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女神(アイドル)たち舞い歌いて、邪を祓う  作者: 暇崎ルア
第1章 流るる水、歌声とともに

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三河島 推しが教えてくれたこと

第1章、最終話。

三河島が最推しから教えてもらったものとは。

「あれ、今日はがっつり系のお弁当なんだ」


 いつものフルタイムバイトの休憩中。相変らず明智先輩は私のお昼を気にしてくる。


「へへっ、ちゃんと栄養バランス考えて作りました」


 今日の私の二段弁当の一段目には鶏のから揚げにひじきサラダやフルーツなどバランスを考えたおかず、二段目には昨日炊いた白米が詰め込まれている。早起きして作るのは大変だったけど、お昼に美味しい物を食べられると考えたら頑張って良かったと思える。


「どうしたの、この間のディストピアSFのご飯とは大違いじゃん」

「そんな風に思ってたんですか……色々あって心変わりしたんですよ」

「色々って何? もしかして推しに何か言われたとか?」

「何でわかるんですか!?」

「えっ、図星なの?」

「いやあ、なんて言うか……」


 曖昧に返事をにごすしかできない。流奈様が私の部屋にやってきて、除霊ライブをやったあとに、私のただれた生活を叱ってくれたなんて言うことはとてもできない。あのことは流奈様を私だけの秘密なのだから。墓場まで持っていくしかない。


「私なりに考えたんですよ。末永く推し活するには健康が大事だなって」

「良かったねえ、気づけて。そういやあのサプリとやらは飲んでるの?」

「もう飲んでないです」


 あの夜、今の明智先輩が聞いたサプリについて流奈様も帰り際に聞いてきた。「今日の握手会から夜までに何か変わったことしてないですか?」と。


「流奈様も変なことを気にするな」と思いながらも私は考えた。


「……家に帰ってきて夕食食べて、サプリメントを飲んで、それから倒れてました」

「お家に帰ってくるまでにどこかに行ったりとかは」

「ないです」

「そのサプリメントってどんなやつですか?」

「Cクリーンってやつです——ええっと、これこれ」


 ズボンのポケットにちょうどブリスターパックが入っていたことを思い出し、実物を流奈様に見せる。

 その途端、流奈様の顔が青ざめた。


「——これ、飲まない方が良いかもしれないです」

「ええっ、悪いものなんですか?」

「あたしの主観でしかないですけど怪しいです。そばに置いとかない方がいいかも」


 理由を聞いたけど、流奈様は頑なに教えてくれなかった。よくわからない言い分だったが、「これはそばに置いておかない方が良い」ということで没収されてしまった。せっかく祓ったものを引き寄せてしまう可能性があるのだという。


「そもそもどこで知ったの、そのサプリ?」


 流奈様から言われたことを思い出していると、明智先輩が尋ねてくる。


「ええっと、確か『ばんかみ』のイベントでV&Hが試供品配ってたんですよね。それ飲んでからちょっと調子良い日が続いてたんで本格的に飲み始めたんですけど」

「プラシーボだよ、きっと」


 ばっさり切り捨てる明智先輩。


「ですかね~」


 プラシーボ効果。小麦粉でも「これは良い薬だ」と患者に言い聞かせて飲ませると、病気が治ってしまう人体の神秘のことだ。

 流奈様の見込み通りCクリーンが全ての原因だったのだろうか? 今となってはわからないが。

 とにかくもうあのサプリを買わないことは確かだ。これからはきちんと食事を摂ると決めたのだから。


「そういやV&Hで思い出したけど、社長がイケメンなんだよね」


 デザートのフルーツゼリーを食べ始めた明智先輩がにやにやする。


「見たことあるんですか」

「この間バラエティに出てたよ。ホワイトチーズとか、90年代のロックが大好きなんだって」

「おっ、ホワイトチーズといえば『ばんかみ』プロデューサーの高天原さんがいたバンドじゃないですか」

「まったく、すぐそっちにつなげるんだから……」


 くだらない馬鹿話を挟みながら、昼食の時間は続いた。誰かと食べる食事って楽しい。

 これも全て最推しがいたからこそだ。ありがとう、流奈様。

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