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女神(アイドル)たち舞い歌いて、邪を祓う  作者: 暇崎ルア
第1章 流るる水、歌声とともに

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水上と高天原と因幡 意図

第1章、17話。

高天原が考える「ばんかみ」とは。

「いいよ~」

「どうかしてますね」


 流奈自身でも驚くぐらい冷たい声が出た。


「そうかもね。でも、ファンの家まで行って除霊するアイドルも同等じゃない?」


 一本取られた。

 ——もう何でもいいや。


「因幡さんもプロデューサーの意図は知ってたんですか?」

「はい」

「この人やばいな、と思って辞めたりしないんですか?」

「最初は思いましたが、気にならなくなりました」

「なんでですか」


 ——こんなとんでもない事実が気にならなくなるなんてことある?


「メンバー、衣装、演出、パフォーマンス、高天原さんの作ったばんかみがあまりにも完璧だったのです。だからあなたたちのマネージャーをしているのですが」


 嬉しそうに引き上げられた因幡の目元が映るルームミラーの隣、フロントガラスのフックにハートを髪につけた女の子のぬいぐるみマスコットがつけられていることに改めて気づく。

 流奈がアイドルを目指したきっかけ、先輩アイドルグループでもある「ろーりんぐ☆めておず」のメンバー、環ちゃんのぬいぐるみだ。


「因幡くん、環ちゃんのぬいぐるみいつも持ち歩いてるよね~」

「わたしのお守りですので」

「いいね、推し活してるね~」


 ——重度のドルオタか。

 二十年前に結成、十年前に解散したグループのグッズを未だに持ち歩いている人間をそう断定しても文句は言われないだろう。

 普段無表情なマネージャーの知られざる一面を知った気がする流奈。すっかり高天原の作った珍奇なアイドルグループに魅せられているようだ。


「——言っとくけど、別に除霊を強制的に君たちにやらせるなんてことはしないよ。本業が最優先だ」


 唐突に高天原が言った。打って変わって真面目な声色で。


「だけど、第六感で誰かを救おうとするなら俺たちは全力でサポートする。君たちの安全を守る因幡マネージャーがいるからね」

「守ってくれるんですか?」

「うん、神社の宮司の弟だもん。ね?」

「あんまりそういう風に持ち上げないでください」

「そもそもあたしみたいなことしようとするメンバー、あたし以外にいるんですかね?」

「いるんじゃない? 皆、優しいしさ」


 もう何も聞かないことにした流奈は、力なく車窓にもたれかかった。どんどん追い抜いていく都会の建物群たちをぼうっと見つめる。


「だけどなんであたしたちみたいの集めてアイドル作ったんですか?」

「『世界の闇』を祓うためだよ」

「なんですかそれ……。根も葉もない陰謀論持ち出すんじゃありませんよね」

「ばんかみで今一番オカルト世界に近い流奈がそれ言う? 今こうしてる間にも、この世界じゃ闇が蠢いてるよ」

「例えば?」

「……とかさ」


 高天原が何かを言いかけた瞬間、車のすぐ横でバイクが必要ない轟音を轟かせて走り去っていった。


「すみません、最初の方聞こえなくて」

「聞こえなかったならいいや、もう言わない。このこと知ったら、行動力ある流奈さんは入れ込みすぎちゃいそうな気がするし」

「そんな大々的な話なんですか」

「これ以上はノーコメントで。また聞かれても何も言わなーい」


 それっきり、高天原は口を閉じた。


「送迎、ありがとうございました」

「どういたしまして……あれ、これ落としたよ」


 車から降りようとした拍子、流奈のパーカーのポケットから黒い錠剤の入ったパックが滑り落ちた。律子から取り上げてきたものだ。


「ああ、それ」

「何この黒いの、薬?」

「と思うんですけど、気持ち悪いんですよね、それ」


 高天原にそれを手に入れた経緯を手短に話す。


「……ふーん、なるほどねえ」

「良かったらプロデューサーかマネージャーにあげます」

「いりません」

「いらないもの押し付けたいだけだろ、もう~」

「そうとも言いますね」


 むしろそうとしか言わないのだが。


「まあ、預かっていくよ。……それじゃ、除霊もほどほどにね。君の本業はアイドルなんだからさ」

「はあい、わかりました」


 高天原は再び助手席に乗り込み、「何かあったらすぐ連絡してくださいね」と言い残してから因幡もそれに続いた。


「おかえり」


 玄関を開けると、茜が複雑そうな顔をしてやってきた。

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