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女神(アイドル)たち舞い歌いて、邪を祓う  作者: 暇崎ルア
第2章 火の粉に魂(ライム)を混ぜ合わせ

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茜と静 写真撮影

第2章、第4話。

茜と静の二人が記念写真を撮っていると……?

 静が戻ってきた。


「——おお、お疲れ。早かったな」


 隠す必要はないのだが、咄嗟にノートとペンを後ろ手に隠してしまう。


「何枚か撮ったら、Kyoyaさんがマネージャーさんに呼ばれちゃって——あっ、ごめん。曲作りの邪魔しちゃった?」

「いや、大丈夫。ちょっとは進んだし」


 もちろん、嘘である。


「——ねえ、茜」

「何だ?」

「やっぱり、二人で一枚は写真撮ろうよ」

「え?」


 青天の霹靂だった。まさか、静からこんなことを言われるとは。


「私、こういうキャンプ場とか行ったことなくてさ。今日のロケ、楽しみにしてたんだよね」

「……はあ、なるほど」

「だから、茜とは一枚は撮っておきたくてさ」

「後でじゃダメか?」

「撮影終わったらそんな余裕ないよ、絶対」


 お願い、今行こう。静が両手を擦り合わせながら健気に頼んでくる。


「……わかった、行くよ」


「一生のお願い」と言わんばかりに両手を擦られると、断れなかった。もう休憩時間も尽きているので、これ以上作詞に費やすのは潔く諦める茜だった。


「ありがとう」


 満足そうに静が笑む。


「撮影終わったら流奈たちも誘って行くか。プライベートキャンプ」

「いいね、絶対行こう。約束!」

「わかったよ」


 指切りを交わす二人だった。

「ここで撮ろう」と静が示したのは、茜たちのテントから少し右に行った、バーベキュー広場に近い辺りだった。現在話し合いをしているスタッフたちの姿が写るが、キャンプファイアーの火と輝く星空を背景にフォトジェニックな光景が取れそうだった。


「——はい、チーズ」


 静の携帯の内カメラで、「ばんかみ」メンバー二人の映った記念写真が撮られる。撮り終わった写真はすぐさま、静の携帯から茜のLINES個人トークルームに送られた。


「……あれ、何か変なもの写ってないか?」


 茜がそれを見つけたのは、撮った写真を確認している最中だった。


「えっ、嘘でしょ?」

「これ——林の入口じゃねーかな」


 指二本を動かし、画像の倍率を上げる茜。ズームされた写真右端には木々が数本写っている。山下が言っていた「悲劇」のあった林の入口あたりだ。


「ここ、パーカーのフード被った人影に見えないか?」


 茜は、写真最右端に写った一本の木に注目していた。夜の闇の黒を受けた木の左隣、白い服を着た人影のようなものが写っている。


「……うん、やっぱりこれ人だよ。こっちに顔向けて立ってるんだ」


 最初は茜も見間違いかと思ったが、一度そのように見えてしまうとどんどん人影に見える。それの黒い頭までも白い布のようなもので包まれているのではないかということも。

 ——パーカーのフードか?

 パーカーのフードを被った人影は、胸元まで黒いものをはみ出させていた。長く伸びた髪の毛だろうか?

 山下の言葉を思い出す。背景に写っている林は、一人の女性が自ら命を絶ったと言われている場所だ。それ以降目撃されるようになった女性の霊は「ぼろぼろのパーカーを着ていた」とも。最もパーカーの色まではわからないが。

 真剣に考え始める茜に対し、静は「ありえない」と苦々しい顔をする。


「スタッフが誰か写り込んだんだって」

「……けど、白い服着てるのは誰もいないんじゃないか?」


 咄嗟に周りを見回す。その場にいるスタッフだけだが、白い服を着ている者はいない。


「それか他のものと見間違えたんだよ。シミュラクラ現象とかさ」

「シミュ……何?」


 舌を噛みそうな、茜には耳なじみのない言葉。


「シミュラクラ現象。点が二つ、その下にもう一つ点が人の顔に見えるってやつ。ほとんどの心霊写真がそれで解決できるんだよ」

「……えっと、要するに人影っぽいけど違うものを人影として認識しちまったってことか?」

「そういうこと——あと服の色も白じゃないんじゃない? 私たちが写真撮ったときに、あの木の方で白系の服着た人が通ったとか。北谷さんとか、グレーの服着てるし。遠目から見たら白っぽく見えるかも」


 静が言った北谷とは、アシスタントディレクターのことだ。茜たちの斜め後ろ、山下ディレクターと顔を突き合わせて話している彼を見れば、白に近いグレーのパーカーを着ている。


「多分、北谷さんが写ったんだよ。さっきから林の方とこっちの方行き来してたし」

「はあ、なるほどなあ……」


 ——本当にそうなのか?

 頷きはしたが、心から納得できない。写真の不審な人影は、頭を包む白いフードから黒いものが足元に向かってはみ出しているように見える。胸元まで垂れた長い髪のように見えた。


「あと、それかさ——」


「撮影、再開しまーす! 集まってくださーい!」

 静が何かを言いかけたとき、北谷から撮影再開の合図が出された。


「それか、何だよ?」

「——何でもない。始まっちゃうし、もう行こう」

「……お、おう」


 煮え切らない思いのまま、茜は閉じた携帯をジーンズのポケットにしまった。

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