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女神(アイドル)たち舞い歌いて、邪を祓う  作者: 暇崎ルア
第2章 火の粉に魂(ライム)を混ぜ合わせ

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茜と静 異変

第2章、第7話。

心霊写真の真相と、襲い掛かる異変。

 首を捻った溝口は、不審そうな顔をしていた。

「十八時五十二分です」

「ええっ、その時間は溝口さんも含めてずっと僕らで打ち合わせをしてたけど。あっちの方で」

 口を挟んだのはアシスタントディレクターの北谷だ。彼が「あっちの方」と指さしたのは、林とは反対方向にある炭捨て場の方だった。北谷の主張に溝口も「うんうん」と頷く。

「十八時四十分頃からずっとそこで北谷さんと打ち合わせしてたので、間違いないです」

「うちらが写真撮ってる間に溝口さんが林の方に行ったりとかは」

「いいえ、してないです」

「うちらを騙すためのドッキリとかじゃないですよね?」

「本当に違いますよ」

 むっとしたような顔をする溝口。

「大体、お二人がここで写真を撮ってたなんてこと知りませんでしたし、知ってても遠く離れていましたから、撮るタイミングを掴んであの木の方にいるのも難しいと思います」

 それはその通りである。

「……ということは」

 ようやく「おかしいのかも」と言う顔をした静と茜が目を合わせた。

「じゃあ、それって本物じゃないか?」

 そう言ったのは誰だったか。


 ううっ、ううっ……


「何だ?」

 それはすすり泣いている声に聞こえた。聞こえたのは近くだ、林の中ではない。

「どうしました?」

 茜の背後、慌てた声の静が中腰になっている。その先にはうずくまる人影があった。

「Kyoyaくん、本当に大丈夫!?」

 うずくまるKyoyaの背後で、パンツスーツの女性が心配そうに慌てている。確か、Navigatorsのマネージャーの石丸だったか。

「ちょうど顔色が悪いけど大丈夫なの? って話をしてたんですよ。そんなときに……」

「——もうやだ、もうやだ」

 Kyoyaは両手に顔をうずめ、しくしくと泣いていた。

「どこか具合でも悪いんですか?」

「そうだよお、疲れたのお」

 そっと話しかけた静に対して愚図り始めるKyoya。茜にはまるで子供が駄々をこねているように見えた。

「……なんか、Kyoyaくんの声おかしくないか?」

 音響スタッフの宮沢が怪訝そうに言った。すぐカメラマンの野村が「ああ、なんか違うよな」と頷く。

 言われてみれば、子供のように「疲れた」「やだ」と駄々をこねているKyoyaの声は、妙に甲高かった。成人男性とは思えない、女性のような声になっている。

「それにさ、寂しいよお」

「寂しい?」

「そう、寂しいの——だからさ、へへっ」

 静の足元、いたずらっ子のような笑い声をあげたKyoyaが一瞬顔を上げる。


「このお兄さん、連れていっちゃうね?」


「待て」という暇もなかった。

 にやにやと笑うKyoyaはおもむろに立ち上がった。


 *


 「……どうすんだろうな、これ」

「わからん」

 アシスタントディレクター、北谷の呆然とした呟きに、同期でもあるカメラマンの野口が率直な答えを返した。

 キャンプファイアーだけは何事もなかったかのように火を爆ぜさせ続けているが、その周辺にいる人間たちだけはお通夜のような静けさが漂っていた。

 山下ディレクターはキャンプファイアーから離れたところで、真っ青になった石丸と今後どうするかの相談をしている。

 ざっざっ、と足音を立てながら二人に近づいてくるスタッフがいた。

「——救急車、呼ぶかもしれないってさ。厄介なことになったな」

 山下たちの話を聞いてきたらしい、音響スタッフの宮沢だ。マネージャーの判断では救急車を呼び、Kyoyaを救急の医者に診てもらおうという話になっているという。

「だけど病院連れてってどうするんだよ? 何て説明するんだ?」

「急性ノイローゼとかヒステリーとかなんとか言うんじゃないのか? オレはそういうの詳しくないから、わかんないけどさ」


 ふふっ、ふふふっ……


 火が爆ぜる音に時折、虚ろに笑う女声が混じる。

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