回復魔法、みんなビックリしてたね」

「えへへー。もっと褒めてー」

「はいはい。えらいえらい」

 そんなやり取りをしている二人をよそに、俺はゼフレンをねぎらう。

「ゼフレン、お疲れさま。凄い活躍でしたね」

「グレイン君もお疲れさま。僕は一度、戦線を離脱してしまったから、まだまだだよ」

「そうだったんですか? 全然気付きませんでした」

 ゼフレンは謙遜するが、それでもAランク冒険者に負けない数のモンスターを倒している。

 途中からAランク冒険者に誘われて中型モンスターと戦っていたほどだ。

「グレイン君こそ、僕が見る限りずっと前線に居たような気がするけど?」

「はい。一応ずっと前線に居ました。左右にいたAランクパーティの冒険者が何度も助けてくれたので、そのおかげだと思います」

「そうか、ずっと前線に。僕にとってはその方が凄いと思うけどな……」

 隣の芝生は青く見えるという奴だろうか。実際のところ、俺は前線に居ただけでほとんど敵を倒せていない。

 武器も威力の高いものに変えてみるべきだろうか。



 翌朝。

 支度に手間取ったため、ギルドに到着したのは待ち合わせ時刻の直前になってしまった。

 他のみんなは時間に余裕をもって行動するタイプなので、もう待っているだろう。そう考えながら小走りでギルドの中に入る。

 すると、ギルド内が騒がしかった。人だかりがいくつかできている。

「ん? 何の騒ぎだ?」

 何事だろうかと一番近くの集団に近付くと、ゼフレンが他のパーティにスカウトされていた。

「ゼフレン、俺たちのパーティに来てくれないか。キミが来てくれれば俺たちはAランクに上がれそうだ」

「いや、ウチのパーティに来てくれ。僕らのパーティは既にAランクだ。やりがいのあるクエストも、報酬の高いクエストも選び放題だよ」

「うちはまだCランクだけど、飛ぶ鳥を落とす勢いなんだ。妹さんが一緒でも構わないから、是非うちに」

 ……熱意が凄い。というか最後のパーティ、リリアをゼフレンの妹と勘違いしているな。しかも結構失礼なことを言ってるし。

 あ、ゼフレンの額に青筋が立ってる。

 ゼフレンがキレて殴りかからなければ良いけど……。



「うーん。やっぱり昨日のゼフレンの活躍は凄かったからな」

 そう一人で呟きながら、別の人だかりの方へ向かう。

 そこではリリアが魔法使いたちに囲まれていた。

「リリアちゃんかわいい。私たちと一緒に冒険しない?」

「リリアちゃん、私にも疲労回復の魔法を教えて」

「リリアたん。リリアたん。はあはあ」

 おい最後。やばい奴いたぞ。女の人の声だから大丈夫なのか? 一応、あとでゼフレンに報告しておこう。

 しかし、リリアも人気者になっている。

 聞こえてくる声のうち、半分以上は「回復魔法を教えて」だが、「一緒に冒険したい」という勧誘の声も結構ある。やばい奴は一人だけだな。ヨシ!

 ここからではリリアの様子は見えない。まあ、人だかりの大半が女性だから問題は起きないだろう。

 俺はそう判断して、もう一つの人だかりに向かう。

 この流れからして、嫌な予感がする。



 最後は一番多くの人が集まっていた。最後方から頑張って中心を覗く。

 そこには俺の予想通りミレナが居た。だが、ミレナに向かい合うようにして金ピカの男も立っていた。

 俺は思わず近くに居た冒険者に事情を尋ねる。

「すみません、今何が起きているんですか?」

「オレたちはみんな、ミレナちゃんを自分のパーティに勧誘しようとしてたんだが……」

 あ、やっぱり勧誘合戦は起きていたのか。

 まあ、ミレナはこの街で一番の魔法使いだからそうなるよな。かわいいし。

「そしたらフィルザードの奴が来て、ミレナちゃんに迷惑だろう、一人ずつ順番に交渉すべきだ! って」

 うーん、そういうことじゃないと思うんだけどなあ。

 悪い奴じゃないと思うんだが、何か少しズレている気がする。

「そう言うと、真っ先に自分が交渉を始めやがった。しかも長々と演説してやがる」

「うわぁ」

 ドン引きである。周りをよく見ると、彼を睨みつけてサムズダウンしている冒険者さえいる。


 そんな周囲のことはお構いなしに語り続けるフィルザード。一方、ミレナは好奇の目に晒されて居心地が悪そうだ。

「――という訳で、ミレナ、ボクたちと一緒に旅をしないか?」

「ごめんなさい、お断りします」

 演説の最後にフィルザードが問いかけると、ミレナは間髪を入れずに断る。

 すると、周囲の冒険者からも「おお~」と歓声が上がる。

 フィルザードに長々と絡まれるミレナを見て、同情的になっていたのだろう。

「ま、待ってくれ。もう少し話を――」

「いい加減にしろ、フィルザード!」

 その時、人垣の中から真っ赤な鎧を着た男が飛び出し、フィルザードを羽交い絞めにする。

 うわ、金と赤で目がチカチカする。

 フィルザードと同じパーティの人だろうか。だとすると凄い色のパーティだな。他のメンバーの色も見てみたくなる。

 だが、フィルザードをしっかり抑え込んでいることから、彼の実力が垣間見える。同時に、フィルザードに普段から振り回されていることも。

「ミレナちゃん、ウチの馬鹿が迷惑をかけたね、申し訳ない。それじゃ」

「おい、放せ! まだ話は終わってないんだ!」

 赤い鎧の男はミレナに謝罪すると、暴れるフィルザードを引きずって行ってしまった。

 その場に取り残されてポカンとする俺たち。


「さ、解散だ解散」

 やがて、その場にいた野次馬の誰かがそう言うと、冒険者たちは散っていく。

 何人かの冒険者はミレナを惜しそうに見るが、それでも何も言わずに去っていく。

 彼らもフィルザードの姿を見て冷静になったのだろう。そういう意味では助かった……のか?

 それにしても、ミレナまで有名になってしまった。いや、「見つかってしまった」というのだろうか。

 3人とも今までは目立たなかっただけで、実力が他の冒険者に知られてしまえばこうなることは予想がついていた。

 しかも俺たちはまだEランクのパーティだ。

 上級ランクパーティの冒険者からすると、ランクを武器に引き抜けると考えても不思議ではない。俺たちも早くランクを上げないとな。


「あれ、グレイン?」

 周囲から人が減ったことで、ミレナが俺の存在に気付いたようだ。

「何というか、その、災難だったね?」

「あはは……」

 ミレナは疲れ切ったような顔をして、苦笑するだけだった。

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