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女神(アイドル)たち舞い歌いて、邪を祓う  作者: 暇崎ルア
第1章 流るる水、歌声とともに

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水上と高天原と因幡 真相

第1章、16話。

今明かされる、「ばんかみ」の秘密。

 ——あとは、「幽霊なんて馬鹿なもの信じてるのか」って。

 それは飲み込んだ。


「うん、流奈の考えと行動そのものは怒らない。俺も因幡くんもね。どうしてオレが『ばんかみ』を作ったかわかる?」

「これまでのキャリアを活かして新しいことに挑戦してみたかったから」

「ははっ、今月の『エンタメGO!』読んだのね」


「エンタメGO!」、流行のエンターテインメント作品や芸能人にフォーカスを当てた月刊雑誌である。その今月号に「ばんかみ」プロデューサーである高天原のインタビューが載ったのだ。


「はい、推しVのミリアちゃんのピンナップがついてきたので」


 推しVとは、流奈が推しているバーチャル配信者のことだ。流奈が買ったのはその付録が欲しかったからで、プロデューサーのインタビューを知ったのは偶然だったが。


「なるほど。……でも、それは建前なんだな」


 ここだけの話、オフレコで。

 前打つように高天原は言った。そして信号が変わり、車も動き出した。


「流奈はアメノウズメノミコトって知ってる?」

「日本神話の『天岩戸』に出てくる女神……でしたっけ」

「正解。それじゃ第二問、アメノウズメはどんな女神様だった?」


「日本神話」は子供の頃、児童書で読んだことがあるのだが、他の神話の内容と記憶がうっすら混ざっている自覚がある。


「はい、時間切れ」


 言葉に詰まってから数秒、悲しい通告がもたらされる。大したことではないのに、悔しくなる流奈だった。


「正解は、芸能の女神様。むかーしむかし、スサノオという神のいたずらに激高し、天岩戸に閉じこもってしまったアマテラスオオミカミという女神がいました」


 高天原流「日本昔話」が始まった。


「アマテラスは世界に光を与える女神様です。引きこもってしまっては、世界は永遠に夜のまま。何とか彼女を天岩戸から出そうと、神様たちは奮起しました。そこで活躍したのが、アメノウズメノミコトでした」

「思い出しました。アマテラスの気を引こうと、アメノウズメが天岩戸の前で舞い踊りを披露するんですよね」

「おっ、いいね。続きはわかる?」

「……えっと」


 蘇った記憶を皮切りに、さらに脳内を巡らせる流奈。


「……アメノウズメの舞い踊りは非常に愉快で、他の神々を笑わせた。大岩の向こうの騒ぎが気になったアマテラスは少しだけ顔を出し、『なぜそんなに騒いでいるの』と聞いた。そこでアメノウズメは鏡をアマテラスに向け、『貴方よりも尊い神様が生まれたからですよ』と答えた。それから彼女がまた引きこもる前にアメノタヂカラオノカミが天岩戸から引きずり出し、世界には再び昼と夜が戻った。めでたしめでたし……で合ってます?」

「合ってるー。流石は流奈」


 高天原がひゅうと、口笛を吹く。


「オレはこの話を大人になって読んだときさ、すごく感動したの。ああ、これは舞い踊りというパフォーマンスで世界から闇を祓う話なんだなって」

「いや、どっちかっていうと、アマテラスの気を引いたのは他の神の騒ぐ声じゃないですか」

「でも、間接的要因にはなってるわけでしょ。アメノウズメの舞いがなければ、神様たちは騒いでなかっただろうし」


 物は言いようなのか、高天原の言い分には妙な説得力があった。


「それでオレは、世界の闇を祓う女神様としてのアイドルを作ろうと思ったわけ」

「うちらのモチーフになってる五元素は、日本の神話関係ないと思いますけど」


 とことん突っ込みを入れる流奈。


「それはさあ、また別の話だよ。古の世界の万物を築き上げてた五元素の水とか火には穢れを祓う力があるしさ。あと、君たちは他のアイドルにはないもの持ってるのはオレがちゃんと知ってるから」

「例えばそれって何ですか?」

「第六感とか、シックスセンスってやつ。シャマラン監督のホラー映画のタイトルにもなってるよね。あれ見たことある? 古い作品だけど、一度は見た方がいいよ」

「映画の話はどうでもいいです。どうしてあたしたちが第六感を持ってるって断言できるんですか?」

「だって、二次選考の面接時に見せてもらったからさ。覚えてない? あの部屋、普通じゃなかったでしょ?」


 ——忘れるわけがない。

 緊張とともにぶつかりに行った二次面接。

 高天原含む面接官三人の背後の部屋の角、ぼろぼろのスーツを着た女性が立っていた。目元が完全に隠れてしまうまで前髪を伸ばしたその人は、生きた女性には見えなかった。

 面接で何度か高天原に「どうかした?」と聞かれ、何も見えていないふりをしたが全てバレていたのだ。


「……わかってたんですか、あの部屋のこと」

「わかるも何もあえてあの部屋にしたからね」


 高天原含む、三人いた面接官全員に彼女のことが見えていたらしい。


「あそこはね、元々芸能事務所だったんだけど、過労死した芸能マネージャーの女性の幽霊が出るって有名だったの。それであそこにした」


 いけしゃあしゃあととんでもないことを白状する高天原。


「——オーディション参加者が、あの人の存在に気づけるかどうかを判断するためにですか?」

「そういうこと~。部屋の角に無反応の子は全員二次選考落ち。今『ばんかみ』として活動してるメンバーはみんな、部屋の角に何かしらの反応を見せてくれた少数精鋭だよ。これ他のメンバーにはオフレコね、念のため」


 ——当たり前だ! 何が少数精鋭だ!


 膝の上に載せた拳を握りしめる流奈。高天原と向き合って話をしていたら、殴りかかっていたかもしれない。


「プロデューサー、失礼を承知でいいですか?」

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