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女神(アイドル)たち舞い歌いて、邪を祓う  作者: 暇崎ルア
第1章 流るる水、歌声とともに

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三河島律子 夢

第1章、4話。

夢の中に出てくる男は一体……。

「おいおい、ふざけるなよー」


 殺気を覚えながら、照明のボタンを押したことは言うまでもない。

 照明は、感知センサーでついたりするわけじゃない。うちのアパートは築二十年以上のボロアパートだ。そんな最先端の設備ではないし、もしそうだったとしても私は部屋にいるんだから勝手に照明が落ちるいわれはない。

 なのに、照明はその後も落ちた。何度かつけては消えてを繰り返し、諦めた私は真っ暗な空間で推しが歌って踊る姿を見て、涙を流した。「目に悪い」とかそういうのはどうでも良かった。

 壁もどんどん叩かれた。右隣が叩かれたと思ったら左隣、最終的に天井や床からもどんどんされていた。

 まったく下の階の人もどうかしている。天井を叩いてまで、迷惑だと訴えたかったのか。別にそこまで大音量スピーカーで聞いていたわけじゃないのに。

 あんまりうるさいので、途中からイヤホンで聴くようにしたけどそれでも音は止まなかった。世の中、こんなことでしかストレスを発散できない人もいるんだろう。かわいそうな人たちだ。

 過去のライブ映像を泣きながら楽しんだあとは、風呂に入る。大切な明日に今日の疲れを持ち越してはいけない。


 だけどお風呂だけじゃ疲れは取れなかったんだろう。珍しく悪夢を見た。何もなく殺風景だけど、ただ広い部屋に立っている夢。

 部屋にいるのは私一人じゃない。背中を曲げ、俯いた男性らしき人がそばにいる。

 大きな体格から「男性」だと判断したのだけど、実際にそうなのかはわからない。その人は全身黒ずくめで、影のようにしか見えないからだ。本体の男性から影だけが抜け出して、一人歩きしているような。


「畜生、なんであんなやつらが」


 影の言動が夢を悪夢たらしめていた所以だ。


「あいつらさえいなければ」

「死ね」

「俺はこんな想いをすることなどなかったのに」

「呪ってやる」

「絶対に許さん」


 背中を曲げ、俯いたような姿勢を取った影は私の周りをぐるぐると誰かを罵倒する言葉を吐き続けていた。

 夢の中の私は「何してるんですか、やめてください」と言ってやりたかった。しかし、情けなくすっかり怯え切ってしまい、突っ立ったまま口を開くことも動くこともできない。

 こんな状況は異常で現実ではありえない、夢だ。半分覚醒した私の脳はそう認識しているのだけど、なかなか目覚めることができない。

 焦っていると耳元ではあ、と熱い吐息がかかった。


「殺してやる」


 熱い吐息が私の耳に囁いた。


「……うわあっ!」


 自分の変な声で飛び起きる。大量の流奈様グッズを敷き詰めた神棚がある、安アパートの六畳の寝室。良かった、ちゃんと夢から覚められた。

 ようやく私以外の気配があることに気づく。

 枕元の携帯のライトで部屋の様子を確認する。誰もいない。

 面倒臭いけど起き上がって、廊下やトイレ、風呂場なんかも確認する。誰もいない。一人暮らしなんだから、いたらおかしい。それでも消えないこの違和感は何なんだろう?

 誰もいないキッチンで水を一杯飲んでから、もう一度布団の中に入った。

 どうしたもんだか、朝まで一睡もできなかった。

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